地味なラインアップの狙いはレイトマジョリティー

 今回の発表内容についての感想は「華がない」ということである。5Gの商用サービス開始直前だけあって、ハイエンドモデルのラインアップが手薄になりがちなことからやむを得ない部分もあるだろう。ただ、19年10月10日にKDDI(au)が秋冬商戦向けの新商品として、世界的に注目されているディスプレーを直接折り曲げられるスマホ「Galaxy Fold」の投入を明らかにしたのに比べると、地味な印象は否めない。

KDDIは秋冬商戦向け端末にディスプレーを直接折り畳める「Galaxy Fold」の投入を発表
KDDIは秋冬商戦向け端末にディスプレーを直接折り畳める「Galaxy Fold」の投入を発表

 だがこうしたラインアップとなった裏に、NTTドコモなりの明確な狙いがうかがえる。それは3G契約者の“巻き取り”、つまり3Gから4Gへの移行促進だ。NTTドコモは20年半ばに3Gを終了させる方針を示していることから、今後3G端末の利用を減らしていかなければならない。それには3G端末のユーザーに4Gへ乗り換えてもらう必要がある。

 今回、キッズケータイのように4G化が進んでいなかった端末の入れ替えに着手。加えて、主にシニアのフィーチャーフォン利用者を中心とした3G端末ユーザーに対してGalaxy A20のような安価な端末を提供することで、4Gへの乗り換えを促している。

 しかしフィーチャーフォン利用者にはスマホに対する不安が少なからずあるため、移行がなかなか進まない事情もある。そうしたユーザーの受け皿として「らくらくホン」など4G対応フィーチャーフォンを用意しているものの、顧客がフィーチャーフォンにとどまっていては、データ通信やインターネットサービスの利用が広がらず、ビジネスチャンスの拡大につながらない。それだけにNTTドコモが注力しているのが、スマホを安心して利用できる環境づくりである。

NTTドコモはスマホを安心して利用してもらうため「スマホ教室」に力を入れており、19年10月からはメルカリの使い方を学ぶ「メルカリ教室」も実施
NTTドコモはスマホを安心して利用してもらうため「スマホ教室」に力を入れており、19年10月からはメルカリの使い方を学ぶ「メルカリ教室」も実施

 現在、同社はドコモショップでスマホの使い方を学ぶ「スマホ教室」に力を入れており、利用者は累計400万人を突破した。最近はメルカリと共同でメルカリの使い方を学ぶ教室を実施するなど、スマホ上のサービス利用拡大に向けた取り組みに熱心だ。さらに今回の発表会では、インターネットサービスの利用に不安がある人に向け、「ネットトラブルあんしんサポート」を用意したのに加え、生体認証によってdアカウントの認証時にパスワード入力を不要にした「dアカウントパスワードレス認証」の提供を打ち出している。

今回の発表会では、パスワード入力を無効化し、生体認証のみでdアカウントの認証をする「dアカウントパスワードレス認証」の導入も発表
今回の発表会では、パスワード入力を無効化し、生体認証のみでdアカウントの認証をする「dアカウントパスワードレス認証」の導入も発表

 吉澤社長が今回の端末ラインアップを「4Gの集大成」と打ち出した背景に、“5Gの夜明け前”になんとかレイトマジョリティー層を4G、そしてスマホへ移行させておきたいという思いが透けて見える。19年10月に電気通信事業法が改正され、スマホの値引き販売が難しくなっている今、既存顧客の底上げでビジネス拡大を狙うのは、一見すると地味だが、非常に理にかなった戦略といえるだろう。

(写真/佐野正弘)