2019年7月24・25日の2日間にわたって、東京・赤坂インターシティコンファレンスで開催されている「日経クロストレンドFORUM 2019」。初日の基調講演では、ゴールドウインの渡辺貴生副社長が登壇した。テーマは「ザ・ノース・フェイスの挑戦」だ。

初日の基調講演には、“ジャパン ノース・フェイスを作った男”、ゴールドウインの渡辺貴生副社長が登壇
初日の基調講演には、“ジャパン ノース・フェイスを作った男”、ゴールドウインの渡辺貴生副社長が登壇

アスリートの思想を取り入れ、シンプルな素材で最大限の機能を

 一流のアスリートからファッションコンシャスな若者まで、幅広い層に熱烈に支持されているアウトドアウエア・ギアブランド「ザ・ノース・フェイス」。同ブランドを擁するスポーツアパレルメーカー、ゴールドウインの渡辺氏はまず、ザ・ノース・フェイスの設立に深く関与した3人の人物を紹介した。

 1人は米カリフォルニア州のサンフランシスコでザ・ノース・フェイスの礎を築いたダグラス・トンプキンス。2人目はトンプキンスから店を譲り受け、同ブランドを発展させたケネス・ハップ・クロップ。3人目は同ブランドに“デザインサイエンス”という思想を持ち込んだリチャード・バックミンスター・フラーだ。

 フラーの残した「最も少ない物質、時間、エネルギーで最大の効果を作り出していく」というデザイン思想は、創業間もない1968年以来、ザ・ノース・フェイスが掲げてきた下記の3つの哲学に受け継がれていると渡辺氏は言う。

・Mission(ミッション)
自然環境保護に積極的に関わり、持続可能な地球環境を創造する

・Vision(ビジョン)
アウトドア業界の中で、常に最高の製品を創り続ける

・Value(バリュー)
自然の素晴らしさを自らが楽しみ、より多くの人を楽しませる

 「とはいえ、それだけでは先端的な製品は創れない」と渡辺氏。「ザ・ノース・フェイスでは、“Athlete Driven(アスリート・ドリブン)”という考えの下、アスリートをサポートする一方で彼らの洞察力、向上心、覚悟を学び、それをものづくりに生かしてきた」(渡辺氏)

「アスリートによる機能や仕様のチェック無しでの製品発売を禁止している」と渡辺氏は話した
「アスリートによる機能や仕様のチェック無しでの製品発売を禁止している」と渡辺氏は話した

アスリートからコンシューマーへ、アウトドアからアスレチックへ

 もちろん、アスリートだけがザ・ノース・フェイスのターゲットではない。同ブランドでは“Core & More(コア・アンド・モア)”の戦略に基づき、アスリートの思想、発想を一般のマーケットにまで広げていくことを目指している。コムデギャルソンやHYKE(ハイク)といったファッションブランドとの協業もその一環だ。

 また小売店戦略としては、登山に特化した高機能製品をそろえる「THE NORTH FACE MOUNTAIN(ザ・ノース・フェイス・マウンテン)」を“コア”に、計5店舗の“モア”を東京・原宿エリアにオープンしている。「THE NORTH FACE STANDARD(ザ・ノース・フェイス・スタンダード)」はファッションに敏感な若者向け、「THE NORTH FACE MARCH(ザ・ノース・フェイス・マーチ)」は女性向けの店舗だ。また「THE NORTH FACE ALTER(ザ・ノース・フェイス・オルター)」は地球環境への負荷を低減するライフスタイルを提案するコンセプトショップとなっている。

 そんなザ・ノース・フェイスが近年になって力を入れ始めたのがキャンプマーケットだ。渡辺氏は「これまでキャンプには力を入れてこなかったが、この数年の日本のマーケットの状態を見ると、ザ・ノース・フェイスとしても何らかの提案をするべきと判断した。2020年には多くのキャンプ関連製品を発表できると思う」と述べた。

ライフスタイルアイテムをメインにしたTHE NORTH FACE ALTERは4月27日にオープンしたばかり
ライフスタイルアイテムをメインにしたTHE NORTH FACE ALTERは4月27日にオープンしたばかり

環境に優しい構造たんぱく質素材をスパイバーと共同開発

 アウトドア用品のブランドとして“コイグジスタンス・ウィズ・ネイチャー”をうたうザ・ノース・フェイスは、持続可能な地球環境の構築にも意欲的に取り組んでいる。その代表が、人工合成クモ糸繊維の開発で知られるバイオベンチャー、スパイバー(山形県鶴岡市)と共同開発している構造タンパク質素材だ。

 これは微生物を使った発酵プロセスによってタンパク質を生成し、スパイバー独自の加工技術により繊維化したもの。渡辺氏は「たんぱく質を使って素材を開発できたら、世の中に新しい考え方を提供できる」と語る。

 「いろいろなタイプの構造タンパク質素材を作れるようになれば、毛皮の代替になるほか、環境汚染の要因とされるマイクロプラスチックを減らすことも可能になる」と渡辺氏。19年中には、最新のたんぱく質素材を採用したアウターウエア「MOON PARKA(ムーンパーカ)」も発売するという。

 「地球環境を守れるのは人類だけ。常に新しいチャレンジを続けながら地球環境、人々の生活と密接に関わって事業を進めていきたい」と渡辺氏は締めくくった。
(関連記事「ザ・ノース・フェイス 強さの秘密」)

(写真/新関雅士)

■修正履歴
「コムサデモード」を「コムデギャルソン」に修正しました。 [2019/07/25 14:18]