2019年9月4日、スターバックス コーヒー ジャパン(東京・品川)は東京・銀座に新業態「スターバックス リザーブ ストア 銀座マロニエ通り」をオープンした。2階席の一部を事前予約制にし、長時間の滞在と夕夜間の利用を促す。
「ロースタリー 東京」の要素と創業地・銀座の掛け合わせ
スターバックス リザーブ ストアは東京・銀座のマロニエ通りにあった既存店舗を全面リニューアルした。「スターバックス リザーブ」の名を冠した店舗では希少なコーヒーを扱っているのが特徴で、最近では19年2月に開業した東京・中目黒の「スターバックス リザーブ ロースタリー 東京(以下、ロースタリー 東京)」が店内で焙煎(ばいせん)した豆を使用したコーヒーを提供している(関連記事「日本初! 話題の“スタバ高級店”は、なぜ駅から離れているのか」)。さらに新店舗では、ロースタリー東京と代官山の専門店だけで販売しているイタリアンベーカリー「プリンチ」(関連記事「スターバックスが“酒が飲めるパン屋”を代官山に開業」)も取り扱う。
スターバックス リザーブ ストアについてスターバックスコーヒージャパン店舗開発・サイレンリテイル統括オフィサーの石原一裕氏は、「好調なロースタリー 東京の成功を多くの人に体験してもらいたいと考え、(日本での)創業の地である銀座に、ロースタリー 東京の要素であるリザーブとプリンチを掛け合わせた店舗を開業した」と説明する。
最大90分利用可能な事前予約制度を導入
既存店との大きな違いは、1階と2階の利用目的を明確に分けていることだ。1階はベーカリーを中心にした持ち帰り専用。2階はイートイン中心で、1人掛けのソファ席や2人掛けの小さいテーブル席が多かった従来のレイアウトから、グループでも利用しやすい大きなテーブルを設けたレイアウトに変更している。
さらに一部客席に同社初となる事前予約制を導入した。予約対応は12席までと決して多くないが、18~21時半の間で最大90分利用できる。待ち合わせや打ち合わせなどで確実に席を確保したい人から注目を浴びそうだ。
「ユーザーからは『ゆったりと食事ができるスタバがほしい』という声が以前から寄せられていた。友人や家族、職場の人を誘って来店してほしい」と石原氏は意気込む。
滞在時間の延長で客単価を上げる
新業態と事前予約制の導入で同社が狙うのは、1人当たりの滞在時間の延長とそれによる客単価の向上だ。
スターバックスの店舗数はこの10年間で約1.6倍になったが、オフィスビル内などカウンター席中心の店舗も増えた。そのため「日本の従来型の店舗には1人で来店する客が多く、滞在時間が30分~1時間程度」(スターバックス広報)。ドリンクのみ、もしくはドリンクとサンドイッチそれぞれ1品の利用であれば、客単価は400~800円というところだろう。
だが、ロースタリー 東京の成功で流れが変わった。国内初の焙煎工場併設型店舗という物珍しさもあったかもしれないが、プリンチやオリジナルのコーヒードリンク、アルコール目当ての客も多く、「平均滞在時間は2~3時間」(同社広報)。他の店舗でもメニューを拡充して食事からデザートまで対応すれば、平均滞在時間を延ばし、客単価を上げられると気づいたのだろう。手始めに新業態ではランチも提供する。11~14時限定で、サラダやラザニアを組み合わせたプレートを販売する。
アルコールやランチメニューでピークタイムの分散も
新業態の狙いは他にもある。昼食後から夕食前に集中しがちな客の分散だ。スターバックスについて、食事をする場所というよりもティータイムの休憩場所と考えている人は少なくないだろう。実際「ピークタイムは14~18時」(同社広報)となっている。
しかしロースタリー 東京はグラノーラとヨーグルトなど朝食限定のメニューやアルコールを充実させ、来店時間を朝から夜まで広く分散させた。代官山のプリンチが時間帯によって提供メニューを変え、「1日中楽しめるイタリアンベーカリー」を打ち出しているのも同じ目的だろう。新業態で導入する夕夜間の事前予約制も、夕食時に他店に流れていた客を食い止める手立てとして効果を上げそうだ。
スターバックス リザーブ ストアの今後の展開は未定。しかし、「既存店のリニューアルや新規開業も含め、首都圏を中心に出店の可能性はある」と石原氏は話す。
(写真提供/スターバックス コーヒー ジャパン)