2019年7月24日、東京・赤坂で開催された「日経クロストレンドFORUM 2019」で、世界のモビリティ事情に詳しい安永修章氏が「空飛ぶクルマ」「電動キックボード」といった最新のモビリティを紹介。併せて、それらを国内に導入する際の課題と対策について語った。

ROOTS Mobility Japan代表の安永氏は、元Uber Japan政府渉外・事業戦略のトップ。現在は、乗り合い交通で世界をリードする米Via(ヴィア)などのアドバイザーを務める
ROOTS Mobility Japan代表の安永氏は、元Uber Japan政府渉外・事業戦略のトップ。現在は、乗り合い交通で世界をリードする米Via(ヴィア)などのアドバイザーを務める

「空飛ぶクルマ」の配車サービスは2023年開始予定

 世界70カ国・地域の450都市以上で自動車配車サービスを展開している米ウーバー・テクノロジーズ(以下、ウーバー)が、2020年代の実現を目指しているのが“空飛ぶクルマ”による配車サービスだ。“空飛ぶクルマ”とは、電動かつ自動で走行する移動手段で、垂直離着陸が可能な乗り物を指す。

「空飛ぶクルマ」の実物はドローンや垂直離着陸機「オスプレイ」に近い
「空飛ぶクルマ」の実物はドローンや垂直離着陸機「オスプレイ」に近い

 モビリティ系企業へのコンサルティング・アドバイスを行う団体「ROOTS Mobility Japan」の代表を務める安永修章氏は「空飛ぶクルマの場合、目的地までを直線で結ぶことができ、電車やバスのような乗り継ぎもなくなるため、航行距離や所要時間を大幅に短縮できる」と話す。

 ウーバーでは、同社が「ウーバー・エア」と呼ぶこの配車サービスを23年にオーストラリアのメルボルンで開始する計画で、20年から同市で試験飛行を始めるという。

第2のシェアサイクル 電動キックボードは世界で急速に普及中

 電車やバスなどの公共交通機関から目的地までの“ラストワンマイル”をつなぐ移動手段として注目されているのが、電動マクロモビリティと呼ばれる乗り物だ。電動アシスト自転車やセグウェイなど、いくつかのタイプがあるが、世界で最も普及しているのが電動キックボードだ。

 「電動キックボードには自転車よりスペースを取らない、スカートやコートを着ていても乗りやすいといったメリットがある上、速度も時速20キロメートルほど出るので、第2のシェアサイクル事業として普及した」と安永氏は説明する。

電動キックボードは道路交通法などの規制があるため日本では見かけないが、世界では直近約2年間で急速に普及した
電動キックボードは道路交通法などの規制があるため日本では見かけないが、世界では直近約2年間で急速に普及した

 とはいえ、ドックレス(置きっ放し)のシェアサイクルには問題点もある。放置された自転車が駅周辺などにあふれかえってしまうのだ。シェアサイクルが普及している中国では、そうした放置自転車を人海戦術で回収・再配置しているが、日本でも同じことができるかは疑問だと安永氏は言う。

乗り捨てられたシェアサイクルが街にあふれる光景は日本では考えにくいが……
乗り捨てられたシェアサイクルが街にあふれる光景は日本では考えにくいが……

規制緩和でライドシェアは2.0の時代へ

 米Via(ヴィア)社が展開しているのが「オンデマンド型シャトルサービス」によるファースト/ラストワンマイルの提供だ。これは、路線や運行時刻が固定化された従来の交通サービスの隙間を埋めるもので、利用者同士の相乗りが前提。そのため、個人での利用が前提のタクシーなどより安価にサービスを提供できる点が強みとなっている。

 また相乗りといっても、ウーバーなどが提供しているドアツードアのサービスとは異なる。Viaのサービスの場合、クルマが移動するのは複数の利用者を最も効率よく輸送できるルート。それぞれの利用者には最適な乗車ポイントを指定し、そこまで移動してもらうのだ。安永氏によれば「イメージとしては、エリア内を“回遊する箱”。タクシーと公共交通機関のいいとこ取りのようなサービス」とのことだ。

オンデマンド型シャトルサービスでは、利用者に乗車ポイントまで移動してもらうことで、ドアツードアのサービスより輸送効率を向上させている
オンデマンド型シャトルサービスでは、利用者に乗車ポイントまで移動してもらうことで、ドアツードアのサービスより輸送効率を向上させている

 こうしたサービスが最も必要とされているのが、高齢化の進んでいる地域だと安永氏は言う。ただし、日本での導入には道路運送法上、問題がある。「運賃が発生すると、いわゆる“白タク”として違法行為になってしまう。とはいえ無償のボランティアではドライバーが確保できない」(安永氏)。

 安永氏は、京都府京丹後市や北海道中頓別町を挙げ、行政が運行主体として介入することで交通空白地域に“足”を提供している事例を紹介した。また、森ビル(東京・港)では、先述のViaのサービスを取り入れ、同社の社員約1300人を対象に、オンデマンド型シャトルサービスの実証実験を行っている。このケースでは会社が費用を負担するため、白タク営業には当たらないという。

 一方、国土交通省は、今後タクシーの事前確定運賃の導入に向けて道路運送法を改正するほか、2020年の1~3月をめどにタクシーの相乗りを可能にする予定だ。「ラストワンマイルについては日本独自の進化が続いている」と安永氏は締めくくった。

日本独自のモビリティ革命に向けて、官民一体となった取り組みが進められている
日本独自のモビリティ革命に向けて、官民一体となった取り組みが進められている

(写真/堀井塚高、新関雅士)