衣食住にまつわるあらゆる商品を扱うブランド「無印良品」で知られる良品計画。そのグループ企業で、住宅を専門に扱うMUJI HOUSE(東京・豊島)が5年ぶりに新商品を発売した。新たにラインアップしたのは、なんと平屋だ。
全開口サッシで室内とウッドデッキがゆるやかにつながる
2019年9月13日に発売された「陽(よう)の家」は無印良品の家として初の平屋商品。広いウッドデッキと全開口サッシ、杉板を使用した木製サイディングの外観が目を引く。空間に広がりを持たせるためにウッドデッキと室内の段差をなくし、サッシを開けると室内と外がフラットにつながるように設計されている。リビングは勾配天井で、平屋といえども開放感のある造りだ。
「平屋は階段の上り下りがないので、掃除や家の中での移動が楽。子どもが巣立った後の夫婦の住まいとしても、広い土地に建てて子育てをするのにも向いている」とMUJI HOUSE 住空間事業部の川内浩司開発部長は話す。
だが、無印良品の家としてラインアップされている「木の家」「窓の家」はいずれも2階建て。「縦の家」は3階建ての商品だ。なぜ今、平屋に目を付けたのか。
「平屋を作ってほしい」というユーザーの声から生まれた
開発のきっかけは無印良品ユーザーからの強い要望だった。無印良品の家は東北から九州まで約30カ所にモデルハウスを設置しており、来場者にアンケートを行っている。その回答として平屋をラインアップしてほしいという声が多かった。
特に顕著だったのは、もともと平屋の戸建てが多い九州だ。「熊本県は今も新築建ての50%、大分でも40%程度が平屋」(川内開発部長)。さらに同社が調査した結果、全国の新築戸建ての1割近くが平屋であることも分かった。
土地がない、もしくはあっても狭い都心部では、2階建てや3階建てが一般的。しかし全国に目を向ければ、必ずしも2階建て以上がスタンダードとは言い切れない。同社は今後、ニーズが高そうなエリアから陽の家のモデルハウスを建設し、認知を広げていく。
「多拠点生活ニーズ」にも期待
同社が陽の家のもう1つのターゲットと捉えるのが、都心と自然が多いエリアを行き来する「二拠点生活者」だ。二拠点生活といえば、無印良品ブランドとして19年4月に46都道府県に販売エリアを拡大した「小屋」が話題を集めている(関連記事「無印良品が売る『小屋』に問い合わせ相次ぐ 狙いは二拠点生活者」)。小屋は広さがおよそ6畳。トイレなどの水回りもない簡素な造りだが、価格は税込み300万円から。一方、陽の家は税別で約1600万円(MUJI HOUSEが提案するプランで標準仕様を選んだ際の本体工事価格)。「二拠点生活用」として購入するには価格が高いように感じる。
だが、「全国各地には格安で手に入る土地はまだまだある。親の住む土地を受け継ぐという可能性もある。土地も含めて2000万円くらいで一戸建てが持てるのなら、建てたいと考える人はいるだろう」。平日は都市部の賃貸で暮らし、休日を過ごすために自然の多いエリアに家を建てる。こうした二拠点生活もこれから増えてくるのではないか。川内開発部長はそう考えている。
現在、無印良品の家は3商品合計で年間約300棟を売り上げている。陽の家を追加することで、年間350棟を目指す。
(写真提供/MUJI HOUSE)
記事タイトルを「無印良品、小屋の次は「平屋」 1600万円でも需要ありの理由」から「無印良品、小屋の次は平屋・陽の家 1600万円でも需要ありの理由」に変更しました[2020/2/20 13:30]