「マーケターの価値を明らかにする」をビジョンとするマーケターキャリア協会(MCA)が2019年8月6日、マーケターのキャリア構築を支援する「MCA道場」をスタート。第1回はMCA理事の富永朋信氏(プリファードネットワークス執行役員CMO)が無料の開講記念講座を行った。

マーケターキャリア協会(MCA)理事の富永朋信氏。1992年大学卒業後、日本コダックに入社。日本コカ・コーラ、西友、ドミノ・ピザ ジャパン、イトーヨーカ堂などでマーケティング関連職務を歴任。2019年7月、プリファードネットワークス執行役員CMO(最高マーケティング責任者)に
マーケターキャリア協会(MCA)理事の富永朋信氏。1992年大学卒業後、日本コダックに入社。日本コカ・コーラ、西友、ドミノ・ピザ ジャパン、イトーヨーカ堂などでマーケティング関連職務を歴任。2019年7月、プリファードネットワークス執行役員CMO(最高マーケティング責任者)に

 冒頭では富永氏が自身のキャリアを振り返り、新卒で入った会社でAIDMA注1)と出合い、自分が普段何気なく行っている買い物のプロセスを見事に表しているところにマーケティングの素晴らしさを感じたこと。3度目の正直で憧れのコカ・コーラに入社し、仮説を形にしてそれに消費者が反応してくれることがマーケターとしての幸せの原体験となったこと。購買体験は販売チャネルが左右していることに気づいてリテールに飛び込んだことなど、駆け出し時代からCMO(最高マーケティング責任者)として活躍するまでの転換点を説明した。

注1)マーケティングの古典的フレームワークで、消費者が何かを買うときの心理的作用や行動をプロセス化したもの。「Attention (気づく)」「 Interest (興味を持つ)」「 Desire(欲しいと思う)」「 Memory(心の中の買いたいものリストに加える)」「Action(実際に購入する)」という5つの頭文字を取っている

 その中で、40人のチームを勝手に編成してメンバーに総スカンをくらったり、リーダーになってやりたいことをやるためには他部門との調整も重要だと分かったりし、社内を向くことの重要性を実感。そこから、社内で信頼を築いてほかの部署ともスムーズに仕事ができるようになり、成功実績を積み上げたことで社外から講演や執筆のオファーが来るようになって、自分のブランドでキャリアが築けるようになったそうだ。

 そのうえで、富永氏は組織の本質として以下を学んだという。


  • 組織には二項対立が発生するのが自然。その対立に蓋(ふた)をせず、向き合うこと
  • 社内の期待を無視してやりたいことをやってもうまくいかない。社内でヒアリングして期待を知り、それとやりたいことのバランスをとること

 後者の例として、以前勤めていた流通企業でマーケティングチームをブランドマネジメントチームやコンタクトポイントマネジメントチームなどに分けたところ、社内が混乱し、他部門から全く絡んでもらえなくなったという。その解決策として、社内に存在する概念に合わせてサブチームを作り直したそうだ。

 最後に、リーダーの心得として、以下を挙げた。


  • 床屋の椅子に座らない(自分自身は2割かっこいい自分しか知らない。企業だとブランドがまさにそう。それを前提に振る舞うと消費者は離れる)
  • 減点法<加点法(「A案はここが駄目、B案はここが駄目、だからC案」という決め方は駄目。「A案のここがいいから、この案の他の部分を直して」などと良いところに着目すべし)
  • 去年は何をしていても関係ない(一度うまくいったことと同じことをやっても、最初ほどの効果は期待できない)
  • 競合はまねするためでなく、同一化しないために見る
  • 行動経済学的な視座の大切さ(人は合理的に判断しない)
  • 自分が関所にならない(自分が権威になると、部下が「この企画、富永さん好きそう」という企画を上げてくる。これが危険。部下がお客さんをちゃんと見ているかどうかを注視すべし)

 講演の冒頭にMCAの中村全信事務局長が「ここはマーケティングを学ぶ場所ではない。マーケティングのキャリア構築に必要な意識と知識を体得する場所」と述べたように、マーケティングの手法や事例を学ぶ従来のセミナーとは一線を画した内容だった。

 MCA道場の第2回は19年9月13日、「マーケターに必要な3つの資質(IQ、EQ、CQ)」をテーマに、ニューバランスジャパン DTC&マーケティングディレクターの鈴木健氏が登壇(受講料に定価はなく、申込者が自分で設定)。第7回まで予定されており、卒業課題を提出すると「茶帯」に。20年にはマスタークラスを開講予定で、修了者は「黒帯」に認定するという。

講演後には「これまでのキャリアで幸せだった瞬間」「幸せをドライブしたものは何か」「自分のマーケターとしての弱み」「これからマーケターとしてどんな行動をとるべきか」をテーマに受講者が語り合うワークショップを行った
講演後には「これまでのキャリアで幸せだった瞬間」「幸せをドライブしたものは何か」「自分のマーケターとしての弱み」「これからマーケターとしてどんな行動をとるべきか」をテーマに受講者が語り合うワークショップを行った
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