北海道テレビ放送が制作したドラマ『チャンネルはそのまま!』。北海道の弱小テレビ局を舞台にした“ローカル”なこの作品を、同社はNetflixで全世界配信している。インバウンド狙いで海外テレビ局との共同制作に積極的に取り組む局もある。民放ローカル局の生き残り戦略と海外展開の現状を取材した。

北海道テレビ放送(HTB)がドラマ化した『チャンネルはそのまま!』。2019年3月にNetflixで独占先行配信後、HTBで5夜連続放送された (C) 佐々木倫子・小学館/HTB
北海道テレビ放送(HTB)がドラマ化した『チャンネルはそのまま!』。2019年3月にNetflixで独占先行配信後、HTBで5夜連続放送された (C) 佐々木倫子・小学館/HTB

 『チャンネルはそのまま!』は、北海道の弱小テレビ局を舞台にした佐々木倫子の同名漫画原作を北海道テレビ放送(HTB)がドラマ化したもの。描かれているのは、疲弊する地方経済のあおりを受けて経営に苦しみ、その一方で働き方改革に翻弄されるローカルテレビ局の現実だ。

 だが、これはドラマだけの話ではない。今、全国の民放ローカルテレビ局は受難の時代を迎えている。そんな中、生き残り策として、にわかに浮上しているのが、海外へのコンテンツ展開だ。

テレビ局だけじゃない、Netflixも新たな取引先

 冒頭で『チャンネルはそのまま!』を挙げたのにも、実は訳がある。この作品自体、HTBをはじめとした地上波だけでなく、Netflixでも全世界配信されているからだ。

 これまでも民放ローカルテレビ局の番組が海外に販売されることはあったが、その多くはアジアが中心。190カ国にネットワークを持つNetflixのように、広範囲にわたり、視聴されるチャンスを得た番組はアニメを除くと皆無だった。今はローカル局制作の番組だろうが、規模の大小にかかわらず、世界の視聴者に番組を届けることができる機会が広がっている。

 では、日本のテレビ番組はどのくらい海外に輸出されているのか。総務省が日本の放送コンテンツの輸出額について取りまとめた最新の調査結果によると、2017年度の放送コンテンツ海外輸出額は前年度を上回る444.5億円を計上した。

 そのうち、「インターネット配信権」は124.2億円に上る。このインターネット配信権販売の伸びが日本のテレビ番組の海外輸出額の増加を後押ししていることは間違いない。Netflix、アマゾン、YouTubeが提供する映像サービスが世界を席巻しているうえ、ディズニー、Apple TVもサブスクリプションサービスの参入を控えている。ますます勢力を強めるインターネット映像配信サービスが、ローカルを含むテレビ局の新たな取引先となっている。

 だが、だからといって、地域密着型の放送事業を50年以上にわたって運営してきた民放ローカルテレビ局が、一斉に世界市場に乗り出しているとは言い難い。実際は、映画やイベントなど「放送外事業」といわれるカテゴリーの一部、またはその延長線上で海外展開を行っている。

 例えば、ドキュメンタリー映画としては異例の観客動員数25万人を記録した『人生フルーツ』は、東海テレビがローカル放送した後に映画公開したもの。これまで東海テレビは20作以上のドキュメンタリー番組を映画公開し、それら作品を海外でも展開してきた。このように、自主制作番組に力を入れるローカルテレビ局では、企画から制作まで手掛けたドキュメンタリーやドラマ、バラエティー、アニメ番組を局の資産とし、“放送外”で利益を生み出すための一手法として海外展開の道を探っている。

 「地域の番組が世界にも広がる」というと、夢があるように聞こえがちだが、これまでのように放送だけで制作費を回収できない現状が、海外市場にも目を向けさせているということなのだ。

 似た構造はディスク(BD/DVD)販売にもある。『乃木坂46 橋本奈々未の恋する文学』は、シリーズ合計1万6000枚以上、売上総額1億3400万円を超える実績を作った。北海道文化放送の後藤一也プロデューサーは、企画の理由に「地上波の視聴率低下が大きい」と言い切った。

『乃木坂46 橋本奈々未の恋する文学』。16年2月に「冬の旅」、10月に「夏の旅」を放送した(写真提供/UHB)
『乃木坂46 橋本奈々未の恋する文学』。16年2月に「冬の旅」、10月に「夏の旅」を放送した(写真提供/UHB)

 さらに、「制作費が削減される中で、今まで通りのやり方ではコンテンツのクオリティーはどんどん落ちてしまう。“ローカルメディアとしての役割を果たせなくなる”という危機感は募るばかりだ。だから、国内外で新たな資金調達先を模索し、放送だけでなく、配信、ディスク販売、グッズ販売、海外、イベントなど流通先を広げて、(制作費を)回収できるモデルを進めている。企画開発から資金調達、制作、放送、流通、回収という一連の流れの中で、プロデューサー自らが責任を持って予算管理すべき時代に入っているのではないか」と後藤氏は語る。