世界的に問題となっているプラスチックごみ。これを解決すべく「ドリンクをシェアする」という新市場を開拓し、ビジネス化を目指す企業がBOTLTO(ボトルト、東京・渋谷)だ。消費者はマイボトルを持ち歩き、町の飲食店が中身だけを販売する“ドリンクシェア”は社会に浸透するだろうか。

BOTLTOを導入する代官山の「Spice & Cafe FamFam」では、店のカウンターに販売するドリンクを設置。入り口でアプリの画面を見せながら「これを下さい」とスタッフに伝えてマイボトルを渡すと、ドリンクを入れてくれる
BOTLTOを導入する代官山の「Spice & Cafe FamFam」では、店のカウンターに販売するドリンクを設置。入り口でアプリの画面を見せながら「これを下さい」とスタッフに伝えてマイボトルを渡すと、ドリンクを入れてくれる

きっかけはプラスチック問題

 環境意識の高まりから、マイボトルにお茶などを入れて持ち歩いている人もいるだろう。ボトルトが始めた「BOTLTO」は、ドリンクの中身だけを販売する“ドリンクシェアリングサービス”。マイボトルがあれば、飲食店などで提供している水やデトックスウオーター、ハーブウオーターといった店独自の飲料を購入できる。また今後はコーヒーや紅茶、各種ジュース、さらには酒類などの提供も視野に入れているという。

 主なターゲットはおしゃれや自分磨きに興味があり、環境志向が高い21~49歳の女性。利用方法はシンプルで、スマホに専用アプリをダウンロードし、クレジットカード払いでお金をチャージして各店が発行するドリンク券を購入する。後は店舗でドリンク券の画面を見せて、マイボトルに飲み物を注いでもらう。

地図検索や位置情報の利用で近隣の店舗を検索。店のページを開くと、メニューが表示される
地図検索や位置情報の利用で近隣の店舗を検索。店のページを開くと、メニューが表示される
ドリンク券を購入すると「商品券」にチケットがたまる。それをスタッフに見せてマイボトルを渡せば、ドリンクを注いでもらえる。店員が見やすいように画面が上下逆になっている
ドリンク券を購入すると「商品券」にチケットがたまる。それをスタッフに見せてマイボトルを渡せば、ドリンクを注いでもらえる。店員が見やすいように画面が上下逆になっている

 ボトルトは2019年4月にアプリを開発し、同年6月から渋谷区代官山エリアに絞って実証実験を展開している。アプリの動作確認だけでなく、環境意識が高い店やユーザーなどの数を把握し、このサービスでどういう変化が現れるのかについて調査中だ。

 19年9月6日現在、代官山では5店舗で購入でき、ドリンク1杯の値段は80~300円(税込み)。値段は容量によって異なり、300ミリリットル、500ミリリットル、700ミリリットルと、マイボトルのサイズに合わせて選べる。

 ボトルト代表取締役COO(最高執行責任者)の飯田百合子氏によると、開発のきっかけは、ペットボトルをはじめプラスチック問題に対する解決の糸口になりたいとの思いからだという。

 「日本国内では年間230億本、1秒間に約740本のペットボトル飲料が消費されているといわれている。日本では約9割が回収されているので『リサイクルしているのだろう』と思いがちだが、国内ではほとんど再生されず、中国や東南アジアに輸出しているのが現状。埋め立てや焼却などを繰り返し、大気汚染や海洋汚染を引き起こしている」(飯田氏)

ボトルト代表取締役COOの飯田百合子氏
ボトルト代表取締役COOの飯田百合子氏

 マイボトルユーザーの中には、「家でドリンクを入れ、会社まで持っていくのが重くて大変」「飲み終えるとペットボトル飲料を買って移し替えることが多く、矛盾を感じている」といった不満を抱える人もいる。こうしたマイボトル活用の課題を解決し、ペットボトルを削減するためにサービス開発に取り掛かった。

 非営利団体であるNPO法人ではなく、あえて事業として始めたのにも理由がある。

 「富士経済(東京・中央)の調査によると2017年の清涼飲料市場は水やジュースなどを含めて約5兆円で、ミネラルウオーターだけでも約3600億円の市場規模がある。カフェやコンビニエンスストアなどでドリンクの中身だけを購入できる『持ち帰り飲料市場』があると仮定し試算すると、約3000億円規模になることが分かった。ビジネスとして高い可能性を感じている」(飯田氏)

 全国魔法瓶工業組合の調査によるとマイボトルは年間2000万本売れており、「容器を持つ行動が普及しているなら、中身を入れる市場もこれから伸びていくはず」と飯田氏は期待する。

購入に応じて削減できたペットボトルの本数が表示され(特許申請中)、一定数に達するとステッカーが現れ、プレゼントがもらえるなどの特典が付く
購入に応じて削減できたペットボトルの本数が表示され(特許申請中)、一定数に達するとステッカーが現れ、プレゼントがもらえるなどの特典が付く

人と店をボトルでつなげて、コミュニティー形成にも期待

 BOTLTOは導入企業側にもメリットがある。CSR(社会貢献)活動につながるだけでなく、「ボトルに入れる中身(飲料)」という新商品の販売チャネルを持てることだ。ペットボトル飲料は輸送費がかかるが、飲料だけなら原価を抑えられ、“副業感覚”で始められる。登録も簡単で、企業用のアプリをインストールして、お店の内装・商品を撮影し、値段を決めてアップロードするだけだ。

オーナーアプリの登録画面。「利用するユーザーや運営する店舗側にとって、シンプルで簡単なアプリの設計を心掛けた」(飯田氏)
オーナーアプリの登録画面。「利用するユーザーや運営する店舗側にとって、シンプルで簡単なアプリの設計を心掛けた」(飯田氏)

 BOTLTOの導入で、顧客とのコミュニケーションやコミュニティー形成も期待できる。

 「今までは消費者が店へ行き、ペットボトルの飲料を買うという一方通行の受け渡しだけ。ところがドリンクの中身だけ販売すると、環境意識の高い店とお客の双方向の交流が生まれる。さらにワークショップを行えばコミュニティーを形成できるので、BOTLTOはバーチャルとリアルをつなぐプラットフォームにもなれるのが魅力」(飯田氏)

 飲食店だけでなくイベントでも利用可能だ。例えば音楽フェスや祭りなどで、イベント中だけ使える限定ページを開設すれば、期間終了とともに閉じるといった限定的な使い方ができる。

 現時点ではSNSの利用率やアプリの登録情報などから渋谷区や世田谷区の利用率が高いことが分かった。利用数は女性を中心に増え続け、19年8月時点の登録店舗は渋谷区を筆頭に20店舗まで増加。今後は原宿や表参道、世田谷区へとエリアを広げていく考えだ。

 飯田氏は「2020年中には七大都市圏に展開するという目標を立てている。日本のメーカー企業はペットボトルの軽量化やリサイクル素材の開発などに力を入れているが、ごみを減らす活動を行い、企業や学校、飲食店など、さまざまな組織や人々と協働して活動していきたい」と意気込みを語った。

(写真/吉成 早紀)