ゲーマーのセンスがブランド認知向上につながった

 父ノ背中との関係は、まずリーダーとサブリーダーがGigaCrystaのディスプレーを購入して「このスペックでこの値段はすごくね?」とSNSなどで話題にし、ファンの間でも盛り上がっていたことがきっかけだった。最初はアイ・オー・データ機器を全く知らないメンバーもいたくらい、ブランド認知は低かったという。しかしそこから父ノ背中のマネジメントをしている会社とのつながりができた。

 「何か一緒にやりましょうという話が出て、『ウチのファンに言ってみましょう』ということになった。彼らが“どうあがいてもアイオーデータ”というハッシュタグを作ったところ、これがファンの間で大喜利のように盛り上がってバズった」(西田谷氏)

 その効果は大きかった。ハッシュタグがバズってすぐ、18年夏にGigaCrystaのディスプレーは大手ECサイトで品薄になるほど売れた。想像以上の効果に驚くと同時に、2つのことに気づいたという。

 「まず、プロゲーミングチームの影響力が販促につながること。もう一つは“どうあがいてもアイオーデータ”という、我々には思いつかない言い方のセンスだ。ゲーマーのセンスに委ねることで、自社ではリーチできないユーザー層に知ってもらうことができた」(西田谷氏)

 父ノ背中とのコラボレーションは売り上げだけでなく、ブランドと企業の認知向上にもつながっている。

 「これまで学校の視聴覚室にディスプレーを納入することはあったが、そこから学生に自社が認知されることはほとんどなかった。それが今では、父ノ背中を通じてアイ・オー・データ機器を知った、同じ会社の製品が学校にもあった、という人が増えている」(西田谷氏)

 同社ディスプレーのユーザーは、自作PCユーザーなどを中心に30~60代が多い。それがゲーミングディスプレーを手掛け、プロゲーミングチームへのスポンサードを行うことで、10~20代の認知が向上しているのだ。

 「GigaCrystaブランドの認知だけでなく、これまでリーチできなかった若年層への、アイ・オー・データ機器の認知がすごく上がっていると感じている」(西田谷氏)

 GigaCrystaを知ったことがきっかけで求人に応募してくる人が出てくるなど、リクルーティングにも影響し始めているという。

プロゲーミングチームとの付き合い方

 父ノ背中との関係はもともとスポンサードありきではなく、彼らが製品を購入して使っていたことから始まった。いい関係性が築けると判断して支援を決めたが、スポンサードに当たって社内にはさまざまな意見もあったという。

 父ノ背中は動画の作り方がうまく、ストリーミングでの発信力、SNSでの拡散力が強いプロゲーミングチームだ。それだけに“炎上”しやすいリスクがあり、社内で危惧する声もあった。しかし西田谷氏はそれは承知の上だった。

 「父ノ背中はプロゲーミングチームであり、ストリーマー集団でもある。他とは一線を画したエッジの効いたことをやっているのが魅力であり、そこはもともとベンチャー企業のアイ・オー・データ機器と共通点があるとも言える。“やんちゃ”をしてもあまりスポンサー側から口を出さないように心掛けている」(西田谷氏)

 eスポーツの世界はプレーヤーもファンも若年層が中心だ。ゲームと関係のないことであってもSNSで炎上しやすく、炎上リスクはゼロにできないと考えている。父ノ背中の場合、マネジメントを行う会社が間に入っており、そうした形も炎上リスクを考える上で重要だという。

 「父ノ背中のように頭角を現してくるプロゲーミングチームは、何を求められているか、どう振る舞うべきかを自分たちでよく考えている。ある程度大きいチームはコンプライアンスが徹底されつつあるが、それが行き過ぎるとSNSでの発言などがつまらなくなってしまうのではないか」(西田谷氏)

 ゲーマーのセンス、面白さ、拡散力といったものを損なわずにリスクを抑えるには、距離感を大切にしつつコミュニケーションを取って、スポンサーが何を大事にしているのかを伝えていくことが重要だと考えている。

 「あくまでもプレーヤーファースト。プロゲーマーの本分は競技での活躍であり、それに憧れてファンが増えていく。そしてストリーミングやSNSは彼らとファンをつなぐものだ。その活動をスポンサーのエゴで制限してはいけない。たとえ炎上があったとしても、それは彼らの責任においてのものであって、スポンサードしている企業の評判にまで影響が及ぶことは、よほどのことがない限りない。炎上を過度に気にして彼らの活動に干渉し過ぎると、つまらなくなってしまう。まだ過渡期にあるeスポーツに、他のスポーツビジネスのような考えを持ち込むのは時期尚早ではないか」(西田谷氏)

ファンミーティングでは、チームのメンバーがコーチングしてのバトル大会やクイズ大会、メンバーのサイン入りHDDが当たる抽選会などが行われた(写真提供:アイ・オー・データ機器)
ファンミーティングでは、チームのメンバーがコーチングしてのバトル大会やクイズ大会、メンバーのサイン入りHDDが当たる抽選会などが行われた(写真提供:アイ・オー・データ機器)