マンガアプリ開発のand factory(アンドファクトリー)が展開するIoT体験型宿泊施設「&AND HOSTEL(アンドホステル)」の関西1号店が2019年8月23日、大阪・堺筋本町にオープン。ユニークなコンセプトが受け、既存店の稼働率は85%以上。人気の理由を探った。
スマホ一押しで快適な宿泊空間に
アンドホステルは2016年8月オープンの福岡店を皮切りに、これまで浅草、上野、秋葉原など東京都心部を中心に出店してきた。関西初となる「アンドホステル ホンマチイースト」は9店舗目に当たり、今期は大阪市内をはじめ、インバウンド客が見込まれるエリアを主戦場にドミナント出店を加速するという。今後1年間で約20店舗まで増やす計画だ。
最大の特徴は複数の最先端デバイスを1カ所に集結させ、近未来の“IoT空間”が楽しめる体験型の宿泊施設である点。同社が独自開発した専用のIoTプラットフォームアプリを用いることで、宿泊客は鍵の開け閉めや照明、エアコンなどすべてのIoTデバイスを一元的に操作できる。
アプリには「Wake up!」「Sleep」「Relax」など6つの利用シーンが設定されており、それぞれのシーンに合わせた快適な室内環境に瞬時に切り替えることができる。例えば、「Wake up!」モードのボタンをタップすれば、カーテン、スマートスピーカー、照明、テレビ、空気清浄機の5つのデバイスが一斉に起動し、起床に適した環境を整えてくれる。設定内容は、既存店の宿泊客数十万人の利用実績を基に最適化したもの。ただし個人差があるため、デバイスを起動した後で変更も可能だ。
さらにセンシング技術やクラウドデータと連携させ、天候、防災情報の通知やラウンジの混雑状況、洗濯機の使用状況なども、アプリからリアルタイムで把握できるようになっている。
全66室(他にドミトリー14床)を擁するアンドホステル ホンマチイーストには、こうしたIoTルームが7室。開放的な高い天井を生かした最上階のラグジュアリーIoTルームに導入され、アマゾンのスマートスピーカーも設置されている。「アレクサ、おはよう」と呼びかけると、アレクサが返答してくれ、木製のスマートデバイス「mui」にも「おはようございます」と表示される。
他では体験できない近未来の暮らしに触れられるのが、アンドホステルの最大の魅力だ。IoTルームはユニットバス付きのダブルツイン仕様で、4人まで宿泊可能。それでいて1部屋1万8000円(税込み)と、コストパフォーマンスの高い料金設定も人気の理由といえる。
最上階には交流好きな外国人旅行客のニーズに対応し、夜景を一望できるスカイラウンジとキッチンを配備。1階にはラウンジスペースと、ビーガン(完全菜食主義者)にも対応した飲食店を設けた。現時点では朝食サービスはないが、利用客のニーズや採算面を考慮して検討していく考えだ。