アウトドアメーカーのスノーピークは、グランピングの最高峰ブランド「FIELD SUITE」を発表。八方尾根開発(長野県北安曇郡)と組んで、白馬・八方尾根に同ブランド初の常設宿泊施設もオープンした。壮大な自然と高級リゾートホテル並みのサービスで、同社の体験事業を加速する。

2019年7月13日にグランドオープンした「Snow Peak FIELD SUITE HAKUBA KITAONE KOGEN(スノーピークフィールドスイート 白馬・北尾根高原)」
2019年7月13日にグランドオープンした「Snow Peak FIELD SUITE HAKUBA KITAONE KOGEN(スノーピークフィールドスイート 白馬・北尾根高原)」

その土地に最もふさわしい「体験」を提供

 グランピングとは「glamorous(グラマラス)」と「camping(キャンピング)」を掛け合わせた造語で「ぜいたくなキャンプ」を表す。アウトドアブームの高まりもあり、余暇の過ごし方として注目を浴びている分野だ。スノーピークが2019年7月5日に発表したFIELD SUITEは、同社が手掛けるグランピング事業の中でも最高峰に位置づけられ、想像を超えるような景観や地元食材を生かした食事、スタッフによる手厚いホスピタリティーなど、非日常的かつぜいたくなアウトドア体験を提供するのが特徴だ。

 その第1弾となるグランピングフィールド「Snow Peak FIELD SUITE HAKUBA KITAONE KOGEN」が、19年7月13日にグランドオープンした。「雄大な北アルプスの山々が眼前に広がるぜいたくなフィールド」をキャッチフレーズに、標高1200メートルに位置する施設からは、北アルプス3000メートル級の山々が展望できる。

白馬三山を背景にしたテントルーム
白馬三山を背景にしたテントルーム

 客室はテントルーム7室とスイートルーム1室の合計8室を用意。すべて100平方メートルのウッドデッキを備え、プライバシーも確保している。テントルームにはスノーピークがFIELD SUITE用に開発した特別なテントを使用。さらにスイートルームには、建築家の隈研吾が設計したモバイルハウス「住箱ーJYUBAKOー」を活用した。

テントルーム外観。どの部屋にも広いウッドデッキを備える。右奥はスイートルームの「住箱ーJYUBAKOー」
テントルーム外観。どの部屋にも広いウッドデッキを備える。右奥はスイートルームの「住箱ーJYUBAKOー」
テントルーム内部。キャンプを満喫しながら、快適さも確保した作り
テントルーム内部。キャンプを満喫しながら、快適さも確保した作り

 フィールド体験をより印象深いものにするには、おいしい食事が欠かせない。夕食はイタリアの三つ星レストランで6年間修行を積んだ鈴木伸悟シェフの、地元の肉や野菜を生かした創作料理が味わえる。他にも初対面の宿泊客同士がスタッフと共に交流できる「焚(た)き火バー」や露天温泉、プライベートデッキでの星空観測、2日目早朝のご来光ツアーなど、自然を満喫するアクティビティーが充実している。

ディナーとして提供されるコース料理。イタリアで修業したシェフによる地元食材を生かした創作料理。ぜいたくな食事は、絶景と並ぶFIELD SUITEの目玉
ディナーとして提供されるコース料理。イタリアで修業したシェフによる地元食材を生かした創作料理。ぜいたくな食事は、絶景と並ぶFIELD SUITEの目玉
焚き火バーでは客同士、そしてスタッフとの交流が図れる。飲み物はすべて料金に含まれている
焚き火バーでは客同士、そしてスタッフとの交流が図れる。飲み物はすべて料金に含まれている
天気次第だが、夜は満天の星が存分に楽しめる
天気次第だが、夜は満天の星が存分に楽しめる

 施設の敷地面積は2856平方メートルで、北尾根高原全体の約5分の1を占める広さにもかかわらず、宿泊は1日最大8組16人限定となっている。宿泊客をもてなすスタッフのほうが多く、20人以上が常駐しているというからぜいたく極まりない。宿泊料金は1人1泊7万~11万円(税別)。一部のオプショナルツアーを除き、JR長野駅からの送迎サービスや施設内の飲み物(アルコール類を含む)代などもすべて料金に含まれている。

 料金設定は特定の顧客層のニーズや競合他社との比較ではなく、その土地に最もふさわしい「体験」を提供するために必要なコストから算出したという。「料金は事業モデルや提供する内容、場所によって変動はある。(同種のサービスを)そのまま他の地域に横展開するのではなく、新たな場所で一からカスタマイズしていくイメージ」(スノーピークの山井梨沙副社長)。

スノーピークの山井梨沙副社長
スノーピークの山井梨沙副社長

「モノからコトへ」に対応する

 FIELD SUITEの事業構想自体は13年ごろから練られていた。スノーピークの山井太社長が16年10月に家族で白馬・八方尾根を訪れた際、その環境にほれ込んで八方尾根開発の倉田保緒社長に声を掛けたのがきっかけだ。

 国内有数のスキーリゾート地である白馬・八方尾根は、近年のインバウンド需要の高まりから冬場の利用者数は回復傾向にある。しかし日本人利用者の減少は続いており、インバウンド需要もいつまで続くかは未知数だ。そうした事情もあり、倉田社長も春から秋のグリーンシーズンの集客対策を模索していた。

 「山井社長は、『我々はメーカーでもともと食器や鍋を作っていたが、これからはモノからコトへ』とおっしゃった」と倉田社長。当時、「スキー場だけではやっていけない。スキーが良い悪いではなくて、自分たちが成長できるものが他にないか」と考えていた倉田社長と、山井社長の「モノからコトへ」の方向性が重なり合った。

「山(峰)」、FIELDの「F」、SUITEの「S」を組み合わせて作った「FIELD SUITE」のロゴ
「山(峰)」、FIELDの「F」、SUITEの「S」を組み合わせて作った「FIELD SUITE」のロゴ
八方尾根開発の倉田保緒社長
八方尾根開発の倉田保緒社長

 山井社長から「スノーピークの共同事業者として、白馬・八方尾根高原で新しいブランド価値を提供するグランピングの宿泊施設を一緒に作ってほしい」と提案を受けた倉田社長は、すぐに同意した。

 こうして「FIELD SUITE」の事業計画がスタートした。

 17年秋、ポップアップの実証プログラムを開始。スノーピークは仮設テントで1泊12万円の客室を3日間限定で販売した。その5カ月後、宿泊なしで雪上アクティビティーを開催する冬期プログラムも実施。18年には2回目となる秋の実証プログラムを行い、好評を博した。

 これらテストの結果を踏まえ、スノーピーク初の常設宿泊施設となるSnow Peak FIELD SUITE HAKUBA KITAONE KOGENのオープンにこぎ着けた。白馬・八方尾根地域のブランド力向上にもつながる今回の事業は、地方交付金などの公的資金の援助は受けず、スノーピークと八方尾根開発の取り組みで実現させたという。

18年1月に八方尾根で実施した雪上のテストプログラムの様子
18年1月に八方尾根で実施した雪上のテストプログラムの様子

事業展開する地域は社長の感性で決める

 今後、スノーピークが他の地域でFIELD SUITEを展開する場合、豊かで魅力的な自然を有していること以外、どのような条件が必要なのか。同社では数値データなどの明確な社内基準を作ることも検討しているが、「山井社長が自分の感性で『そこに行きたい』という直感的な部分を大事にしている」と山井副社長は説明する。

 スノーピークはこれまで自然の中で人と人が本質的につながる体験価値の提供を目指してきた。これからは常設宿泊施設や周囲のロケーションといったベース(拠点)を生かした体験開発に注力することで、総合的なアウトドアライフの価値を提案していくという。

 「その価値の中でも『フィールドの中のスイートルーム』として、この白馬の施設が最高峰の体験になっていくはずだ」と山井副社長は期待する。

オプションで選べる青木湖の湖上ランチ
オプションで選べる青木湖の湖上ランチ

 白馬・八方尾根でも前例のないこの“大型商品”にとって、何より肝心なのは天候に恵まれることだろう。八方尾根開発の担当者によると「植物の芽吹くゴールデンウイーク明けから梅雨入りまでは天候も安定し、残雪のある山々が美しい。そして秋雨が終わった後の紅葉シーズンがお薦め」とのことだ。

白馬三山を眺めながらゆっくりと時間が過ぎていくのを楽しみたい
白馬三山を眺めながらゆっくりと時間が過ぎていくのを楽しみたい

(写真/酒井 康治、写真提供/八方尾根開発)