ソフトバンクやトヨタ自動車が出資するモネ・テクノロジーズは、複数の企業で社用車を共同利用するサービスの実証実験を2019年8月1日から都内で始める。移動時間を短縮、有効活用できるようにすることで、働き方改革につなげる狙い。その中身は?

 モネ・テクノロジーズの新サービスの名称は、「MONET Biz(モネビズ)」。同社のオンデマンド配車システムを搭載した8~10人乗りの車両を、複数の企業で共同利用する仕組みだ。実証実験のスタート当初は、参加企業の事業所の他、東京駅などの利用頻度が高いスポットを選び、50~100カ所のバーチャル停留所を設定する予定。参加企業の従業員が、スマートフォンの専用アプリから乗降場所と日時を指定すると、同じ方向に行く人同士がマッチングされ、社用車に相乗りすることが可能になる。

 同様の取り組みとしては、森ビルと配車システムを提供する米Via(ヴィア)が、森ビル社員を対象にした相乗りサービスの実証実験を18年8月から行っていた。これに対して今回のモネビズは、複数の企業をグループ化する点がユニークで、社用車を個別企業が運用するよりコスト負担を減らせる可能性がある。また、参加企業が明確になることで、全く知らぬ人同士がマッチングされる相乗りサービスより利用のハードルは低いだろう。8月1日から都内一部エリア(港区、千代田区、中央区など)で行う実証実験では5~10台で運用を始め、まずはソフトバンクとトヨタが参加すると見られる。

 モネビズで想定されているのは、クルマでの移動時間が10~15分程度の近距離エリアでの利用。運行時間も平日の9時から18時を予定する。例えば、ソフトバンクの本社がある東京・汐留から東京駅に行く場合、従来なら徒歩で12分かけて新橋駅に行き、そこから鉄道に8分乗って計20分必要だった。これが、ドア・トゥ・ドアで結ぶモネビズを活用すると、東京駅までの移動時間が最短ルートで10分程度に半減するイメージだ。「外出が多い営業職などは、日中の業務時間に占める移動時間が多い。これを少しずつでも短縮していけば業務時間の拡大につながり、残業時間を減らせる」(モネ・テクノロジーズ事業推進部の田中清生担当部長)という。

 もう1つ、働き方改革につながる取り組みとしては、移動中に車内で仕事ができるよう社用車にWi-Fiを完備し、シートには膝上テーブルを設置する計画。隙間時間に社内のeラーニングをこなすなど、日中の業務時間を効率的に使える。また、いずれは車両の貸し切り予約を可能にする計画で、こちらはチームでの移動中にミーティングをするなどの活用を想定しているという。

 モネビズの車両はタクシー事業者などに協力をあおぎ、プロのドライバーに運行委託する方向。参加企業のコストとしては、この運行委託費用に加えて、車両のリース代、モネ・テクノロジーズの配車システム利用料があり、それぞれの社員の利用実績に応じて負担する仕組みだ。利用者から個別に乗車料金を徴収する形態ではないため、いわゆる「白タク」行為には当たらない。「移動の利便性としても、企業のコスト負担感としても、タクシーとバスの中間のポジション」(田中氏)という位置付けだ。

 モネ・テクノロジーズは今回の実証実験で最適な運行方法やニーズを検証し、19年内には正式にサービスを始める構え。参加企業や対象エリアも順次拡大する予定だ。相乗りサービスをめぐっては、政府が19年度中にタクシーの相乗りを解禁する方向で検討を進めているが、働き方改革を御旗に掲げ、コストメリットも期待できるモネビズは企業の支持を得やすく、先行して広まるかもしれない。

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