米インテルの日本法人は、東京五輪に向けたプレスイベントを開催。国際オリンピック委員会(IOC)、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会、並びにパートナー企業などと協力し、最新技術を提供することを発表した。
信頼性の高い5Gや、最新技術を導入
2018年の平昌五輪では5Gや史上初のオリンピックでのVR配信、ドローンによる光のショーなど、テクノロジーを駆使して大会の成功を支えたインテル。そんなインテルが19年9月11日、東京2020オリンピック競技大会に関するプレスイベントを開催した。東京五輪では平昌よりもさらに高い目標を掲げ、オリンピック史上最もイノベーティブな大会にするという。
インテルのオリンピック活動を統括しているのが、同社コーポレーションセールス&マーケティング統括本部副社長兼オリンピック・プログラム・オフィス本部長のリック・エチュバリア氏。「東京五輪でインテルは、コネクト(ネット接続)、コンピューティング(演算)、エクスペリエンス(経験)、これらの3つを柱として貢献していく」と述べた。
エチュバリア氏が1つ目の柱として紹介した「コネクト(ネット接続)」。ネットワーク機器の開発会社である米シスコシステムズと協力し、5G技術でネットワークのインフラを提供するという。
「オリンピック放送機構(OBS)によると、東京五輪では9500時間以上の放映や、1万本以上のショートビデオがデジタルプラットフォーム上に登場する。最先端のネットワークを構築し、新国立競技場を含む42の競技会場に加え、選手村や放送施設などに、安全で柔軟なネットワークをシスコと協力して提供する」とエチュバリア氏。
シスコシステムズ合同会社代表執行役員社長のデイヴ・ウェスト氏は「2020年だけでなく、その先の日本の社会的イノベーションやデジタル化にも寄与していきたい」と話した。
2つ目の柱は「コンピューティング(演算)」。3Dアスリート・トラッキング(3DAT)や、会場管理者の研修用ツールとなる「AR・VRトレーニング」など、最新技術を導入する予定だ。注目は3DAT。複数の4Kビデオカメラを使ってアスリートのフォームと動きのデータを抽出・分析し、競技中でもほぼリアルタイムに関連情報の映像を重ねて放映する。これによって視聴者は、100メートル走などの短距離でも、目まぐるしく変わる競技の状況をより深く捉えられるようになる。
3DATは2020年に新たに投入されるインテルが開発した技術だ。100メートル走や他のスプリント競技の再生時に使用する予定で、視聴者を楽しませてくれそうだ。
視聴者や観客だけでなく、スタッフも快適に
3つ目の柱として紹介されたのが「エクスペリエンス(経験)」。これにはVR技術や、「NeoFace」と呼ぶ顔認証システムなどが該当する。インテルは平昌五輪でオリンピック初となる生中継のVR放送を実現。スケート、スノーボード、アイスホッケーなどで導入され、実際に競技会場へ訪れているような臨場感を提供した。東京五輪では開会式や閉会式、陸上競技、体操競技、ボクシング、ビーチバレーなどで導入し、ライブ放送とビデオオンデマンドの両方で提供する予定だ。
観客や視聴者だけでなく「選手やボランティアにも素晴らしいエクスペリエンスを持ってほしい」(エチュバリア氏)ということで、大会関係者向けのNeoFaceという顔認証システムも紹介された。
NeoFaceはインテルとNECが共同開発した技術。NECは19年、成田空港に「OneID」という顔認証システムを導入している。東京五輪では会場と宿泊施設の入り口に機器を設置し、選手を含めた30万人以上の大会関係者の顔を識別する。このシステムで個人情報漏洩に対するリスクを防ぐ他、身分証明書の確認に要する待ち時間が短縮できるという。
この他、東京五輪に先立ちeスポーツトーナメント「Intel World Open(インテルワールドオープン)」の開催を発表。20年7月、カプコンの『ストリートファイターⅤ』とPsyonixの『ロケットリーグ』で開催する予定だ(関連記事「賞金総額25万ドル!『ストリートファイターⅤ』大会を発表【TGS2019】」)。
インテル日本法人社長の鈴木国正氏は「インテルの持つ技術はCPUプロセッサーだけではない。AIやVR・ARの没入型コンテンツのプラットフォーム、5G関連など、革新的な技術に継続投資をしてきた。こうしたインテルの目指す方向性が、五輪で表現される」と意気込む。同社にとって東京五輪は最新技術の発表会。さらに新たなeスポーツトーナメントの開催。東京五輪終了後には、「CPUのインテル」のイメージが大きく変わるかもしれない。
(写真/梶塚美帆、資料提供/インテル)