2019年8月30日から10月20日まで中国・上海市で「上海デザインウイーク」が開催される。昨年は3日間で5万人以上が来場した。国内外の企業が作品やインスタレーションを競う他、今年は展示品を購入できる会場も用意。デザインを身近に感じさせるだけでなく、富裕層の動向などマーケティングにも使えそうだ。
上海デザインウイークは、デザインの情報発信の場として上海市政府が中核になって推進するイベント。2012年に始まり、今年で8回目を迎える。同イベントのプロモーションのために来日したキュレーターの王巍氏は「上海で開催されるデザイン関連のイベントは多いが、上海市政府が推進している展示会は上海デザインウイークだけ。ユネスコ(国連教育科学文化機関)も主催者に名を連ねるなど、中国や欧米、日本からも参加する国際的な展示会となっている」と話す。
海外のデザイナーの多くは中国市場に注力しており、今回のイベントは作品を発表し、アピールするチャンス。「中国でもデザインに対する関心が高まってきているだけに、両者をつなげるプラットフォームとして活用してもらいたい」と王氏は期待している。
昨年は200社以上が参加し、3万以上の作品が登場した。メイン会場だけでなく、周辺で100以上の関連イベントも開催され、国内外のデザイナーによるフォーラムもあった。デザイン関連の企業に加え、一般のユーザーも参加できる。ネットでの情報発信も多く、期間中は約200万人がアクセスした。
毎年テーマがあり、今回は「デザイン再出発」としている。「サスティナビリティーや人工知能(AI)といった最新の動きを取り込みながら、デザインの力で何ができるか。未来を見据えたデザインとしてグローバルな理念を持った作品を発表できるようにしたい」(王氏)。


来場者と購入のデータをひも付けして管理
メイン会場での開催は8月30日から9月1日までだが、今年からセカンド会場を8月30日から9月30日まで設ける。ここでは展示品を見せるだけでなく、実際に購入できるようにするという。展示と販売というユニークな試みで、ライフスタイルなど生活を彩る分野で、デザイン性に優れた展示品が登場しそう。
セカンド会場では、来場者と購入のデータをひも付けして管理する情報システムを導入。どんな層が何を欲しがっているのかが分かるようになるという。出展する企業は上海市民のマーケティング情報も取得できそうだ。
最近のデザイン関連のイベントでは、来場者が展示品を見て楽しむだけでなく、その場で購入できるようにしたケースも出てきている。デザイナーによる「作品」で終わらせるのではなく、実用品としてデザインをより身近に位置付けるためだろう。一方で、デザインとアートの概念が混在し、価格が高くても「アート」として購入する富裕層もいるという。
地価高騰などの恩恵を受けた超富裕層も上海市に続々と登場しているといわれる。今回のセカンド会場ではどんな展示が出てくるのか。上海市民にデザインの考え方がどこまで浸透しているのか。富裕層の動向つかむうえでも、面白いイベントになりそうだ。
(写真提供/ユネスコ、創意都市(上海)推進事務室)