「POPSOCKETS(ポップソケッツ)」は、世界で1億4000万個以上を売り上げているスマートフォン用グリップ。製品の実用性はもちろんだが、ここまで売れたのは有名人の口コミ、SNS効果など、さまざまな要因があったからだ。開発者のデイビッド・バーネット氏に大ヒットの理由を聞いた。

スタイリッシュなスマートフォン用グリップとしてハリウッドセレブや有名モデルにも愛用者が多いポップソケッツ。公式サイトではオリジナルデザインの制作も受け付けている
スタイリッシュなスマートフォン用グリップとしてハリウッドセレブや有名モデルにも愛用者が多いポップソケッツ。公式サイトではオリジナルデザインの制作も受け付けている

ブレークのきっかけは有名モデルのインスタグラム

 ポップソケッツは、米コロラド大学ボルダー校で哲学の教授をしていたデイビッド・バーネット氏が2012年に開発したスマートフォン用グリップ。アコーディオンのように伸縮するデザインが特徴だ。ハリウッドセレブや有名モデルの間に口コミで徐々に広まり、現在では世界68カ国で1億4000万個以上を売り上げている。

 「12年にクラウドファンディングの『キックスターター』で資金を集め、起業したのは14年。15年にサムズ・クラブ(米国の大手スーパー)などで取り扱いが始まるまで、ポップソケッツを置いている店はコロラド州に数軒ある程度だった」と、ポップソケッツ社CEO(最高経営責任者)のバーネット氏は言う。

ポップソケッツ社CEOのバーネット氏。元大学教授とあって非常に紳士的な話し方をする人だが、握手は苦手だそうだ
ポップソケッツ社CEOのバーネット氏。元大学教授とあって非常に紳士的な話し方をする人だが、握手は苦手だそうだ

 ところが偶然、ポップソケッツがハリウッド俳優のジャスティン・バルドーニ氏の目に留まり、「株主になりたい」と持ちかけられるほど気に入られた。バルドーニ氏は米国で14年から19年にかけて5シーズンが放映された人気ドラマ「ジェーン・ザ・ヴァージン」で主人公ジェーンの恋人役を演じた人物。ディレクター、映像作家としても活動しており、ハリウッドセレブの知人も多い。「彼がセレブたちにお薦めしてくれたらしい」(バーネット氏)。

 バルドーニ氏に薦められたセレブたちの間でもその使いやすさが評判になり、ポップソケッツは口コミでセレブたちの間に広まっていった。そして16年、インスタグラムに5000万人近いフォロワーがいる超人気モデル、ジジ・ハディッドが公開した自撮り写真にポップソケッツが写っていたことから若い女性たちにも注目され、大ブレークとなった。

ジジ・ハディッドが16年に公開した自撮り写真には90万件を超える「いいね」が付いた
ジジ・ハディッドが16年に公開した自撮り写真には90万件を超える「いいね」が付いた

 「最初は実用的でシンプルなデザインだったけど、イラストが得意な地質学者の友人にグラフィックを頼んでからはファッションアイテムとしても注目されるようになったんだ」とバーネット氏は笑う。

ノベルティーグッズとしてプロモーション効果は絶大

 先述のバルドーニ氏は、そもそもどこでポップソケッツのことを知ったのか。バーネット氏は「14年の1月に展示会に出品して、(ポップソケッツが)プロモーションに使えることをアピールしたから、それがきっかけになったのかもしれない」と言う。

 「ポップソケッツは、本体の上の丸い部分に企業ロゴなどを印刷できる。スマホを使うときには必ず目に入る位置にあるのでノベルティーグッズに最適なんだ。商品がセールスマンの役目も果たすことになるから、スーパーボウル(米国最大のスポーツイベント)に広告を打つより費用対効果は大きいよ(笑)」(バーネット氏)。

 とはいえ、ポップソケッツが開発されたのは、もともとグリップのためではなかったとバーネット氏は明かす。「最初はイヤホンのケーブルが邪魔に思えたので、それを巻き付けるために洋服のボタンを2つ、スマホに貼り付けたんだ。でも、それを友達に笑われたので、もっといいデザインのものを作ってやろうと。それで最もシンプルかつ洗練された形としてアコーディオン式を考案したんだ」。

 ところが実際に作ってみると、ケーブルを巻き付ける人はほとんどおらず、グリップとして使われていたという。

 またバーネット氏は、12年に「キックスターター」に登録したのも資金集めのためではなく、ポップソケッツの認知度を上げるためのプロモーションだったと言う。「最終的には1万8000ドル(約193万5000円)の資金を集めることができたけれど、それでは開発資金の数週間分にしかならないんだ。だから『キックスターター』はプロモーションと考えて、プロジェクトを紹介するビデオではダンスを披露したんだよ」(バーネット氏)

 バーネット氏が踊りながらポップソケッツを紹介するビデオは賛否両論だったが、再生回数は4万回を超え、狙い通り拡散もされた。こうした認知度向上のための施策が世界で1億4000万個という大ヒットにつながったわけだ。「ポップソケッツは起業から5年で1億個を売り上げた。マクドナルドは同じ数のハンバーガーを売るのに18年かかっているんだ」というバーネット氏の言葉からは、プロモーションの重要性が伝わってくる。

バーネット氏が制作したビデオは現在も「YouTube」で視聴できる。ダンスがうまいか下手かは問題ではないようだ
バーネット氏が制作したビデオは現在も「YouTube」で視聴できる。ダンスがうまいか下手かは問題ではないようだ

 ポップソケッツが日本に上陸したのは18年の春。国内の販売数は19年9月段階で約200万個とまだまだこれからという状況だが、日本の有名人にもポップソケッツを送付したり、東京・渋谷でイベントを開催したりと、プロモーションにも力を入れ始めた。

 スマホのサイズがどんどん大きくなっている昨今、スマホグリップの需要は十分に見込める。海外と同様に国内でも人気となるか、ポップソケッツのプロモーションに注目したい。

ポップソケッツは、「GOSSIPS(ゴシップス)」(日本ジャーナル出版)の16年9月号で取り上げられたほか、「MEN’S CLUB(メンズクラブ)」(ハースト婦人画報社)の19年06月号増刊や「月刊ゴルフダイジェスト」(ゴルフダイジェスト社)の19年11月号などでも紹介された
ポップソケッツは、「GOSSIPS(ゴシップス)」(日本ジャーナル出版)の16年9月号で取り上げられたほか、「MEN’S CLUB(メンズクラブ)」(ハースト婦人画報社)の19年06月号増刊や「月刊ゴルフダイジェスト」(ゴルフダイジェスト社)の19年11月号などでも紹介された

(写真/菊池くらげ、写真提供/ポップソケッツ)