Switchはニンテンドー3DSの後継機になる

 しかし19年夏、ニンテンドー3DSがついに終焉(しゅうえん)を迎えようとしている。新作ソフトの発売予定カレンダーは白紙になり、今のところ発売される予定はない。1989年に「ゲームボーイ」を発売して以降、任天堂が30年にわたって継続してきた携帯専用ゲーム機のビジネスが幕を閉じようとしている。

 それと入れ替わるように発売されたのがNintendo Switch Liteだ。多くの家庭に1台目のNintendo Switchが普及したタイミングで、任天堂は「実はNintendo Switchはニンテンドー3DSの後継機となる携帯機でもあるんですよ」と再定義し、「どうぞ持ち歩いて遊んでください」と提案してきた。「Switchは重いという⽅には、個⼈⽤の携帯版Switchもご用意しました。いかがですか?」と言わんばかりにNintendo Switch Liteを追加したのである。

 Nintendo Switch Liteと同時に発売されるソフトに選ばれたのが、ゲームボーイの古典的名作『ゼルダの伝説 夢を見る島』のリメーク版であるのは、なんとも示唆的だ。「これまではテレビ画面で楽しむタイプのゲームを中心にそろえてきたけれど、これからはどこにでも持ち歩いて1人でコツコツ遊べるゲームをNintendo Switchのラインアップに加えていきますよ!」という任天堂の挨拶ではないだろうか。

 さらに2019年11月15日には「ポケットモンスター」シリーズの新作『ポケモン ソード・シールド』が登場。20年には「どうぶつの森」シリーズの新作が発売される。ニンテンドーDSで世代を問わず大ヒットした「脳トレ」シリーズの最新作『脳を鍛える Nintendo Switchトレーニング』も19年12月に発売予定だ。任天堂は、せきを切るかのように1人で遊ぶタイプのソフトをNintendo Switchに投入してくる。

『ゼルダの伝説 夢を見る島』。名作ゲームボーイ用ソフトのリメーク版。5980円(税別)(c)1993-2019 Nintendo
『ゼルダの伝説 夢を見る島』。名作ゲームボーイ用ソフトのリメーク版。5980円(税別)(c)1993-2019 Nintendo
もともとは2Dのゲームを、ジオラマを思わせる3Dゲームとしてリメーク。世界の中を冒険できる
もともとは2Dのゲームを、ジオラマを思わせる3Dゲームとしてリメーク。世界の中を冒険できる

長年の2ブランド体制がついに終了

 今回の出来事をビジネス的に見れば、ゲームボーイ以来、任天堂が続けてきた2ブランド体制の終了という分析も成り立つだろう。

 これまでの任天堂は、据え置きゲーム機と携帯ゲーム機の市場に異なるブランドのマシンを同時に展開し、それぞれに勝負を挑んできた。これはリスク分散としても効果的だった。据え置きゲーム機市場に投入したすべてのマシンがヒットしたわけではないが、それでも任天堂のブランド力が落ちなかったのは、携帯ゲーム機において無類の強さを発揮してきたからだ。

 しかしスマートフォン向けゲームが隆盛の中、携帯ゲーム機市場そのものはもはや安泰ではない。また、携帯ゲーム機は長きにわたり資金力のない開発者のための入り口であり、新規参入企業の挑戦の場として機能していたが、それもNintendo Switchがインディーズゲームの開発者に広く門戸を開いたことでカバーできるようになってきている。

 そういった時代の変化に合わせ、ついに任天堂は据え置きと携帯のマシンを統合する判断をした。Nintendo SwitchとSwitch Liteでは、後者の方がより携帯に特化しているという違いはあるものの、プレーできるゲームは基本的に同じ。リスクが増えることは覚悟の上で、据え置きと携帯の双方の市場に同じマシンを投入し、その上で一家に1台から1人1台にNintendo Switchを拡大、普及させようとしているのである。

東京ゲームショウ2019のインディーズゲームコーナー。Nintendo Switchがスポンサーを務めた。こうした形で若き開発者を支援するようになっている
東京ゲームショウ2019のインディーズゲームコーナー。Nintendo Switchがスポンサーを務めた。こうした形で若き開発者を支援するようになっている

Nintendo switch Liteが抱える懸念

 懸念があるとしたら、1万9980円というNintendo Switch Liteの価格だ。Nintendo Switchより1万円安くなってはいるが、これでも高いという声はあるはずだ。任天堂の歴代の携帯ゲーム機の発売当時の価格は以下の通りだ。

ゲームボーイ      1万2500円
「ゲームボーイカラー」   8900円
「ニンテンドーDS」   1万5000円
「ニンテンドー3DS」   2万5000円(発売半年後に1万5000円に改定)

 こうしてみると、1万5000円が一つのラインだったと言える。唯一の例外であるニンテンドー3DSは、発売から半年という異例の早さで1万円の値下げを断行した(注:ゲーム機の大型化などでバリエーションを増やした結果、1万5000円を超えた機種はある)。

 Nintendo Switch Liteの1万9980円という価格は、これまでの機種と比べても高額だ。小さな子供に買い与えるにはちょっと高すぎと感じる家庭もあるだろう。さて市場はどう反応するか。年末商戦が楽しみだ。