AIやIoTの発展により事業課題が複雑化している。対応策の1つとして期待されるのが「デザイン思考」だ。2018年、政府は国際競争力の強化のために「『デザイン経営』宣言」を発表した。その後押しを受け、サービスや商品の開発現場では「ユーザー視点」で考えるデザイン思考の実績が次々と生まれている。
しかしデザイン思考やデザイン経営は定義が曖昧で歴史も浅いため、デザイナーやクリエイターに受け入れられても、費用対効果に敏感な経営者やマーケターにはまだ浸透していないのが事実。そこで日経クロストレンドならではの視点で、デザイン経営の成功事例やデザイン思考の導入法が分かる記事7本を紹介する。
まずは「デザイン思考」を知る

優秀なデザイナーやクリエイターの思考法を学び、新たな発想につなげる「デザイン思考」が注目されている。NTTコミュニケーションズ、三井化学、東京女子大学などの事例を織り交ぜながら、「デザイン思考」はなぜ必要で、どうすれば身につけられるのか、そして「デザイン経営」とはどんな経営スタイルで、具体的にどう取り組めばよいのかなど、実践的な情報について解説。

近年は大手IT企業やコンサルティング企業で働くデザイナーが急増し、イノベーションの現場でデザインが力を発揮する場面が増えている。一方で、デザイン思考は問題解決のアプローチ手法にすぎず、根本的なイノベーションにはつながらない。デザインマネジメント研究の権威、ミラノ工科大学教授のロベルト・ベルガンティ氏が、デザインの現場や教育機関の最前線から得た情報を基に、デザインとビジネスの関係をひもとく。
デザイン思考を導入した企業事例

ソニーが18年に発売した映画撮影用デジタルカメラの開発現場では、従来のエンジニアに加えてデザイナーも同席し、操作性の高い製品を生み出して注目を浴びた。事業領域の変化を自覚し、より良いユーザー体験の創出に力を入れる同社は、ミラノデザインウィークへの出展にも精力的に取り組む。新時代のソニー流イノベーションについてリポートする。

デザイン思考を課題解決に向けた手法と考えて、13年にヤマハが立ち上げたデザイン思考推進プロジェクトは、15年に開始したビジネスプランの社内公募制度に吸収される形で解消した。しかしその後、このプロジェクトで育った人材が、デザイン思考的手法を使って、いくつかの事業化案件を生み出した。デザイン思考の可能性と課題を学ぶ格好の教材がここにある。

資生堂が「デザイン経営」で成功 nendo佐藤オオキ氏との仕掛け
デザイン経営が企業ブランドのイノベーションに結び付いたのが、資生堂のフラッグシップストア「SHISEIDO THE STORE」のリニューアル事業。デザインによる課題解決のためnendoの佐藤オオキ氏と協業し、同社の象徴である花椿(つばき)のシルエットをかたどった手すりを館内に取り入れるなど、階段を上る行為を楽しくするようなデザインを細部にわたって作り込んだ。かつてない来店体験に挑戦する資生堂の“今”が見える。
「『デザイン経営』宣言」の中身と影響

経産省が「デザイン経営」宣言! 企業の競争力強化の切り札に?
2018年5月、経済産業省・特許庁が発表した「『デザイン経営』宣言」は、企業のマーケティング担当者だけでなく、さまざまな分野から注目を浴びた。同年6月に行われた「『デザイン経営』宣言カンファレンス」には、100人以上のデザイナーやクリエイターが集まった。同宣言や宣言カンファレンスの内容を紹介しながら、「デザイン経営」とは何か、どう推進すればいいのかについて検証する。

経済産業省は「『デザイン経営』宣言」の政策の1つとして「高度デザイン人材の育成」を提言。その研究会はデザイン経営を主導する高度デザイン人材の方向性として、サービスデザイン、デザインストラテジー、ビジネスデザイン、デザインマネジメント、ビジョンデザインの5つを発表した。それぞれに求められるスキルや能力は何か。自社のマーケティングの総合力を高めたい担当者は必読。