米ウォルマートがニューヨーク州レビットタウンにAI(人工知能)活用型次世代店舗をオープンした。米アマゾン・ドット・コムの「Amazon Go」同様、店内に多数のカメラを設置するが、ウォルマートの目的は決済ではなく在庫管理だ。実際に現地に足を運び、詳細をリポートする。

米ウォルマートはニューヨーク州の既存店で、AIを活用した在庫管理の実験を開始した
米ウォルマートはニューヨーク州の既存店で、AIを活用した在庫管理の実験を開始した

 実験店舗となったのは、大型ディスカウントストアとして知られるウォルマートの大型店舗ではなく、「ネイバーフッドマーケット」と呼ばれる、いわば大型スーパー業態だ。生鮮食品と日用品を主に扱う。ニューヨーク州南東部に位置するロングアイランド島の中にある人口5万人程度の小さな町に立地している。ロードサイド型大型店舗が数店集合する、この町で最も大きなショッピングセンター内の大型スーパーとして、地元の人々に欠かせない場所だ。

 このウォルマートネイバーフッドマーケットは、売り場面積4645平方メートル、店舗スタッフは100人以上で、約3万アイテムを扱っている。新設店舗ではなく、既存店舗に大量のカメラを追加し、改装した。2019年4月に実験を開始した。同店は数ある店舗の中でもかなりの繁忙店であり、ここで成功すれば他店への展開が容易と考えたようだ。

 ウォルマートIRL(インテリジェント・リテール・ラボ)とも呼ぶこの実験店舗に、設置されたカメラはなんと3000台以上。しかし、同じく店舗に大量にカメラを導入し、レジなしを実現した「Amazon Go」とは異なる目的で使われている。

カメラによる画像認識に加え、将来的には、棚に敷いた静電容量マットを活用して、商品の補充タイミングを計ることも検討している
カメラによる画像認識に加え、将来的には、棚に敷いた静電容量マットを活用して、商品の補充タイミングを計ることも検討している

 ウォルマートによると、カメラは基本的に棚と床を監視し、大量の在庫管理を効率化する。具体的には在庫の補充、発注を自動化し、間違った商品の陳列、床に落ちた商品の検知を行う。また、将来的には棚に敷いた静電容量マットで「商品が置かれた、取り除かれた」をチェックしたり、生鮮食品のエリアでは商品の色の変化を見るRGBカメラで、品質が劣化した商品や変色した商品を検知したりすることも考えているという。

 カメラで検知した情報はエリア担当のスタッフの手持ち端末に即座に送り、対応させる。顧客の個人情報に関しては入退店や顧客属性などの基本的な情報の取得のみにしか利用しておらず、データは1週間で破棄するという。

 ウォルマートIRLの常駐技術スタッフによると、この店舗で目指している最良の店舗体験とは、売り場が常に清潔で、全ての商品の在庫があり、欲しいものを探しやすいことだという。

 実際に訪れてまず感じたのが、大型スーパーにしては売り場が圧倒的に美しいということだ。シンプルな内装に分かりやすい大きなサインと、整理整頓された清潔な店舗というだけで、これだけ印象が変わるのかと驚かされた。

 ディスカウントが売りもので膨大な数の顧客が訪れる店舗は、顧客が手に取った商品を棚に戻したりすることが多いせいか、売り場が散らかって見えることがよくある。また、散々歩き回った揚げ句に欲しいものが売り切れていることも少なくない。毎日利用する場所が常にそのような状態だと、顧客の不満が募ることは容易に想像できる。

実験店は他店と比較して売り場が美しく感じられた
実験店は他店と比較して売り場が美しく感じられた

 また、棚卸しや商品補充などの作業は、効率を上げるのが難しいだけでなく、働くスタッフにとって必ずしも楽しく有意義な仕事だとは見られていない。これらの単純作業をテクノロジーでできるだけ効率化し、本来必要とされる接客に時間を割けるようにするのがウォルマートの目的だ。郊外の店舗で働くスタッフは、顧客の知人や友人である可能性も高い。地域コミュニティーと関係性の高いビジネスを展開する企業にとって、こういった考え方は長期的にもメリットが大きい。

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