新幹線は子供にとってそんな憧れの存在だが、実際に乗車する機会は少ない。そこで「シートに実際に座ったり、弁当を食べたりして新幹線のファンになってもらいたい」(天野氏)と、車内の公開に踏み切る。成長した暁には、新幹線を利用してもらったり、鉄道に関わる仕事を職業の1つとして考えてもらったりできれば、という。

 屋外に展示されるというのもポイントだ。名古屋駅からあおなみ線で金城ふ頭駅へ向かうと、車窓から目に入る位置。金城ふ頭にはテーマパークの「レゴランド・ジャパン」や水族館の「シーライフ名古屋」などもあり、リニア・鉄道館の存在を知らなかった子供たちにもアピールできる。

あおなみ線の車内からよく見える(搬入作業中のため奥に置かれているが、実際にはもっと手前に設置される)
あおなみ線の車内からよく見える(搬入作業中のため奥に置かれているが、実際にはもっと手前に設置される)

「新しい電車」の展示が課題に

 実は以前、同じ場所には「117系」という在来線の電車が展示されていた。旧国鉄時代にデビューし、名古屋地区で新快速電車などとして活躍していた車両だ。N700系と同じく3両置かれていたが、1両だけを館内の「収蔵車両エリア」に移動させ、2両は解体されることになった。また、117系が館内に移動する関係で、収蔵車両エリアにあった在来線特急車両「クロ381」が玉突きでやはり解体されることになった。

以前、屋外に置かれていた117系。名古屋地区では馴染みのある車両だが、やや地味な印象
以前、屋外に置かれていた117系。名古屋地区では馴染みのある車両だが、やや地味な印象
今回、展示車両から外れることになった「クロ381」(左の車両)。惜しくも解体されるが、3Dスキャンなどを行い、デジタルデータ化して保存するという
今回、展示車両から外れることになった「クロ381」(左の車両)。惜しくも解体されるが、3Dスキャンなどを行い、デジタルデータ化して保存するという

 こうした展示の入れ替えは、11年3月の開館以来、2回目。前回は14年1月のことで、引退したばかりの新幹線車両700系を搬入し、2両あった新幹線車両300系のうち1両を搬出・解体した。リニア・鉄道館の建物の裏側は大きく開閉できるようになっており、展示車両の入れ替えは比較的容易だ。

開館当初の館内の様子。一番手前の300系は、今は700系に入れ替えられている
開館当初の館内の様子。一番手前の300系は、今は700系に入れ替えられている
リニア・鉄道館の建物の背面は大きく開口できるようになっており、車両の入れ替えが可能
リニア・鉄道館の建物の背面は大きく開口できるようになっており、車両の入れ替えが可能

 子連れ客の獲得のため、リニア・鉄道館以外の鉄道博物館も、新しい車両の展示に知恵を絞る。埼玉県さいたま市にある「鉄道博物館」は開館から約10年となる18年7月に新館をオープン。屋外の展示車両を増やしたほか、現役の新幹線車両「E5系」を忠実に再現した実物大モックアップを実際に車両を制作しているメーカーに発注。外観だけでなく、車内も本物と見まごう出来で、最上級クラスの座席である「グランクラス」を体感できる。実物を展示できないための苦肉の策だ。

鉄道博物館新館にある山形新幹線「400系」(奥の車両)は引退した実物だが、手前のE5系は実物大のモックアップだ
鉄道博物館新館にある山形新幹線「400系」(奥の車両)は引退した実物だが、手前のE5系は実物大のモックアップだ

 16年4月にオープンした京都市の「京都鉄道博物館」は、なんと現役の車両を展示するスペースを持っている。実際の営業線から館内へと線路を引き込んでいるのだ。JR西日本やJR貨物で活躍中の現役車両や新型車両を持ち込み、期間限定で展示するイベントを実施。展示される車両が頻繁に入れ替わることから、リピーターの確保にもつながっている。

京都鉄道博物館の現役車両を展示できるスペース。営業線とつながっており、電車が自力で走行できるよう架線も整備されている
京都鉄道博物館の現役車両を展示できるスペース。営業線とつながっており、電車が自力で走行できるよう架線も整備されている

 博物館は文化施設であると同時に、企業が運営する場合は、PR効果による本業への貢献や集客増による収益化も不可欠だ。新たな話題を提供し、集客効果を持続させる点で、展示を機動的に入れ替えることは重要な施策といえる。