国内527店舗、海外59店舗を展開する総合菓子メーカーのシャトレーゼ(甲府市)。フランチャイズを含め各地に出店しているが、郊外店舗がほとんど。そんな同社が新ブランド「YATSUDOKI(ヤツドキ)」を立ち上げ、2019年9月14日の銀座7丁目店開業を皮切りに都心展開を加速させる。
激戦区での挑戦で、どこまで通用するか見たい
シャトレーゼは地元の契約農家や牧場から材料を直接仕入れ、自社工場で商品を作り、各店舗に発送する「ファームファクトリー」というシステムを採用している。問屋を通さないので価格も抑えられる。高品質ながらリーズナブルなスイーツの提供、これがシャトレーゼの強みとなっている。
新ブランド「YATSUDOKI」について、シャトレーゼ販売戦略部長の中島史郎氏に話を伺った。
「きっかけは都市部で暮らしているお客様の声。『シャトレーゼは聞いたことがあるけれど食べたことは無い』『都心でも食べたいので出店してほしい』という声が増えてきたことが、今回の展開につながっている。銀座は流行の発信地であり、菓子店の激戦区。専門店やデパ地下のスイーツがそろうなか、我々シャトレーゼがどこまで通用するか見てみたいという気持ちもある」(中島氏)
YATSUDOKIでは従来の商品のほか、品質にこだわった手作りのオリジナルスイーツを展開する。「ファームファクトリー」の仕組みを都市部の店舗でも生かす試みのほか、店舗数を絞り込むことでこれまでできなかった職人の技を生かした手作り商品も提供していくという。
銀座でも「日常使い」のお菓子を
銀座という場所柄、「従来の店舗より高価格帯の商品を扱って、職場の手土産やご褒美として使ってもらう狙いはある」と中島氏。しかし、高品質なスイーツをリーズナブルに提供するシャトレーゼのコンセプトは変わらない。
「YATSUDOKIオリジナル商品の『しぼりたて牛乳のカスタードシュー』や『うみたて卵のプリン』はそれぞれ270円(税込み)で提供する。この値段で他に負けないものを作る。どんなにおいしくても、価格が高くなると日常的に食べてもらえなくなってしまう。新ブランドでもこれまで通り、高品質で手軽に買ってもらえるものができたらと考えている」(中島氏)
おいしさを追求するだけでなく、添加物はなるべく使わず、安心安全な製法にも取り組んでいる。ターゲットはおいしいスイーツを求めている人。性別や年代などではあまり区切らないという。
オリジナル商品の監修は、かつて「ガトー・ド・パリ・ル・ショワ・和光(現・和光ケーキショップ)」にも勤めていた、著名パティシエの武江章シェフ。いち押しは「国産和栗の生モンブラン」だ。
「新しいスタイルのモンブランに仕上げた。通常は運搬で崩れたり潰れたりしないように、バターなどを入れてやや固まるようにしている。しかし今回は、注文が入ったらクリームを絞り、店頭で仕上げる商品なので、モンブランの部分は栗をたっぷり使用している。これは通年の商品にする予定」(武江シェフ)
東京では銀座の7丁目に第1号店を出店した後、銀座6丁目、有楽町、青山など、複数のエリアで展開していく。特に銀座6丁目店は、カフェも併設するという。その他、大阪、名古屋、札幌、仙台、福岡などへの出店も計画している。
今では知名度のあるシャトレーゼだが、5~6年前は知らない人も多かったという。ここ数年でメディア露出などを通し、認知拡大に努めてきた。山梨県発の大手菓子チェーンは八ケ岳の自然と上質なイメージを生かし、銀座でも「地域に愛される店」を目指す。
(写真提供/シャトレーゼ)