伊勢丹新宿店の化粧品売り場が刷新。面積を拡大するとともに、主要ブランドに「クイックカウンター」を新設して急ぎの客に対応する。丁寧な接客とカウンセリングが売りの百貨店が、時短ニーズに対応する理由とは。
急ぎ客に対応する「クイックカウンター」を新設
2019年9月25日、東京・新宿の伊勢丹新宿店本館2階化粧品売り場がリニューアルオープンした。これまで1階で営業していた化粧品売り場を拡張。売り場面積はこれまでの1.5倍になった。1階はメーキャップ、2階はスキンケアを中心とした構成にし、19年11月20日に刷新する1階と合わせて、約100ブランドを扱う。
2階は国内ブランドを扱うゾーン、海外ブランドを扱うゾーン、美容機器を扱うゾーンの3つに分かれている。なかでも注目は、国内ブランド24店のうち18店に新設された「クイックカウンター」だ。「美容部員から丁寧な説明を受けるよりも、時間を優先したい人を対象にしたカウンター」と三越伊勢丹の化粧品営業部新宿化粧品マーチャンダイザーの横山健治氏は説明する。
百貨店の化粧品売り場といえば、客に着席を促して商品の説明から会計まで行うのが主流。だが、クイックカウンターは基本的に立ったままで接客する。ブランドの店頭にレセプションを兼ねる形でクイックカウンターを設置し、店員はその場で客の要望をヒアリングして接客方法を変える。購入したい商品が決まっている人にはその場で販売し、店員に相談したいときや詳しい説明を受けたい人には着席を促して、従来通りの接客を行う。
「時間をかけずに買いたい」という客の要望から生まれた
接客方法を変えた背景には、訪日客をはじめとする来店客の増加がある。「(伊勢丹新宿店の)化粧品の売り上げは好調で、18年度は対12年度比で約2倍に伸長している」(横山氏)。その結果、土日祝日は終日、平日も夕方以降は閉店時間の午後8時まで混雑する状況が珍しくなくなった。そうしたなか、「時間をかけずに買い物をしたい」という客からの要望が増えてきた。
これまでの接客方法では、必要なものだけをさっと買って帰りたい客もそうではない客も、一列に並んで順番を待つしかなかった。客を待たせないためには、一人ひとりの接客時間を短くする方法もあるが、それでは顧客満足度は下がるだけ。そこで考えたのが、時短ニーズのある客とそうではない客とを事前に振り分ける、クイックカウンターの新設だった。
余った時間での「ついで買い」にも期待
三越伊勢丹は19年2月に化粧品専門のオンラインストア「meeco(ミーコ)」を立ち上げている。買い物にかける時間はないが必要なものが決まっているお客は、オンラインストアへ誘導する手もある。だが、そこには「売り場に足を運んでくれた客に、化粧品以外の商品も『ついで買い』してほしい」という期待があった。「化粧品を手早く買った人が、余った時間で地下の食品売り場に立ち寄ってくれる可能性もある」(同社マーケティング推進部の足代成子氏)
19年11月には1階の化粧品コーナーもリニューアルオープンする。「化粧品フロア全体で、初年度(19年12月~20年11月)は前年同期比1.2倍の売り上げを目指す」と横山氏は意気込む。