100円ショップ大手の大創産業が、業界初の本格コスメブランドを立ち上げた。1品100円という格安価格らしからぬデザイン、クオリティー、そして約100アイテムの圧倒的な商品展開で、若い女性がこぞって購入している。その常識破りの戦略とは?

ダイソーが展開する100均コスメブランド「URGLAM(ユーアーグラム)」
ダイソーが展開する100均コスメブランド「URGLAM(ユーアーグラム)」

 2019年4月末、「ダイソー」の全国各地の店舗で大異変が起きた。店頭で一斉に売り出した新コスメシリーズに若い女性客が殺到し、爆発的な売れ行きを記録したのだ。

 そのブランド名は「URGLAM(ユーアーグラム)」。全98アイテムの総売上数は、発売後僅か2カ月で400万個に上り、特に売れ筋となった「9色アイシャドウパレット」は品切れでしばらく店頭から姿を消すほどになった。以前からダイソーをはじめ他の100円ショップでも化粧品は人気の定番商品だが、これほどの売れ行きは異例だ。

 ただし、この大ヒットは偶然起こったわけではない。その裏には、ダイソーによる従来の100円コスメの概念を覆す常識破りの戦略があった。

100円なのに「本格」、ブランド推し

 ここで時計の針をおよそ1年前、18年春に戻そう。当時、ダイソーでは化粧品の売り上げをどのように伸ばすかが課題になっていた。「若い女性の間でプチプラ(低価格)のコスメが人気になっており、市場には追い風が吹いている。しかし、ダイソーのコスメは際立った特徴、要はパンチがないことが悩みの種だった」と、大創産業の化粧品バイヤー、土居早織氏は話す。

 そこで思い立ったのが、100円コスメでありながら“本格的なブランド”を立ち上げる戦略だ。従来の100円コスメは、ブランドは冠しているものの、それを前面に押し出す売り方はしてこなかった。「ダイソーのメークブラシ」「セリアのマスカラ」というように、認知度の高い社名が前面に出て、ブランド名はいわば脇役。あってないようなものだった。

 ダイソーはそこにチャンスを見いだした。つまり、100円ショップで本格的なコスメブランドを立ち上げ、競合他社と圧倒的な差別化を図る作戦だ。実は、ダイソーでは他の商品群でブランド化を図り、ヒットを生んだ成功体験がすでにある。それが17年に立ち上げたキッチン雑貨ブランド「allure(アリュール)」だ。allureブランドの下、メラミン食器、鍋敷き、カップなどを展開。「安いのにかわいすぎる」などと大人気を博し、今も売れ筋となっている。

URGLAMのブランドサイト
URGLAMのブランドサイト

 そのコスメ版がURGLAMだ。まずは、これまでの100円コスメであいまいだったターゲットやコンセプトをはっきりさせることから始めた。「ターゲットの年齢は10~20代の女性、コンセプトは『セクシー&ヘルシー』。いわば、米国の西海岸で毎日体を鍛え、食生活にも気を配るトレンド感のある女性が使うようなコスメ……など。今どきの若い女性が求める理想の姿を言語化して、そのコンセプトに合ったロゴや商品、パッケージを企画、開発していった」(土居氏)という。

 その結果、パッケージは黒で統一され、力強く、大人っぽいイメージのデザインに。かわいさを追求して、ともすれば“子供っぽい”既存の100円コスメとは、真逆のブランド像を打ち出したのだ。

 加えてこだわったのが、商品の種類を豊富にそろえること。それらを集積させて売り場で大々的に展開することだ。アイテムは、アイブローペンシルから、マスカラ、ブラシ、アイシャドー、リップスティック、チーク、パウダー、ネイルカラーまで、総合的に取りそろえ、その数は実に98種類に及ぶ。つまり、顔のメークに関連する化粧品は、URGLAMのブランド1つで、これでもかというほどそろえた。

 売り場では、その充実のラインアップで什器(じゅうき)を丸々使って展開し、URGLAMのPOPを使って「ブランド推し」で販売。来店した女性客を売り場に引き付けるとともに、1度に複数のアイテムをまとめ買いしやすくした。この目立つ売り場と、ワンストップですべてがそろう網羅性に若い女性が反応し、大ヒット商品の称号を手にしたのだ。

ダイソー店舗では什器2台を使ってURGLAMをアピール
ダイソー店舗では什器2台を使ってURGLAMをアピール

ユーチューバーが「美容部員」代わりに

売り切れ続出の「9色アイシャドウパレット」
売り切れ続出の「9色アイシャドウパレット」

 そして、ヒットの立役者として忘れてはならないのが、外部のインフルエンサーの存在だ。例えば、発売から1カ月で9万個を売り上げた「9色アイシャドウパレット」。1個で9色もそろって100円(税別)のため、確かに圧倒的なお得感はある。だが、逆にメーク初心者の若い女性ほど、「使いこなせないかも」「9色も必要ないのでは?」と、躊躇(ちゅうちょ)するだろう。


URGLAMのInstagram公式アカウント(フォロワー数1万7000人)
URGLAMのInstagram公式アカウント(フォロワー数1万7000人)

 そうした中、強力な“助っ人”となったのが、美容系インフルエンサーだ。URGLAM発売と同時に購入した彼女たちが、YouTubeやInstagramを通じて、こぞって活用法を解説し始めた。「シンプルなメークではこの色、かっこいい系メークではこの色、気分が上がっている時はこの色……など、美容系インフルエンサーの解説は分かりやすくて具体的。参考にすれば、すべての色を使いこなすことができ、『それなら買ってみよう』と思う人が増えた」(土居氏)という。

 この現象は、ダイソーにとって「想定外」(土居氏)のこと。しかし、常に発信する話題を探している美容系インフルエンサーにとっては、洗練されたプチプラコスメとして登場したURGLAMは格好のネタだった。これに続き、タレントの辻希美がYouTubeで配信する登録者25万人の「辻ちゃんネル」で、アイドルグループSKE48所属の斉藤真木子がInstagramでURGLAMを紹介するなど、著名人からの拡散もヒットを後押しした。

 言ってみれば、大手化粧品メーカーが百貨店の売り場などに配置する美容部員の代わりを美容系インフルエンサーが担っている構図。美容部員など置けるはずもない100円ショップにとって、勝手に使い方を伝授してくれるインフルエンサー全盛の今は、まさに願ってもない状況といえる。

 ダイソーでは、今回のヒットを受けて第2弾として秋冬カラーを8月に展開する予定。URGLAMの成功を見て、競合他社の間でも「100円コスメを本格ブランド化」する動きが、今後顕著になるかもしれない。

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