ナイキは2019年7月12日、東京・原宿の旗艦店「NIKE HARAJUKU」をリニューアルオープンした。1階をすべて女性向け製品売り場としたのが特徴で、試着室を拡充し、スニーカーなどをカスタマイズできる設備も用意。アプリで在庫確認や取り置きができる仕組みを用意するなど、デジタルと実店舗の融合も進める。
来店してまず目に入る1階をすべて女性向け製品売り場としたのは、“女性にスポーツを楽しんでもらう”というナイキの戦略によるもの。ナイキジャパンVP兼ゼネラルマネージャーの小林哲二氏は「日常にスポーツをもっと取り入れることがナイキのビジョン。そして世界レベルの戦略としているのが、もっと女性にスポーツを楽しんでもらうこと」と話す。
1階奥には広い試着室があり、靴を履いてトレッドミル(屋内でランニングやウオーキングを行うための器具)で試走も可能。試着室の照明は、朝日や夕暮れのような暖色系やオフィス照明のような白っぽい光など4種類を切り替えられ、ナイキのスニーカーやスポーツウエアを身に着けた自分が実生活の中でどう見えるか確認できる。
デジタルとの融合で買い物体験を変える
NIKE HARAJUKUのもう1つの特徴が、「NIKEアプリ」による“デジタルとフィジカルの融合”だ。
NIKEアプリは商品を検索してオンラインで買い物できるだけでなく、80キロメートル以内にある実店舗の在庫をリアルタイムで確認して、48時間まで取り置きできるといった機能を備える。顧客は店舗を訪れても商品がなくて無駄足になるのを防ぐことができ、店頭在庫がなければすぐオンラインショップでの購入に切り替えられる。店舗側は、これまで非常に多かったという在庫確認の問い合わせが減れば、接客に注力しやすくなる。
アプリには店内で利用する機能もある。値札のバーコードをアプリで読み取ると、その商品の情報が表示され、在庫確認ができる。後は店員に声をかければ試着や購入が可能だ。今後はマネキンで展示されているコーディネート一式をQRコードで一括読み取りできるようになるという。試着希望のボタンを押すと、スタッフが試着室までその服を持ってきてくれるサービスも提供予定だ。
NIKEアプリを使った買い物体験は、18年11月に米ニューヨークにオープンした店舗「House Of Innovation 000」から始まった(関連記事「欲しいものが“一瞬で”買える ナイキのデジタル実験店」)。異なるのは決済で、House Of Innovation 000ではレジがなく、そのままNIKEアプリで決済を行い、自分で商品を袋に入れて持ち帰ることができる。NIKE HARAJUKUではまだこの機能には対応しておらず、カウンターでクレジットカードなどで支払う。
House Of Innovation 000のように、商品探しから試着の申し込み、決済まで買い物のほとんどのプロセスを手元のスマホでできるようになれば、店頭で商品を探したり、店員に声をかけて試着を申し込んだり、支払いのためにレジに並んだりといった手間がかからなくなり、スムーズで快適な買い物ができそうだ。
「目指しているのはデジタルとフィジカルの融合。今や消費者にとって、実店舗とオンラインショップの間に境界線はなく、シームレスに利用している。そうした買い物の仕方に対応できる店舗だ」(小林氏)
ナイキジャパンナイキダイレクトデジタルコマースGMのキャシー・キタヤマ氏は、「NIKEアプリは、顧客とパーソナルで継続的な関係を作るためのもの」と語る。
「NIKEアプリでデジタルと実店舗を融合することで、顧客一人ひとりがそれぞれ好きな方法で買い物できるようになる。デジタルは省力化のためのものではなく、店員が顧客と接する時間を増やし、よりパーソナライゼーションされた対応ができるようにするためのもの」(キタヤマ氏)
NIKEアプリには店舗に近づくと各種特典が通知される機能もある。人気商品を買い逃さないための取り置き機能、スムーズな買い物体験、特典などで、ナイキファンをガッチリつかんで離さないようにするためのツールとなりそうだ。
(写真/酒井康治)