2019年7月21日に投開票された第25回参院選のSNS選挙運動で、Twitter空間を“制圧”したのは、れいわ新選組と同党代表の山本太郎氏だった。フォロワーが積極的な支援者として街頭演説日程や演説動画のシェアに協力し、選挙戦終盤に向かって盛り上がりの山をつくった。
※「安倍晋三」フルネームをツイートするケースは少ないため、「安倍」ツイート数を参考値として掲載
主要8政党とその党首のTwitterアカウントについて、選挙戦中盤の2019年7月10日から最終日の20日まで10日間で増えたフォロワー数を調べたところ、純増数のトップは山本太郎氏で2万4961人増。増加率で見ると、れいわ新選組が4万4659人から5万7759人へ29.3%増でトップだった。
選挙戦序盤では、国民民主党党首の玉木雄一郎氏が7月7日、東京選挙区で出馬した水野素子氏とともにガンダムのコスプレをしたことがWebニュースで話題になったが、同党アカウントのフォロワーは最終日も約1万1000人台と伸び悩んだ。結成から1年以上経過している公党としては寂しい数字だ。今回、野党の中で一人負けに終わった同党の党勢が、Twitterにも表れている。
2017年10月の衆院選で小池百合子都知事率いる希望の党(当時)に“排除”され結党に至った立憲民主党は、当時、アカウント新規開設3日後にフォロワーが12万人を超え、自民公式を上回ったことが話題になった。「#枝野立て」のハッシュタグが拡散し、判官びいきも手伝って野党支持者を取り込んだ。
だが立憲Twitterの勢いは、先の衆院選がピークで、今回の参院選では伸びを欠いた。最終日のフォロワーは17万8727人で、まだ自民アカウントを1万人ほど上回っているものの、10日間の純増数は1379人にとどまり、自民の純増数を下回った。
前回衆院選の立憲Twitterの勢いを今回の参院選で再現したのが、れいわ新選組および山本氏だった。れいわは政党要件を満たさない諸派だったため、支持政党調査に名前が載らず、テレビ討論などでも声がかかりにくかった。これを逆手にとって「テレビには映らない #放送禁止物体 #山本太郎 #れいわ新選組」と自称し、1ページにまとめた政党紹介ページに誘導して地道に認知を広げた。
また、街頭演説のお知らせを「#れいわ祭」のハッシュタグ付きで投稿し、それがシェアされることで、会場は日を追うごとに聴衆が増えていった。演説の様子をツイキャスでリアルタイム中継。後日文字起こし全文を動画とともに党公式サイトで公開し、Twitterで案内した。
こうして山本太郎氏の名前は注目ワードとなり、選挙戦最終日に向かってツイート数が右肩上がりに増えていった。リアルの街頭演説とTwitterをシームレスにつなぎ、フォロワーの力を借りながら党勢を拡大していく一連のれいわの取り組みは、ファンベースのマーケティングを目指す企業にとっても学ぶところがあるだろう。
各政党や党首のアカウントをフォローし、政治関心層からシェアされた投票を呼びかける動画や公約比較一覧などを閲覧したユーザーには、選挙戦は大いに盛り上がったように感じられたかもしれない。だが投票率は50%を下回った。
参院選どころではなかった?
世間の関心は参院選一色ではないことを物語っていたのが、安倍晋三首相の7月18日付のツイートだ。当日に起きた京都アニメーションのスタジオ放火殺人事件について、お悔やみとお見舞いの言葉をつづったツイートは、リツイート9万件超、いいね27万2000件の反響があった。政党・党首アカウントの選挙期間中のツイートに対する反響としては群を抜く数字だ。安倍首相の選挙期間中のツイート32件に集まったリツイートおよびいいねの総計約72万件のうち、このツイート1件だけで半数を占める。
その後も九州地方の豪雨、吉本興業の所属タレントの会見と、参院選の話題をかき消すような出来事が続いた。ちなみにダウンタウンの松本人志氏が、事務所とタレントの仲裁に乗り出すことを示唆した7月20日のツイートは、リツイートといいね数が計200万件を超えている。
もちろん、これらの投稿をリツイート、またはいいねをしたうえで投票に行った人は多数いるだろう。それでも、反響数が世間の関心事を示すと捉えれば、投票日直前に相次いだ事件やトラブルが、低投票率を招く要因になったのではないか。そんな傾向がTwitterを介してうかがえた。