巨大組織のマインドを変えられるか

 「サービス事業は物販よりも1軒当たりの利益率が圧倒的に高い。ここに重点を置いて利益率を上げ、物販の収益性も改善していきたい。サブスクリプションでモノを循環する時代は家電にも到来している」と堂埜氏。キッチンポケットを介したこうした取り組みを複数展開することで、利益の3割以上は見込めるという。

 「エンドユーザー向けのフリーミアムモデルもあるだろうし、携帯電話のようなフル保証サービスも考えられる。仮にユーザー1人当たり1000円の収益があれば、100万人で年間120億円。キッチンポケットはあらゆるサービスのテーマパーク。夢のような話ではない」(堂埜氏)

 オーブンレンジと親和性の高い冷蔵庫やIHクッキングヒーターなど、家電のIoT化も加速する。今後、地方の生鮮スーパーや農家、コンビニなど、サービス事業の共創相手は食のサプライチェーン全体に広がりそうだ。

オーブンレンジなどの家電とアプリをつなげてIoT化することでより便利になり、暮らしが一変する
オーブンレンジなどの家電とアプリをつなげてIoT化することでより便利になり、暮らしが一変する

 サービス業にも舵(かじ)を切り始めたパナソニックは、今後ビジネスモデルの転換を図り、収益構造の変革に挑む。ただその道が平たんでないことは想像に難くない。19年4月、5年ぶりに家電部門へ戻ってきた堂埜氏は「アップデートしようというムーブメントは起きつつも、どこまで同じ船に乗れているのかというと、全く乗れていなかった」と振り返る。

 さらに堂埜氏は「組織の考え方やマインドをいかに変えられるか。そこに最も腐心し、七転八倒している。現場の責任者全員と面談し、心に響くような対話に努めるなどトップ自ら取り組まないとこの局面は打破できない」と打ち明ける。

 モノの製造販売で収益を得るビジネスモデルだけでは、業界トップの巨大企業であっても持続的な収益確保が難しくなりつつある。とはいえ、パナソニックが描くビジョンがどこまで現実になるかは、現場の意識改革に懸かっているといえそうだ。

(写真/橋長初代、写真提供/パナソニック)