前売り券1万枚を完売し、オープン前から注目を集めた「東京タピオカランド」。地域資産と若者文化を掛け合わせた地方再生を目指す“インスタ映えイベント”第4弾だ。TikTokなどヒットメーカーも参加したが、意外な酷評も聞こえてくる。タピオカランドが描くビジョンとは。

2019年8月13日~9月16日まで原宿で開催する東京タピオカランド
2019年8月13日~9月16日まで原宿で開催する東京タピオカランド

 アイスクリーム、ドーナツ……。スイーツをモチーフにした“夢の国”をテーマにしたインスタ映え特化型イベントを手掛けてきたスターズ(東京・港)が、今回選んだのはタピオカだった。2019年8月13日、原宿の新施設「Jing」に期間限定でオープンした東京タピオカランドは、1000円の前売り券1万枚が即完売するなど高い注目度で話題になった。

 会場に入るとTikTokや人気YouTuberとコラボしたウェルカムドリンクが並ぶ。タピオカを模したボールプール、カラフルなブランコやロッカーなど、インスタ映えしそうな撮影スポットが盛りだくさんだ。

タピオカ風ボールプール
タピオカ風ボールプール

 肝心のタピオカドリンクは、初登場を含む4つの国内ブランドが出展した。スターツの大池知博社長はブランド選定について、「味、メニューの多様性、有名人などが経営に携わっているという3つのポイントで選んだ」と話す。タピオカランドが出展をオファーしたのは開催の約2カ月前。外資ブランドにも打診したが、間に合わなかったそうだ。「今後、他の都市での開催も視野に入れている。そのときにはぜひ外資ブランドにも出展してもらいたい」と期待する。

 インスタグラム上では、さまざまなフォトスポットで思い思いのタピオカドリンクを片手に撮った写真が続々投稿されている。一方、ツイッターを中心に以下のような辛らつな意見も飛んでいる。「入場料(前売り1000円、当日1200円)を払っているのに再入場ができず会場外のトイレに行けない」「小学生以下は無料だと告知されていたのに料金がかかった」「グッズの缶バッジはただ黒く塗ってあるだけで300円は高い」「カラフルなロッカーは過去のイベントの焼き直し」ーー。

 スターズは想定外の批判を受けて即座に対応した。再入場は可能に、子供料金はチケットサイトと公式ページで食い違いがあり公式ページの表現があいまいだったとし、小学生以下は無料対応とした。カラフルロッカーは、過去に開催した他のイベントで使用し人気だったもので、主催者側からぜひ今回も使ってほしいという要望があったのだという。大池社長によると「前回同様、今回も人気だった」という。

前回のイベントで人気だったため、タピオカランドで復活したカラフルなロッカーだが「過去イベントの焼き直し」と辛らつな意見も
前回のイベントで人気だったため、タピオカランドで復活したカラフルなロッカーだが「過去イベントの焼き直し」と辛らつな意見も
スターズの大池知博社長
スターズの大池知博社長

地方再生の実績作りを目指す

 そもそも大池社長がインスタ映えイベントを手掛けたのは、地方に埋もれた地域資産を掘り起こし、若者文化とのコラボで生まれ変わらせたいという思いからだった。1994年から2000年初頭にかけ、愛知県犬山市が官民の攻防を繰り返しながら古い街並みを生かして城下町を再生。その際SNS映えを活用し、若者の取り込みに成功したのに感銘を受けたという。

 「国内には日本の良さを持った観光地がたくさんあるが、時代変化で若者に刺さる観光地が少なくなり、さびれている場所も多い。犬山市のような成功例もあるが、いまだに地方の魅力をうまく若者に向けて発信できていない。そこで地方の眠れる価値を発掘したいと思った」(大池社長)

 そのための実績作りとして取り組んだのが、インスタ映えイベントだ。まずは17年に表参道で「東京アイスクリームランド」を手掛けた。実はそこでアイスは食べられないにもかかわらず、撮影目当てに約1万人が来場した。その後もみなとみらいやスカイツリーなど場所を替えて開催。18年には新宿で「東京ドーナッツランド」、19年5月には再びスカイツリーで「東京レインボースイーツランド」と立て続けに開催し、ファンを増やしてきた。

 これまでイベントが終了するたび、開催のオファーが舞い込んできたという。「タピオカランドでも、主催者側の見学者が多数訪れている」と、大池社長は注目度の高さをアピールする。

 ネットでの厳しい評価もなんのその。会期中に3万人以上の来場を目指す東京タピオカランド。店舗数が飽和し、タピオカドリンク自体のブームの終焉も叫ばれている中、“ポストタピオカ”でもこの手法が生かせるかどうか。若者文化をイベントとして成立させるノウハウを地域資産と結び付け、一過性でなく新たな文化として生まれ変わらせられるかどうが鍵となりそうだ。

2019年4月にオープンしたばかりの「三茶ヤ」は、大量のタピオカが特徴で焦がしチーズを載せる独特なメニューも人気。既存の飲食店に併設してキッチンを共有することで初期投資を抑えるという方法で、国内最多の出店を計画している
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19年9月に1号店を出店予定の「虎一茶(タイガーティー)」は、代表が米国留学中にタピオカが一過性の流行でなく日常に浸透していた様子を見て出店を決めたという。台湾産のタピオカや茶葉を使用している
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「謝謝珍珠(シェイシェイパール)」は、全国11店舗と本場台湾にも1店舗を展開し国内のタピオカブランドをけん引する。飲み残しや容器のポイ捨てが社会問題化するなか、原宿店には国内初のタピオカ専用ゴミ箱を設置し話題になった
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タピオカスタンドが少ない六本木での出店を控える「LAB LAP(ラベラペ)」は、専用シェーカーを使ったタピオカドリンクが特徴。店主の出身である九州産食材を使用したレモネードやいちごラテなど豊富なメニューをそろえる
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(写真/中村宏)

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