丸井グループは、2019年8月2日、有楽町マルイの「みんなのオーダー バイ ビサルノ」で、“すべての人”が使いやすい試着室「みんなのフィッティングルーム」の体験イベントを開催。車いすユーザーをはじめ、幅広い人が利用できるユニバーサルデザインを取り入れた新しい試着室だ。
試着を諦めている車いすユーザー
「みんなのフィッティングルーム」の広さは通常の試着室の約3倍で、車いすユーザーも無理なく試着できるのが特徴。ホテルの中庭をイメージした「太陽」と安心や安定をイメージした「月」の2部屋を用意し、障害者だけでなくベビーカーを利用している子連れ客や友人同士、ファミリーなども自由に利用できる。希望者はスタッフに声をかければ、フロアをまたいでの利用も可能だ。
有楽町マルイ7F、みんなのオーダー by VISARUNO ショップマネージャー兼コミュニティオーガナイザの須藤修二氏によると、このフィッティングルームを作ったのは「さまざまな人のニーズに応えたいという思いからだった」と言う。
「着想を得たのは3年前。NPO法人ReBitと共同で行ったLGBT(性的少数者)就活のイベントなどを通し、さまざまな人の声を聞いている中で『服を着られる場所がなく試着を諦めている』という車いすユーザーの人と出会った。その言葉が悔しくて、誰でも利用できる試着室を作ろうと決心した」(須藤氏)。
車いすユーザーは自分のサイズの商品を手に取り、そのままレジに持っていく場合がほとんど。そのため購入したはいいが、サイズが合わないこともよくあるという。須藤氏は「どうせお店で着られないのだからと諦めず、ぜひ試着を楽しんでほしい」と話す。
着想から1年半かけて完成したのが、みんなのフィッティングルームだ。この試着室にはさまざまな工夫が施されている。「いろんな人への聞き込み調査により、車いすの人は段差があると入りにくく、カーテンを引くのが難しいことが分かった。そのため扉はスライド式を採用し、車いすの外輪を回す手が傷つかないよう、角を丸くした」(須藤氏)。
着替えるときに汗をかく人も多いため、室内に扇風機を用意。自分のベッドで着替える人もいるので、車いすを寄せて上がりやすいソファベッドも設置している。
「みんなのフィッティングルーム」という名前の通り、ターゲットは車いすユーザーだけではない。「既存の試着室は誰かが使うためにセグメントされている。今回は車いす利用者だけでなく、すべての人が使えるものを目指した」と須藤氏。弱視の人にも配慮し、照明の明るさや色が調整できるスイッチや、耳の聞こえない人が筆談できるよう筆談ボードも置いた。さらに試着室内に呼び鈴を設置し、発話障害のある人やヘルプ時などに、気軽に店員を呼べるようにした。
今後は全店展開も視野に
イベントでは埼玉ライオンズ所属の車いすバスケットボールプレーヤーの篠田匡世選手や、車いすユーザーでタレントの岡野成美さん、内藤沙月さんも登壇。「みんなのフィッティングルーム」で試着を体験した。
使い心地について篠田さんは「立って着替えるときがあるが、背面を見たくても体の向きを変えて鏡で見ることが難しい。鏡が3面に設置してあるので、振り向くだけで見られるのはありがたい」と感想を述べた。岡野さんも「空調があるのがうれしい。服選びが身近に感じられた」と話した。
須藤氏は「今回、ユニバーサルデザインの試着室は初めての試みだが、今後はマルイ全店に広がってゆけばよいと思っている。マルイだけでなく、世界中のすべての店舗でこのような取り組みが始まっていってほしい」と語った。
(写真/吉成早紀)