PwCコンサルティング(東京・千代田)は2019年7月9日、「国内シェアリングエコノミーに関する意識調査」の結果を発表した。それによるとシェアリングエコノミーの認知度は約5割。持続可能性への貢献が評価される一方、事故発生時の対応などに懸念があることが分かった。
シェアリングサービスの認知度は約5割弱
シェアリングエコノミーとは、個人が保有するモノやサービス、場所などを他の人と共有・交換して利用するサービスや経済の仕組み。自動車を個人や会社で共有するカーシェアリングをはじめ、さまざまなシェアリングエコノミーのサービス(以下シェアリングサービス)が登場している。今回の調査ではシェアリングサービスを以下の6つのカテゴリーに分けている。
1:場所・空間:宿泊場所、駐車場、会議室、荷物預かりなど
2:移動手段:自動車(移動手段の提供を含むものも対象)、自転車など
3:モノ:洋服、家電、子供用品など
4:ビジネスプロフェッショナルスキル:翻訳、プログラミング、デザイン、ビジネスコンサルティングなど
5:家事・手伝い・シッターなどのスキルや労働力:家事全般、子育て支援、料理、介護、庭仕事など
6:クラウドファンディング:P2P(ピア・ツー・ピア)型資金調達
シェアリングサービスの定義、および上記カテゴリーについて説明をした上で「シェアリングサービスを知っているか」という問いに「いずれかのサービスを知っている」と答えた人の割合は47.5%だった。17年、18年と比較すると認知度は向上しているものの、伸び率には鈍化が見て取れる。
認知に年代差なし、高齢者の認知度が向上
「いずれかのサービスを知っている」と答えた人(4763人)が認知しているサービスのカテゴリーは、18年の調査結果と同様に「移動手段」「モノ」「場所・空間」が高いスコアを示した。またベンチャー企業の資金調達手段として注目されている「クラウドファンディング」は、着実に認知度を高めている。
「いずれかのサービスを知っている」と答えた人の割合を年代別に見ると、20~70代についてはあまり差がない。17年の調査では合計で20%強だった60代と70代が伸びを見せ、今回の調査では30%を超えた。
シェアリングサービスの利用状況と課題
日本国内でシェアリングサービスを利用したことがある、または提供したことがあるとした人は全体(1万29人)の15.4%にとどまる。17年、18年の調査と比較すると増加傾向にはあるが、利用への一歩が踏み出せない状況が続いている。
シェアリングサービスの利用経験者(1542人)が最も利用しているカテゴリーは「モノ」が58.2%でトップ。しかしサービスの認知者全体(4763人)で見ると利用率は25.3%程度だ。過去の調査と比較すると全カテゴリーでスコアの伸びに勢いがなく、認知から利用への行動シフトをどのように促すかが課題といえる。
シェアリングサービスの提供経験者(792人)が最も多かったカテゴリーも「モノ」で、提供率は圧倒的に高い68.6%。ただしサービスの認知者全体で見た提供率は減少傾向にある。
利用経験者の7割強が40代以下、年収1000万以上は22.3%
シェアリングサービスの利用経験者(1542人)を年代別に見ると、40代以下の層が7割強を占める。17年の調査と比較すると50代以上の経験者が増えた分、8.7ポイント減っているが、各年代の経験者数としては増加傾向にある。
シェアリングサービスの利用率を子供の有無・世代で見ると、乳幼児・未就学児の子供がいる人(1122人)の利用経験率が25.4%と最も多く、次いで子供のいない人(4110人)が18.0%となっている。世帯年収別では1000万円以上(878人)の利用経験率が22.3%でトップだった。
シェアリングサービスの利用意向
シェアリングサービスを利用したい、(利用を)検討してもよいという人は各カテゴリーで上昇傾向が続いている。年代別では若年層ほどサービスの利用に前向き。また今回の調査で初めて全世代で前向きな人が4割を超えた。
シェアリングサービスの利用意向を子供の有無・世代で見ると、乳幼児・未就学児の子供がいる人の約7割が利用に前向きなことが分かった。利用意向については各世帯で上昇傾向にある。世帯年収別では利用経験率と同様、1000万円以上がトップ。年収が高くなるほど利用に前向きになる傾向が見られる。
メリットは金銭的な節約、懸念はトラブル発生時の対応
シェアリングサービスの利用者を対象にカテゴリー別の利用回数を尋ねると、「場所・空間」「移動手段」「モノ」で2回以上利用する人が増えているのに対し、スキル系では減少傾向にあることが分かった。
シェアリングサービスを利用して良かった点については「サービス・製品が満足のいく価格だった」「気軽に利用できた」と評価する回答が目立つ半面、「ユニークさ」「提供者との有意義な交流」「価格以上の価値」と答えた人が少なく、利用者およびリピーターを増やすための課題が浮き彫りに。
シェアリングサービスのメリットに関する問いでは、全てのカテゴリーで「金銭的に節約ができる」がトップになった。サービス利用時の懸念事項としては、全カテゴリーで「事故やトラブル時の対応」がトップに。価格や品質、責任の所在といったトラブルの原因となる項目についての懸念が強く、“信頼性”が求められていることがうかがえる。
シェアリングサービスが日本経済・社会に及ぼす影響
シェアリングサービスの発展は日本経済・社会に影響すると考えている人は全体(シェアリングサービス認知者1000人と非認知者1000人)の6割。影響が出る内容については「無駄な生産・消費を減らす」「イノベーション創出につながる」がともに3割を超えた。
また、影響すると考えている人の回答を世代別に見ると、若い世代ではビジネス面での影響に注目している人が多いのに対し、年配者には金銭面の節約や無駄な消費の削減を挙げる人が目立つ結果となった。
多くの人がシェアリングサービスの普及や影響を意識している一方で、実際に利用している人は先述の通り15.4%程度しかいない。その主な理由は信頼面に対する懸念だが、「シェアリングエコノミーについて思うこと」という問いへの回答を見ると、信頼を担保するための環境整備と普及面での関与を行政に期待する声が多いことが分かる。
(画像提供/PwCコンサルティング)