あいみょんがインスタで投稿し、話題に

 好調の要因は、ドラッグストアやディスカウントストアにまで販路が広がり、外国人観光客の需要が拡大したことが大きい。もともと東南アジアには30年以上前に進出しており、なじみのある日本土産をまとめ買いする観光客が急増したことも一因と思われる。

 もう1つの要因は、SNSでの投稿がきっかけで「ココアシガレット」に対する注目度が高まったことだ。なかでも19年2月、シンガーソングライターのあいみょんが自身のインスタグラムに投稿した雑誌の写真が大きな反響を呼んだ。ココアシガレットを指に挟み、たばこを吸っているようなポーズは、まさに多くの大人が記憶する子供の頃の経験そのもの。インスタのコメント欄には「おっさんもガキの頃にやった覚えがある」「食べたいなぁ、ココアシガレット」「シガレット懐かしー」「持つ人が持つとリアルに見えるなー」など、ココアシガレットに関するコメントも多く、約16万8000件のいいね!を集めた。

あいみょんがインスタに投稿し、話題を集めた1枚。たばこを吸っているのかと思いきや、ココアシガレットを指に挟んでいる姿がカッコいいと評判に
あいみょんがインスタに投稿し、話題を集めた1枚。たばこを吸っているのかと思いきや、ココアシガレットを指に挟んでいる姿がカッコいいと評判に

 ツイッターにも同じ投稿がされ、10万9000いいね!を獲得。あいみょんの飾らないカッコよさにレトロ感満載のココアシガレットがマッチし、SNSでバズったことがブランド人気の再燃につながった。

 さらに加熱式たばこ「IQOS(アイコス)」をモチーフにした「myCOS(マイコス)」も、「健康志向の高まりでココアシガレットが変貌」と、ツイッターで話題を集めた。18年6月に発売し、19年に入ってアマゾンの食玩部門ランキングで1位を獲得。商品名にひっかけてパッケージに描かれた舞妓(まいこ)のイラストは、インバウンドの需要を見込んでのものという。

加熱式たばこをモチーフにしたミント菓子「マイコス」は6本入り50円(税別)。大手たばこ会社からのクレームを乗り切るため、ローマ字表記を変更した(写真は「myCOS」に変更する前のパッケージ)。舞妓のイラストもしゃれが利いている
加熱式たばこをモチーフにしたミント菓子「マイコス」は6本入り50円(税別)。大手たばこ会社からのクレームを乗り切るため、ローマ字表記を変更した(写真は「myCOS」に変更する前のパッケージ)。舞妓のイラストもしゃれが利いている

パロディー菓子、世界企業に勝つ

 駄菓子ビジネスはこの半世紀で大きく変貌を遂げている。オリオン創業当時、主要販路だった駄菓子店は全国におよそ6万軒あった。しかし少子化に加え、塾に通う子供の増加や、テレビゲームなど遊びの多様化で、駄菓子屋が持つ“放課後のたまり場”としての役割が薄れ、次第に街中から駄菓子店が消滅し始めた。80年代後半にチェーン店の「だがし夢や」が開業した頃から、スーパーマーケットやコンビニエンスストアで駄菓子が売られるようになったことも、駄菓子屋の減少に拍車をかけた。

 一方、同社は84年、本社内の工場に自動梱包ラインを設置し、生産の機械化に着手した。コンビニに商品を安定供給できるメーカーが少ないなか、商品バーコードを付けたことでコンビニの販路を開拓。90年代半ばには第2次駄菓子ブームに乗って、業績は一気に拡大した。

 創業以来守り続けてきたのが価格だ。「子供が手の届く価格」を重視し、ミニコーラは78年の発売以来1個30円、SNSで話題のココアシガレットもたった30円で手に入る。“30円の壁”を守るための企業努力も惜しまない。ミニコーラは70年代、2000年、現在と粒の大きさを少しずつ変えてきた。同じグラム数でも粒を大きくすることで製造時間が短縮でき、生産能力を30%アップできるからだ。

 「生産方法で工夫してコストを抑えることで値段を据え置きにし、お客様の信頼をつないできた。現在のミニコーラは4代目。改善、改良、改革をずっとやってきたから長く売れ続けている」と、高岡常務は胸を張る。

 ただ、主力商品がパロディー菓子だけに、著名ブランドや企業から抗議を受けることや訴訟を起こされることも少なくない。例えばミニコーラは発売の翌年、米コカ・コーラから不正競争防止法違反で警告を受けた。しかし飲料と菓子では分類区分が異なるうえ、日本市場での販売実績が認められ、10年にわたる裁判で勝訴。商標登録が実現したのは今から2年前のことだ。

 マイコスも当初は「myQOS」と表記していたが、米フィリップ・モリス・インターナショナルからのクレームを受け、「myCOS」と表記変更して切り抜けたという。世界の大企業を相手にした戦いで勝利を収められたのも、笑いの文化を企業風土に根付かせ、機転を利かせて苦境を乗り越えようとする大阪商人のサービス精神としぶとさのたまものといえるだろう。