痴漢の手にポンっと押すだけで人物特定に役立つスタンプをシヤチハタ(名古屋市)が発売。UV発色インキを採用し、ブラックライトで照らせば印影がはっきり見える。Twitter上で痴漢対策に安全ピンを使うことへの議論がきっかけで商品化に乗り出した。限定500個は30分足らずで完売した。

「迷惑行為防止スタンプ」(税別2500円)。印面デザインは手のマーク
「迷惑行為防止スタンプ」(税別2500円)。印面デザインは手のマーク

ブラックライトでしか見えない

 2019年8月27日にシヤチハタがテスト販売した「迷惑行為防止スタンプ」は、既存のワンタッチ式ハンコ「キャップレス9」に特殊インキのUV発色インキを採用した。UV発色インキは太陽光や照明の下では無色透明で、ブラックライトを当てると印影が浮かび上がる。そこで今回の商品にはブラックライトを付属した。

 ブラックライトがなければ見えないUV発色ライトを採用した理由は、いたずらやイジメの防止だ。「むやみに押して、この商品がきっかけで悲しい出来事が起こってほしくない」(シヤチハタ)。

 片手で簡単に操作できるが、ロック付きなのでユーザーが「押すぞ!」と意識しなければ押せない。これにより誤用が防げる。リールコードが付いており、かばんやポケットなどに取り付けられる。公式オンラインストアでのテスト販売では、30分足らずで500個が売り切れた。今後、アンケート結果などを参考に本格販売も検討する。

付属のブラックライトで照らせばはっきりと印影が浮かび上がる
付属のブラックライトで照らせばはっきりと印影が浮かび上がる

あくまで抑止が目的

 開発の発端は19年5月、Twitter上で「痴漢されたら安全ピンで刺すことを勧められた」という投稿だ。これに対し「抑止効果がある」「それは傷害罪に当たる」と賛否両論が巻き起こった。そんななか、あるユーザーが「抑止になるハンコを開発してほしい」とシヤチハタに要望した。それを受けて同社は5月22日に「今現在Twitterで話題になっている社会問題の件ですが、早期に対応ができるようにします。ジョークではなく、本気です」と投稿し、話題になっていた。

 折しもシヤチハタは印鑑以外のスタンプ用途の拡大を積極的に進めていた。これまでも、子供の手洗い練習用スタンプ「おててポン」や、おむつに押せる名前スタンプ「おむつポン」、知育用スタンプ「エポンテ」などを発売している。実は「迷惑行為を防止するためのスタンプも需要があるのではないか」という声が社内で上がっており、企画が進んでいたという。

 「開発の土台ができていたところにTwitter上での議論が起きたことで、早期に商品化に向けた発信ができた」(シヤチハタ)

 同社は今回の商品はあくまで迷惑行為の抑止ととらえている。「実際に押される場面は起きてほしくない。このスタンプが完全に証拠と認められるかどうかは保証していないが、携帯していることが抑止につながれば」と話す。抑止力になるにはある程度の認知が必要だと考えていたが、今回の反響は想定以上だったという。

 「このような商品を出さなければいけなかったこと自体が残念。このスタンプが必要のない世の中を目指すべきだ」(シヤチハタ)

抑止力となるよう目立つようにボディーカラーは黄色にした。黄色は“注意”も意味している
抑止力となるよう目立つようにボディーカラーは黄色にした。黄色は“注意”も意味している

(写真提供/シヤチハタ)