資生堂がオープンイノベーションに本腰を入れ始めた。狙うのは「本気の世界展開」だ。同社は2019年7月1日、オープンイノベーションプログラム「fibona(フィボナ)」の開始を発表。資生堂との連携機会を探るベンチャーを募集し、新商品やサービス開発につながるイノベーションの種を見つけ出したい考え。

資生堂は新たなイノベーションの種を見つけ出すために、オープンイノベーションプログラム「fibona(フィボナ)」を始めた
資生堂は新たなイノベーションの種を見つけ出すために、オープンイノベーションプログラム「fibona(フィボナ)」を始めた

 「化粧品からビューティーへとフィールドを拡大するときに必要となる技術、アセット(資産)を必ずしも自社で持っているわけではない。また、マーケットの動きが非常に速いことから、自分たちの力だけでは(すべてのニーズに応えることは)難しいだろうという思いが強い」。資生堂の荒木秀文R&D戦略部長はfibona開始の理由をこう説明する。

fibonaの狙いを説明する資生堂の荒木秀文R&D戦略部長(右下)
fibonaの狙いを説明する資生堂の荒木秀文R&D戦略部長(右下)

 fibonaでは、従来の事業セグメントに限らず、広くBeauty(美容)やWellness(健康)分野に貢献できるアイデアを募集する。評価項目は、「アイデアの新規性」「ビューティーとの親和性」「実現性の高さ」「競合優位性」の4つ。応募期間は19年7月1日~26日。応募期間内に集まったエントリー内容を基に書類選考を経て、応募者に結果が通知される。選考通過者は、8月29日に資生堂社内にて行われる「fibona Pitch Stage」でプレゼンテーションできる資格を得られる。

fibonaでは応募に3つの条件を用意

 応募条件は3つ。
(1)自社の製品・サービスまたはプロトタイプを有すること
(2)資生堂と共同で製品・サービスなどの開発を行う可能性に同意していること
(3)19年8月29日に実施する資生堂社内におけるピッチ会に、自社の経営陣が参加しプレゼンテーションできること

 資生堂は、「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(ビューティーイノベーションでよりよい世界を)」の企業ミッションの下、「日本の化粧品会社」から、グローバルなビューティーカンパニーへと変わろうとしている。fibonaでは、それを実現するためのイノベーションの種を見つけ出すことを目指す。

 fibona参加企業のうち、優秀なアイデアには共同研究についての提案や、人的ネットワークの提供、ビジネス化に向けたPoC(概念実証)、事業・業務提携、出資の提案を検討する。

 こうしたオープンイノベーションを展開するために、専門施設も設置した。fibonaの実施に先駆け、19年4月にグローバルイノベーションセンター「S/PARK(エス パーク)」を神奈川・みなとみらいに開設。5年の構想期間を経て実現したというS/PARKは、企業だけでなく、一般ユーザーにも開放された美の複合体験施設だ。

 健康的な食事を提供するカフェや、同社の研究員が直接顧客と対話し、併設された製造所でパーソナライズ化粧品を作り販売するスペースを設ける。S/PARKを起点に、ビューティー領域における新たなイノベーションを起こす取り組みとして、fibonaを始めた。

S/PARK内に設置された特大LEDディスプレー
S/PARK内に設置された特大LEDディスプレー

 資生堂は、fibonaを通じて出合ったスタートアップ企業との長期的な付き合いも視野に入れるという。目指すは、自社のグローバルネットワークという強みを生かした「本気の世界展開」だ。繰り返し強調された、「ビューティーイノベーション」と「グローバル」。この2大キーワードを、資生堂がいかにスピード感を持って実現できるかどうか、美容業界に限らず各方面から注目を集めそうだ。

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