2019年6月に東京・南青山にオープンした「Medicha」(メディ―チャ)は、メディテーション(瞑想=めいそう)を通じてストレス解消や集中力向上などができる場を提供する店だ。運営するMedichaは三菱地所の100%出資子会社。三菱地所がなぜこの事業を始めたのか。

南青山でも人通りの少ない閑静な路地にある「Medicha」
南青山でも人通りの少ない閑静な路地にある「Medicha」

 米Googleなど、欧米には社員の健康管理や研修にマインドフルネスと呼ばれる瞑想法を取り入れている企業がある。Medichaはそうした環境を提供するサービスだ。

 主なターゲットは若い女性。「20~30代の忙しい女性がターゲット。コンセプトは“自分に余白を作る”で、それが響く層にアピールしたい」(Medichaの山脇一恵代表取締役)。

音声ガイダンスに従って瞑想を行う部屋。竹や木など自然の素材で覆われたドーム状の空間デザインだ
音声ガイダンスに従って瞑想を行う部屋。竹や木など自然の素材で覆われたドーム状の空間デザインだ

 瞑想というと、静かな場所で目を閉じてじっとしている姿を連想しがちだが、米国のマインドフルネスを参考に、音声ガイダンスに従っていけば瞑想状態に入れるようにした。

 米国の同様の施設を参考にしつつ、瞑想の前後にオリジナルの要素を付け加えているのが特徴だ。瞑想前には非常に明るい部屋と、何も見えないくらい真っ暗な部屋を行き来することで、頭の中から余計な思考を追い出す。瞑想後にはお茶をいれて思考を整理するための部屋がある。米国の施設にはこうした部屋はない。

 「日本ではまだ瞑想が一般的ではないので、瞑想に入る前の準備ができる部屋を用意した。瞑想を通じて自身についての気づきやビジネスの着想などが得られたら、それを整理して持ち帰るために、お茶を飲む部屋も備えた。海や夜景を眺めてボーっとしているときのような、五感を解放できる演出にこだわっている」(山脇氏)

瞑想後に、お茶を飲む部屋。好きな茶碗に、自分でいれて飲む
瞑想後に、お茶を飲む部屋。好きな茶碗に、自分でいれて飲む
部屋に時計はない。線香をつけて、それが消えるまでの時間をここで過ごす
部屋に時計はない。線香をつけて、それが消えるまでの時間をここで過ごす

瞑想にビジネスチャンスあり

 Medichaは三菱地所の100%出資子会社だ。三菱地所では不動産以外の分野の事業開発も行っており、山脇氏は17年、社内の新事業提案制度にこの企画を提出した。「瞑想のための施設は、海外では確固とした市場がある。日本でも同様の市場が見込めるのではないか。国内で先んじて事業を始めることで大きなビジネスチャンスがある」と山脇氏。

 Medichaが好評なら、三菱地所が手掛ける商業施設、ホテル、空港、マンションなどにMedichaのノウハウを生かした施設を造るといった展開も考えている。

 「ブランドを確立できれば、たとえば空港に瞑想のための部屋を作ることも考えている。ユーザーの反応を見ながら、どういった施設にどんな部屋が合うのか検討していく」(山脇氏)

 インバウンド需要も視野に入れている。Webサイトは日本語と英語を併記し、音声ガイダンスは英語でも用意。瞑想後に入るお茶を飲む部屋は、煎茶や線香、水琴など日本文化にこだわったしつらえだ。実際に海外からの問い合わせも来ているという。

 「海外からの観光客もターゲット。日本には禅のイメージがある。日本に来たけれど、観光地を見てしまってすることがないという人もいる。そこにお寺で行う座禅とは違う、気軽にできる新しい形の瞑想を提供したい」(山脇氏)

 Webでの予約制で、料金は1回最大80分の利用時間で8000円(税別)となっている。山脇氏はこの設定について「エステなど、ターゲット層が“自分へのご褒美”と考えている値段がこれぐらい」と言う。瞑想効果を実感できるかどうかは個人差があり、1回で実感するのはなかなか難しいため、継続利用してもらいたいとのこと。事業の成功はリピーターをいかに増やせるかにかかっていそうだ。

(写真/酒井康治)