淡路島の田畑のど真ん中に突如現れた、サンリオの人気キャラクター「ハローキティ」の巨大な顔。その正体は大手人材派遣のパソナグループが手掛ける飲食施設「ハローキティショーボックス」だ。食事とショーが楽しめるシアターレストランが淡路島で、しかもキティとのコラボによって誕生した背景とは。

巨大なキティちゃんが目印の「ハローキティショーボックス」(兵庫県淡路市野島平林177-5) (c)1976, 2019 SANRIO CO., LTD.(写真提供/パソナグループ)
巨大なキティちゃんが目印の「ハローキティショーボックス」(兵庫県淡路市野島平林177-5) (c)1976, 2019 SANRIO CO., LTD.(写真提供/パソナグループ)

“空からしか見えないキティちゃん”の理由

 瀬戸内海を望む兵庫県淡路島市の県道31号線沿いに、2019年8月12日オープンした「ハローキティショーボックス」。真っ白い円形の建物は、うっかりすると見逃してしまうくらいシンプルだ。外観で唯一それと分かるのは、屋根全体で表現されたキティちゃんの顔だけ。ただ、その“表情”は空からしか見ることができない。

地上から見るとハローキティ関連施設だとは分からない
地上から見るとハローキティ関連施設だとは分からない

 地上よりもあえて“空の旅人”にアピールするユニークなデザインについて、パソナグループの南部靖之代表は「グーグルマップでキティちゃんを発見したときの驚きは、大きな話題になるはず。キティちゃんを通して世界中に淡路島を売り込もうというのが一番の狙い」と明かす。

 実は同社が淡路島で手掛けるハローキティをテーマにした飲食施設はこれが2店舗目だ。18年4月に、ギャラリーとシアターを併設した創作オリエンタルレストラン「ハローキティスマイル」をオープン。海に面した絶好のロケーションと、ハローキティの世界観を満喫できる本物志向の空間と料理が受け、大人の女性を中心に大勢の観光客が訪れている。ハローキティのコアなファンは訪日外国人観光客にも多く、団体客がバスでやって来るという。「立地が不利なので当初はあまり期待していなかったが、予想以上の反響に、ハローキティの人気の高さを改めて思い知らされている」(南部代表)。

ハローキティの世界観を満喫できるギャラリーやショップ、レストランを備えた施設「ハローキティスマイル」
ハローキティの世界観を満喫できるギャラリーやショップ、レストランを備えた施設「ハローキティスマイル」

 ハローキティスマイルの建物も、真っ白で巨大なキティちゃんの頭部が印象的なユニークなデザイン。瀬戸内海を眺めるキティちゃんの全貌を捉えるためにドローンを飛ばしたり、離れた場所から撮影したりと、ファンの奮闘ぶりがSNSで発信され、さらに話題を呼んでいる。

 今回新設されたハローキティショーボックスは、ハローキティスマイルを訪れたサンリオの辻信太郎社長の提案から生まれたという。「これからはシアターレストランがイケる。そこにキティも生かせないかとアイデアをもらい、1年半前に決めた。シアターレストランは日本では珍しいが、音楽祭で町おこしに成功している海外の事例を参考に、あえて挑戦した」と、南部代表は意気込む。

巨大スクリーンに映る圧巻のデジタルアート

 ハローキティショーボックスの建物内部では、「施設全体が驚きと感動にあふれる」をコンセプトにさまざまな仕掛けが施されている。一番の見どころは、「ハローキティ ドリームエンターテインメントショー」だ。メインフロアとなる2層の大きな吹き抜け空間は、ステージと1、2階合わせて全169席の客席で構成。食事を味わいながらステージのパフォーマンスを楽しめるよう、ステージの高さを低くし、客席との距離感を縮めている。

1階テーブル席134席、2階カウンター席35席。2時間の入れ替え制で1日3公演行われる
1階テーブル席134席、2階カウンター席35席。2時間の入れ替え制で1日3公演行われる

 圧巻は縦6×横16メートルの巨大LEDスクリーンに映し出される、迫力満点のデジタルアート映像だ。ピアニストの夢をかなえたキティちゃんが舞台でピアノを演奏したり、世界の都市を巡ったり、ハロキティのプロモーション映像が流れた後、鮮やかな花々が咲き乱れる美しい映像に観客は度肝を抜かれる。スクリーンだけでなくステージまで広がる立体的な映像によって、本物の花の世界に飛び込んだような感覚を味わえるのだ。

ハローキティが世界を旅するプロモーション映像。韓国のデジタルアート制作会社との取り組みで実現した
ハローキティが世界を旅するプロモーション映像。韓国のデジタルアート制作会社との取り組みで実現した

 その映像をバックに、トランペッターやバイオリニスト、ダンサー、ボーカリストらによる華やかなパフォーマンスが披露される。約30分のエンターテインメントショーは1日3公演で2時間の入れ替え制。何度来ても飽きないよう内容は毎月更新する予定で、ショーの出演者も国内外から募集中だ。

巨大LEDスクリーンをバックに、音楽家による歌とダンスと演奏を楽しめるエンターテインメントショー
巨大LEDスクリーンをバックに、音楽家による歌とダンスと演奏を楽しめるエンターテインメントショー

 もう1つの目玉である料理は、米国で流行のビーガン料理とスイーツを提供する。ハローキティスマイルの総合プロデューサーであり、ひょうご「食」担当参与でもある山下春幸氏が監修。日本の精進料理のように肉、魚、卵などの動物性食品を一切使用せず、おからなど和の調理法を洋食に生かした世界初のビーガン和食が食べられる。「いまや健康的な料理=まずい、時代ではない。おいしいだけでなく、宗教や健康、アレルギーの問題もすべてクリアできる世界最先端の料理を味わってほしい」と山下氏。

動物性食品を一切使わず、体に優しいビーガン料理を味わえる。一の重箱には、おからを使った白身魚風フライ、二の重箱には大豆食品を使ったミートボールの黒酢あんかけなどが入っている
動物性食品を一切使わず、体に優しいビーガン料理を味わえる。一の重箱には、おからを使った白身魚風フライ、二の重箱には大豆食品を使ったミートボールの黒酢あんかけなどが入っている

 スイーツビュッフェのデザートも、米粉と植物性食品だけを使った、健康と環境に配慮したもの。トレンドに敏感な女性受けしそうな中身だが、今後は子供や男性の好みを反映したメニューも開発していくという。

 料金はランチ、ディナーともに大人6800円(事前予約は5800円、税別・以下同)、子供3400円(事前予約は2900円)。カフェは大人3500円、子供1750円。9月以降の平日は20%オフとし、リゾート地ならではの平日対策にも抜かりない。

ハローキティが立体的な映像として映し出される3Dホログラムなどのメディアアートを駆使した2階「ハローキティ ドリームギャラリー」
ハローキティが立体的な映像として映し出される3Dホログラムなどのメディアアートを駆使した2階「ハローキティ ドリームギャラリー」
マグカップ、Tシャツ、トートバッグなど、ここでしか買えないオリジナルグッズ500点を取りそろえたハローキティショップ
マグカップ、Tシャツ、トートバッグなど、ここでしか買えないオリジナルグッズ500点を取りそろえたハローキティショップ

大阪万博に向け、新たな施設の計画も

 ハローキティをテーマにした飲食施設のほかにも、パソナグループは地方創生プロジェクトの一環として島内で複数のカフェやレストラン、観光施設を運営している。

 12年に廃校になった小学校をリノベーションしたマルシェ×レストラン「のじまスコーラ」の開設を皮切りに、16年には美しい夕陽と海を満喫できるシーサイドマーケット&レストラン「クラフトサーカス」をオープン。17年7月には、「クレヨンしんちゃん」や「火の鳥」など日本の人気アニメ・マンガと自然を融合させた日本初の体験型アニメパーク「ニジゲンノモリ」を開設した。ニジゲンノモリ内には、グランピング施設「GRAND CHARIOT 北斗七星135°」が加わり、ハローキティなど人気キャラクターをモチーフとした宿泊施設も集客に効果を上げている。

 さらに19年4月には人気忍者アニメ「NARUTO」と「BORUTO」をテーマにした新アトラクション「NARUTO&BORUTO 忍里」が誕生。アジアはもとより欧州のアニメファンが増えたほか、ゴールデンウイークには18万人が来場するなどこれまで以上の盛り上がりを見せている。

2017年7月にオープンした「ニジゲンノモリ」では、「クレヨンしんちゃんアドベンチャーパーク」「NARUTO&BORUTO 忍里」「ナイトウォーク火の鳥」などのアトラクションを用意。写真は、映画クレヨンしんちゃん「嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」をモチーフにした巨大アスレチック
2017年7月にオープンした「ニジゲンノモリ」では、「クレヨンしんちゃんアドベンチャーパーク」「NARUTO&BORUTO 忍里」「ナイトウォーク火の鳥」などのアトラクションを用意。写真は、映画クレヨンしんちゃん「嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」をモチーフにした巨大アスレチック

 「淡路島は関西の各空港に近く、日本のゲートウェーになり得る。しかし、これまでどんな島にしていくかというコンセプトがなかっただけ」と南部代表。中期ビジョンでは、アニメやキャラクターなどのジャパンコンテンツの誘致を加速させ、インバウンド需要のさらなる拡大を目指すという。大阪万博の年までに基盤づくりを行い、「将来的には淡路島をインターナショナルアイランド、健康アイランドにしていきたい」(南部代表)。

 ただし、地方創生は地元の理解が得られなければ成功は難しい。日本のアニメ・キャラクターを活用した地方創生事業は、ようやく軌道に乗り始めたところだ。

(写真/橋長初代、写真提供/パソナグループ)