経営共創基盤(IGPI)に勤めていた弁護士の二木康晴氏が起業したLegal Technology(東京・千代田)が、Webベースで法律専門書などをリサーチできるサービス「LEGAL LIBRARY(リーガルライブラリー)」のβ版の提供を開始した。利用者の声を拾って使い勝手を向上させ、2019年秋には本サービスへの移行を目指す。

リーガルライブラリーで書籍や報告書などを検索したイメージ
リーガルライブラリーで書籍や報告書などを検索したイメージ

 リーガルライブラリーは、IDを取得した利用者がWebブラウザー上でキーワードを入力すると、複数の出版社の協力を得てクラウドデータベース上に蓄積された多くの法律専門書の中から、当該キーワードを解説した書籍の表紙が複数表示。そして表紙を選ぶと、キーワードを解説した該当ページが示されるという仕組み。さらに、書籍の中に示された「契約書のひな型」を、文書作成ソフト(マイクロソフト「Word」を想定)で編集可能な状態で表示することもできる。

 このため、弁護士やそのアシスタントであるパラリーガルが、必要な書籍を弁護士会などが運営する法律専門図書館や事務所の書棚から探して、その都度コピーする作業を減らせる。また、契約書のひな型に○○で示された名前や日付を実際に記入すれば、すぐ契約書として利用することもできる。リーガルライブラリーを利用すれば、弁護士の業務をこれまでより効率化できるわけだ。

法律専門書の出版社7社が実験に協力

2019年当初から始めていた実証実験には、有斐閣に続き、中央経済社、日本加除出版、金融財政事情研究会、民事法研究会、弘文堂、現代人文社という主要な法律専門書出版社計7社が協力済み。一部の書籍に限るという格好で協力を検討している法律専門書の出版社もあるという。

β版では、経済産業省の書類などを検索・閲覧できる
β版では、経済産業省の書類などを検索・閲覧できる

 今回のβ版は、出版社が発行する書籍ではなく、経済産業省、厚生労働省、公正取引委員会などの官公庁が発行する報告書やガイドラインといった資料の一部を、Legal Technologyがクラウド上にデータベース化し、横断的に検索・閲覧できるようにして提供する。新たに登録したβ版利用者の反応を見極め、声も拾ってサービスの使い勝手を向上させ、2019年秋の本サービス移行を目指す。

本サービスではチャットやメモ機能も実装へ

 β版には実装されていないが、本サービス開始時には、「チャット機能やメモ機能を実装する計画」(二木氏)だ。書籍や官公庁の資料を検索・閲覧した際には、法律専門家同士で意見を交換したり、書籍を記した著者に問い合わせをしたり、というニーズが発生しがち。また閲覧しながら気付いたことをどこかにメモしたいというニーズも生じやすい。そこでリーガルライブラリーそのものにチャット機能とメモ機能を搭載することで、利用者のこうしたニーズに応えようというのだ。

 利用者の了解を得たうえでのことになるが、将来はLegal Technologyが、チャットで交わされた会話やメモの内容をデータとして蓄積・分析することで、多くの利用者に共通するニーズをあぶり出すことも想定しているという。そうしたニーズに応えられる新しいコンテンツ(書籍)を、著者や出版社と協力して刊行することで、新たな商機も開拓する腹づもりだ。

(写真提供/Legal Technology)

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