かつての研究段階から急速に社会実装、ビジネス活用へと進むディープラーニング。その活用の中でも優れたプロジェクトを表彰する「ディープラーニングビジネス活用アワード」を、日経クロストレンドと日経xTECHが共同で開催、このほど大賞や優秀賞など6つの受賞プロジェクトを決めた。

ディープラーニングビジネス活用アワード、大賞決まる
ディープラーニングビジネス活用アワード、大賞決まる

 大賞はキユーピーの「AI食品原料検査装置」というプロジェクト。異物混入対策など、食品製造ラインには極めて高い水準の安全、安心が求められる。食品の原料選別は現在は人手に頼っているが、これをディープラーニングが得意とする画像認識の技術を使った検査装置に置き換えた。検査の精度は人間と変わらないレベルに達している。

食品業界全体が沈まないためのディープラーニング

 すでにキユーピーの3つの工場で稼働している。新装置導入によって、もちろん人件費は削減できる。ただ、開発に携わった生産技術部の未来技術推進担当の荻野武担当部長は言う。

 「電機メーカーの凋落(ちょうらく)を目の当たりにした。私が今いる食品業界もそうならないとは言い切れない。中小企業の技術力なども交えオールジャパンで取り組まないと。その起爆剤にディープラーニング活用はうってつけだ」

 荻野氏はかつて日立製作所の技術者だった。

 ディープラーニングの画像認識技術は、人間の目の働きを代替する分野での活用が進む。ただ、「それだと、ディープラーニングを活用する効果の最大値が人件費削減分にとどまってしまう。これでは活用の舞台は大きく広がらない」。同アワードの創設・選定で協力を得た日本ディープラーニング協会の松尾豊理事長はこう指摘する。だから今回の受賞プロジェクトでは、人件費削減といった単純な効果にとどまらないものが中心に選ばれた。

 オールジャパンという目線から、キユーピーは新装置を同業他社へも販売する。販売市場は大きく、また社会還元としての姿勢も評価された。

自動翻訳やごみ焼却などの分野も表彰

 このほか優秀賞には、楽天の自動翻訳プロジェクトである「Rakuten Translate」、荏原環境プラント(東京・大田)が進める「ごみ焼却プラント運転自動化プロジェクト」、水処理など流体向けAI分析のAnyTech(東京・文京)の「水質判定AI『DeepLiquid』」の3つが選ばれた。

 特別賞には、保育園向けIT(情報技術)サービスのユニファ(名古屋市)の「写真自動判定システムによる保育士の業務負荷軽減」、パッケージデザインのプラグ(東京・千代田)の「パッケージデザインの好意度スコアを予測するAIサービス」の2プロジェクトが選ばれている。

  なお表彰式は、10月10日に開催中の日経クロストレンドEXPO/日経xTECH EXPOのイベントとして東京ビッグサイトの国際会議棟で開催される(セミナー「ディープラーニング活用最前線~アワード受賞企業に学ぶ~」)。

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