AIがTwitter上のつぶやきから顧客の性格を分析し、最適な香りを調合するサブスクサービスが始まった。改元で多く投稿された「令和」や、「バイトテロ」「炎上」といった社会問題に絡む言葉からも独自の香りを導き出せるという。パーソナライズ化が進む香りの世界に、革命を起こせるだろうか。

「コードミー ワンは国産精油だけでなく、ボトル、パッケージ、すべてメードインジャパン。早ければ2020年から東南アジアや米国への進出を考えている」と、コードミーの太田賢司CEO
「コードミー ワンは国産精油だけでなく、ボトル、パッケージ、すべてメードインジャパン。早ければ2020年から東南アジアや米国への進出を考えている」と、コードミーの太田賢司CEO

「バイトテロ」は刺激的な薬のような香りだった

 「またもやバイトテロ」「ダメでしょ」「炎上案件」「制裁すべきだ」――世間を騒がす「バイトテロ」に対して実際に発せられたつぶやきだ。これを“香り”に置き換えたらどうなるか。そんなユニークなプロモーションアロマを作成したのは、アロマ香料を製造販売するコードミー(横浜市)。国内最大手の香料会社でエバリュエーター(評価者)としてフレグランスの開発に関わってきた同社最高経営責任者(CEO)の太田賢司氏が、2017年に創業したベンチャー企業だ。

 同社が2019年6月末に正式ローンチした「CODE Meee ONE(コードミー ワン)」は、3000パターン以上から最適なアロマを選定し、毎月自宅に届ける“香り”のサブスクリプションサービス。最大の特徴は、個々のユーザーに個別化されたアロマの選定方法だ。

 まずユーザーは年齢と性別に加え、「最も意識するストレス課題」「理想のイメージ」「好きな香りの系統」など5つの質問に答える。これだけも適切なアロマは作れるが、コードミー ワンがユニークなのはここから先だ。先の質問の回答に加え、ユーザーがTwitter上で発信したつぶやきも収集。そのデータをAIが知的好奇心、誠実性、外向性、協調性、感情起伏といった切り口で解析し、ユーザー自身も気がつかなかったような性格や心の状態を把握して最適な香りを導き出す。

 例えば前出「バイトテロ」に対して発せられた実際のツイートを、ハッシュタグ「#バイトテロ」からAIが分析すると、「(バイトテロに対する)知的好奇心の大きさ」から「覚醒」というキーワードが、また「一貫した負の感情の投稿データ」から「怒りと不安」というキーワードが導出されたという。

 そこで花の香りの中でも覚醒要素の強い「イランイラン」や「ジャスミン」に、強い清涼感を特徴とする「北海道ペパーミント」をプラス。覚醒的要素の強いフローラルと、刺激的なハーブで、「入り乱れる強い感情」をアロマで表現した。実際に嗅がせてもらったが、目が覚めるほど刺激的な薬のような香りがした。

実は男性ビジネスパーソンがコアターゲット

 一方、SNSで起こりがちな「炎上」を抑える「炎上緩和の香り」もある。今回コードミー ワンで提供するのは、こうした“解決系”のアロマとなる。

 前述の「#バイトテロ」を例に取ると、投稿者の負の感情を理想的な状態に向かわせるためには、「覚醒的要素」とは逆の「沈静的要素」が必要になる。そこで森林浴を想起させ、ストレス緩和が期待される「アカエゾマツ」の香りと、リラックス効果が期待される「富良野ラベンダー」など、相性のいい3種の香りを組み合わせ、心をクールダウンさせることをテーマにした「炎上緩和の香り」を生み出した。

2019年6月27日にはメディア体験会を実施。「炎上緩和」をチャートで視覚化した。ヒノキやラベンダーなどを使って出来上がった香りは、リラックス効果がある
2019年6月27日にはメディア体験会を実施。「炎上緩和」をチャートで視覚化した。ヒノキやラベンダーなどを使って出来上がった香りは、リラックス効果がある

 つぶやきはいわばその人の心の鏡。AIが心の状態を分析することで、その人に必要な香りを、より高い精度で提案可能になる。

 「アロマというと女性が好むイメージがあるが、コードミー ワンは20~30代の男性ビジネスパーソンをコアターゲットに設定した。解決したい課題は、現代社会のストレス。酒や煙草などによるストレス解消ではなく、アロマで健康的に課題に向き合ってほしい。個人に最適な香りを提供することで明日への活力を提供していく」

 太田CEOがこう意気込みを語るように、コードミー ワンでは防臭、消臭など、周囲の人へのエチケットというより、「自分のメンタルを整えるためのヘルスケア」(同)を狙っている。月額料金は1800円(税込み)。毎月届くそのユーザーのためだけに作られたアロマは、シャツの襟やマスク、ハンカチに噴き付けるなどして、自分のために楽しむのが基本だ。

 自分のためだけにカスタマイズされた香りを、自身のブランディングに役立てることも可能だという。人の嗅覚は五感の中でも脳の記憶や感情が影響を受けやすい感覚ともいわれる。

 「企業向けの展開では職場の環境改善などに加え、店頭の香りから社員の名刺の香りまでオリジナルの心地よい香りで統一し、ブランディングに役立てる企業も増えている。コードミー ワンには、その個人バージョンとしての役割が考えられる」(太田CEO)

「#令和」から生まれた「令和の香り」は、「燃えたぎるエネルギーやスパークリング感」のある四万十ジンジャーを使用したエネルギッシュな香り
「#令和」から生まれた「令和の香り」は、「燃えたぎるエネルギーやスパークリング感」のある四万十ジンジャーを使用したエネルギッシュな香り

 コードミー ワンのプレ体験にも役立つ、「#令和」のつぶやきを集約してAIが解析した「令和の香り」(2500円・税込み)も、19年末までの期間限定で発売される。

 「『#令和』の投稿解析では、報われない時代に終わりを告げ、自分らしく成長したいという意欲が強く表れていた。自己表現を助け、前向きになれるような、個性的なスパイスを感じる香りに仕上がった」と太田CEO。令和の幕開けは、嗅覚マーケティング時代の始まりにもなりそうだ。

(写真/福光 恵)