「いいね!」のやり取りを重ねるだけで、お金が稼げる異色のSNSアプリ「Poplle(ポップル)」が若者の間で人気だ。承認欲求を満たすだけだったSNSが、お小遣いを生み出す“打ち出の小づち”になっている。その仕組みとは?

 ポップルは、Instagramのように写真や動画を投稿できるSNSアプリ。写真投稿などの機能はいたって普通だが、最大の特徴は自分の投稿に付いたいいね!や、他のユーザーの投稿にいいね!を押した数がカウントされ、「1いいね!=1円」相当がもらえることにある。

 他のSNSと同じく、ポップルはユーザー同士でフォローしあうことでつながる仕組み。フォロワーを増やすために、自身のTwitterアカウントで拡散したり、ポップル専用のアカウントを開設したりするユーザーもいる。写真や動画をアップするだけでお金がどんどんたまるポップルは、学生や子育て中の主婦との親和性が高いという。「いつものSNSと同じように使うだけで、お金が稼げる。インスタ好きの子育てママなら、パートを辞めて子供と一緒に過ごす時間を増やせるかもしれない」と、運営会社リクポ(東京・渋谷)の木崎智之社長は話す。

 実際、ユーザーの中には、すでに月10万円分のいいね!を稼ぎ出す人も出ており、「Twitterでフォロワーが数十人しかいない人でも、月数千円を稼いでいる」(木崎氏)というから驚きだ。

 ポップルのサービス開始は19年2月だが、この7月にはダウンロード数が15万件を突破。ユーザーの男女比は4対6で女性が多い。同月末の実績では、写真や動画の投稿数は300万にのぼり、約2700万のいいね!が飛び交った。つまり、これまでゼロ円だったいいね!に対して、2700万円相当の価値が生まれたということだ。

 たまったいいね!は、500以上で現金化が可能。セブン銀行のATM(手数料398円)か、銀行振り込み(同298円)で、手数料を差し引いた分の現金を受け取れる仕組みだ。さらに、「いいね!払い」として、全国のセブンイレブンやサーティーワンアイスクリームで使える無料商品引換券との交換もできる。

 例えば、「セブンプレミアム のむヨーグルト プレーン270g」は店頭の実勢価格で税込み172円のところ、ポップルの商品引換券には260いいね!が必要。アプリ上で引換券を取得するとバーコードが発行され、セブンイレブンなどの店頭で商品と一緒に見せるだけだ。こちらは、厳密には1いいね!=1円というわけではないが、細かな単位で商品と交換できるのはメリットだろう。

アプリ内でほしい商品とその分のいいね!を交換してレジに持っていけば、引き換えてもらえる
アプリ内でほしい商品とその分のいいね!を交換してレジに持っていけば、引き換えてもらえる

 その「いいね!払い」でこの7月末までに商品と交換された回数は5000回で、飲料やアイスがよく交換されたという。ユーザー1人当たりの平均交換額は、約800円に上る。写真をアップするだけでこれだけたまるなら、高校生、大学生だけではなく、年々お小遣いが減っているビジネスパーソンにとっても貴重な“収入源”になり得る。

投稿と連動させた広告で収益源に

 では、1いいね!=1円相当を付与する原資はどこから出ているのか。リクポによると、その1つが広告だ。ポップルでの1日の投稿数は5回まで、いいね!をつけるのは30回までという制限があるが、それらを増やす“ワザ”に広告を組み込んでいる点が巧みだ。

 まず、「広告スタンプ」は企業などの広告主をPRするポップル独自のスタンプ。これを写真に付けて投稿すれば、ユーザーは1投稿につき1~3いいね!が加算される仕組みだ。「企業にとっては、ポップルのタイムラインが広告スタンプでいっぱいになることでブランディングにもなる」(木崎氏)という。

 そして、もう1つが、「ポプ美チャレンジ」と呼ばれる抽選ゲーム。4つのポップルのキャラクターから1つ選び、30秒の広告動画を見ればいいね!や投稿可能数が追加される。

 いずれもユーザーにとってはお金を稼ぐチャンスが増えるので、積極的に広告に関与する傾向がある。実際に、一般的な広告クリック率は数%程度なのに対し、広告スタンプの利用率は約42%、ポプ美チャレンジ後の広告動画については99%ものユーザーが利用しているという。

応募や面接が必要ないワークシェアサービス「タイミー」の広告スタンプ事例
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1日の投稿数を増やせる「ポプ美チャレンジ」
1日の投稿数を増やせる「ポプ美チャレンジ」

 ただし、現状は現金化の資金を広告収入だけではまかなえておらず、今後さまざまな収益源を駆使してマネタイズすることを視野に入れている。木崎氏は、「現状の赤字は想定内。むしろ、ユーザー数や利用率が想定以上にあることが確認できている。今後は黒字化に向けたステップとして、コンバージョンベースの広告メニューを導入したり、プレミアムプランを作ってユーザーに課金したりする仕組みも考えている」と話す。

SNS利用を現実世界で還元

 ポップルを生み出した木崎氏が、一切の課金なくSNS投稿を換金しようと思ったきっかけは、自身の苦い経験だった。学生時代に起業し、その後リクポを含めて4つの会社を立ち上げた木崎氏は、2社目となるファッションショーのプロデュース会社を経営していたとき、友人がクラウドファンディングサイトをスタート。それを手伝ううちにネットの可能性に目覚め、一からプログラミングの勉強を始めたという。

 会社は休眠状態となって収入が途絶え、家賃が払えず住所不定にもなった。友人の家や漫画喫茶を転々としながら過ごすリアルの自分と、Facebook上に残る起業家としての自分とのギャップに苦しんだ。また、「当時はお金がなく、飲食店で写真をSNSにアップすればクーポンがもらえるというサービスすら使えなかった。最初に消費しなければ受けられないサービスだから」と木崎氏。その経験から「SNS上で獲得したいいね!を現実世界に還元できたら面白い」という発想が生まれ、それがポップルにつながった。

 7月からは獲得したいいね!を好きなユーザーにプレゼントして支援できる「いいね!ギフト」を追加した。"お金のいらないクラウドファンディング"を目指しているという。

 1年以内に100万ダウンロード突破を目指すというポップル。他のSNSにならって1日にフォローできる人数に制限をかけ、いいね!狙いで同じ画像を再投稿したり、他ユーザーの画像を借用したりすることを禁じる規約も追加した。「走りだしたばかりなので、今後も試行錯誤を繰り返しながらアップデートしていく」(リクポ)という。利用者増に伴って増えるいいね!に対し、マナー整備やその現金価値をカバーできる収入源を今後複数のアイデアで確保できるかが成功の鍵を握りそうだ。

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