アイトラッキング技術のトビー・テクノロジー(東京・品川)が、VR(仮想現実)技術を組み合わせたマーケティング調査サービス「TobiiインサイトVR」を7月から始めた。VRで作った店舗の陳列棚に置かれた商品のどこを見ているかなどを調査し、企業の商品開発などに生かせる。トビー・テクノロジーの蜂巣健一社長にその特徴などを聞いた。

VRマーケティング調査サービスでは、模擬店舗より手軽にパッケージ調査などができる
VRマーケティング調査サービスでは、模擬店舗より手軽にパッケージ調査などができる

ユニ・チャームが生理用品の新商品開発で活用し、10月に新製品を発売する。トビー・テクノロジーはこれまでアイトラッキング技術を使った調査を手掛けてきたが、VRを活用してアイトラッキング調査の幅を広げる。調査は10人の被験者で200万円程度からを想定しており、1年で20社からの受注を目指す。

編集部: VRマーケティング調査とはどのような仕組みですか?

蜂巣: VRで作った仮想空間を実際の店舗などに見立てて、商品パッケージ調査などができるサービスです。アイトラッキング技術を使って、被験者の視線を追跡できるのが特徴です。我々の技術は角膜反射法といって、角膜に赤外線を当てることでどこをみているかを検知します。この技術をVRのヘッドセットに組み込むことで視線データが取得できます。VR空間に商品棚などを作り、商品を手に取ったりしてもらいます。被験者がどこを見ているのかが分かるので、データを分析して商品開発などに生かせるわけです。

トビー・テクノロジーの蜂巣健一社長。「最近は、技能伝承でもアイトラッキングが使われています」
トビー・テクノロジーの蜂巣健一社長。「最近は、技能伝承でもアイトラッキングが使われています」

編集部: 具体的にどんな商品を調査したのですか。

蜂巣: ショーツ型生理用品の新商品を出すに当たって、VR調査を利用していただきました。通常の生理用品のパッケージは四角形のものが一般的ですが、今回はスタンディングパウチパッケージという縦型で上がすぼんでいるタイプのパッケージで出してみようかということでした。これだと、お客さんに生理用品として認知してもらえるかが分からないため、VR調査を使って商品棚の新パッケージに目が行くかを調べました。

編集部: 新しいパッケージをVR空間の棚に並べたということですか。

蜂巣: 他社商品と一緒にユニ・チャームの新製品が並ぶ陳列棚をVR空間に作り、被験者に店頭を回遊してもらいました。VRは、こうした調査環境を自由に作れるのが強みです。被験者には、台湾HTCのVRゴーグル「VIVE Pro Eye」をかぶってもらい、VR空間の陳列棚を見て商品を選んでもらいました。こうして蓄積したデータをヒートマップを使って可視化するわけです。1秒間に50コマのデータをとっており、膨大なデータ量から分析できます。リアルな調査だとデータ処理も大変ですが、VRはリアルの場合と比べて処理の手間が省けるので、調査から納品までのスピードも上げられます。

モックアップなしで実店舗さながらに調査

商品が並ぶ棚をVR空間につくって調査する
商品が並ぶ棚をVR空間につくって調査する

編集部: 調査結果はどうだったのですか。

蜂巣: 商品棚に並べた新パッケージは、通常の四角いパッケージよりも目に留まりやすいことが分かりました。

編集部: 今回はなぜVRを使ったのですか。

蜂巣: 働き方改革で業務効率を意識し、早く結果が欲しかったと聞いています。こうした調査は、モックアップを作って模擬店舗で実施することがありますが、モックアップを作るには時間も手間もお金も掛かります。VRでの調査なら、モックアップを作らなくても実店舗さながらに商品を並べて評価ができます。今回は、新パッケージの効果を発売前に検証できたのは大きいと思います。VRを使えば調査のスピードを上げられますし、いろいろなバリエーションを試せるメリットもあります。連続性がある調査にも有効です。コンテンツやデータを蓄積できるので、過去の商品との比較なども容易にできますから。

編集部: どのくらいの時間と費用があれば調査できますか?

蜂巣: 被験者の人数やどのくらいVR空間を作り込むか、分析をどこまで深掘りするかで費用感は変わってきます。例えば、10人の被験者で、VRのコンテンツもきっちり作って分析する場合で200万円程度です。期間は、基本3~4週間を見ていただければと。もっと早くって言われることもありますが、目安としてはそのくらいです。

編集部: アイトラッキング調査はどのようなところで使われていますか?

蜂巣: マーケティングリサーチでは、店頭調査、棚割調査や商品パッケージ比較とか、広告販促物の評価ですね。あとはウェブサイトやスマートフォン、業務端末などのユーザビリティー調査にも使われています。花王ロジスティクス(東京・墨田)、デンソー、JR西日本など、様々な業種の500社以上、東京大、京都大、大阪大など300以上の機関で利用されています。19年7月からアイトラッキングを使ったVRの調査サービスを開始しました。調査のスピードアップも求められている状況ではVRマーケティング調査を活用いただくといいと思います。

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