ブシロードは2019年9月30日、劇団飛行船(川崎市)との資本業務提携を発表した。半世紀以上の歴史を誇るマスクプレイミュージカルの老舗劇団とのコラボレーションで、ブシロードは舞台発のIP(キャラクターなどの知的財産)をはじめとする、新たな表現方法の創造に着手する。

左からブシロード取締役コンテンツ本部本部長の木谷高明氏、劇団飛行船社長の大場隆志氏、声優の相羽あいな氏
左からブシロード取締役コンテンツ本部本部長の木谷高明氏、劇団飛行船社長の大場隆志氏、声優の相羽あいな氏

舞台を軸とした新たなIP展開の道を開拓

 株価へ影響が出ることを防ぐため、事前に「新規事業に関する発表」とだけ伝えられていた内容不明の発表会が、都内のあるホテルで開催された。始まってみれば、それはブシロードが「マスクプレイミュージカル(ぬいぐるみ人形劇)」で知られる劇団飛行船と資本業務提携を結ぶというものだった。

 ブシロード取締役でコンテンツ本部本部長を務める木谷高明氏は、今回の資本業務提携についての動機やその内容などについて語った。まず提携内容について、木谷氏は以下の3項目を挙げた。

(1)舞台発IP/ブシロードIP舞台化の強化
(2)他社IPの舞台化を加速
(3)舞台領域における新たな表現方法の創造

 同社は2017年から、ミュージカルとアニメをリンクさせたライブエンターテインメント「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」というIPを展開している。これは舞台で演じられるミュージカルを原作とし、その主要キャストがアニメ版でも同役の声優を担当しているのが特徴だ。現在ではアニメやコミック、インターネット番組など、さまざまな媒体に向けたメディアミックス展開を見せている。

 そうした舞台を起点とした新たなIPや既にブシロードが保有しているIP、そして他社のIPを舞台化しようというのが、上記(1)と(2)だ。(3)についてはプロジェクションマッピングといった技術を活用し、新たな舞台表現を追求していくという。

提携の背景や狙いについて語るブシロードの木谷氏
提携の背景や狙いについて語るブシロードの木谷氏

1コンテンツで多様な収益源を見込む

 さらに木谷氏は今回の資本業務提携に至った背景を、「ライブエンターテインメントの強化」「舞台ファンの熱量の高さとコアファンづくりのベース」「デジタルコンテンツ制作費の高騰」と説明する。

 既にブシロードはライブエンターテインメントを含むIPを展開しているが、その方面を強化するのが1つ。さらに演者との距離が近い故の、ファンの持つ熱量の高さを、ファンづくりのベースにしたいという狙いも大きいようだ。

 デジタルコンテンツの制作費については、既に「アニメ1話分のコストで、簡単な舞台だったら1週間くらいの公演ができる」(木谷氏)ほど高騰しているのだという。ましてや30分枠のアニメを13話、26話と作るには相応のコストが必要となる。そのカウンターとしてデジタルではなく、舞台というアナログなメディアを使ってコンテンツを作成、継続、発展させることを考えていきたいとのことだった。

 木谷氏は「一見すると地味だけれども、舞台は非常に大きな可能性を秘めている」と強調する。公演の入場料収入や会場での物販による販売収入、映像化してメディアへ売却、さらにその映像をパッケージ化して販売するなど、一つひとつの収益規模は小さくても、1つのコンテンツでさまざまな方法で収益化を狙える点が重要というわけだ。

「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」で西條クロディーヌを演じる相羽あいな氏。舞台女優、声優、歌手、さらにプロレスラーとしても活躍。IPの舞台化や、幼少時に見た劇団飛行船の舞台などについてコメントした
「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」で西條クロディーヌを演じる相羽あいな氏。舞台女優、声優、歌手、さらにプロレスラーとしても活躍。IPの舞台化や、幼少時に見た劇団飛行船の舞台などについてコメントした

半世紀を超える歴史に劇団飛行船とは?

 一方、1966年9月に創設された劇団飛行船は「子供たちに本格的なミュージカルを見せたい」という思いの下、童話の登場人物たちがあたかも現実にいるかのように、“マスク(ぬいぐるみ)”を着用した俳優たちが動き、歌い、ダンスを踊る舞台を展開。そのオリジナリティーの高さから、同社は「マスクプレイミュージカル」というジャンルを標榜している。

 そうした舞台の特色を生かし、「オズの魔法使い」や「シンドバッドの大冒険」といった名作童話のほか、「忍たま乱太郎」「おジャ魔女どれみ」「ケロロ軍曹」「ちびまる子ちゃん」といったコミックやアニメ作品の舞台化も行ってきた。

 創設53年という歴史もさることながら、国内だけでなく米国のブロードウェイをはじめ、ロシア、台湾、中国、韓国など、海外公演も展開。延べ4000万人を超える動員実績を誇り、現在でも年間で、国内50万人、海外20万人の合計70万人を動員するほど人気が高い。

劇団飛行船の社長、大場隆志氏。長い歴史で培われたマスクプレイミュージカルのノウハウがブシロードのIPと融合したとき、どのようなIPが生まれるのか楽しみだ
劇団飛行船の社長、大場隆志氏。長い歴史で培われたマスクプレイミュージカルのノウハウがブシロードのIPと融合したとき、どのようなIPが生まれるのか楽しみだ

 劇団飛行船社長の大場隆志氏によると、これまで何度も苦しい時期があり、社長に就任した4年前も危機的状況だったとのことだが、現場で働くスタッフの仕事に対する熱意や愛情を知り、「この会社は必ず再生できる」と確信。実際、2018年は過去最高の営業利益率を達成したという。

 その上で「この先も進化を遂げるにはどうすべきか、どのような会社と協力関係を築くべきか」を模索する中で、木谷氏との縁が生まれたのだそうだ。

 「ブシロードが持つIPと、私たちが持つ技術的、ノウハウ的なIPを掛け合わせ、新しい舞台の価値を創造し、多くの皆さんに喜んでいただけるものを提供していきたい。ミュージカルの舞台に興味を持てないという人は特に男性に多いが、そうした興味のない人に向け、人が主役ではなく、世界観やストーリーが主役といった、アニメやゲームの世界に入り込んだかのような新しい舞台としてのミュージカルを作り上げたい」と、大場氏は抱負を語った。

 コンテンツビジネスを熟知したブシロードと、新たな舞台の創造に燃える劇団飛行船。両社のタッグによって、どのようなIPが生まれるのか。非常に興味深い提携といえる。

劇団飛行船の舞台「アラジン~ササン王国の不思議なランプ~」で活躍する主人公アラジンも登場。スクリーンの映像に合わせ、華麗なダンスを披露
劇団飛行船の舞台「アラジン~ササン王国の不思議なランプ~」で活躍する主人公アラジンも登場。スクリーンの映像に合わせ、華麗なダンスを披露

(写真/酒井康治)