宅配ピザチェーンのドミノ・ピザジャパン(東京・千代田)は、2019年7月2日、東京・銀座に600店目をオープンし、国内の宅配ピザチェーンで店舗数・売り上げともに第1位になったと発表した。今後はさらなる小商圏化を図り、注文から持ち帰りまで最速で3分・配達まで10分を目指すという。

オープン初日の銀座店で「ドミノ・デラックス(Mサイズ、パンピザ)」を実食。提供までは5分かかったが、手で持てないくらいアツアツだった
オープン初日の銀座店で「ドミノ・デラックス(Mサイズ、パンピザ)」を実食。提供までは5分かかったが、手で持てないくらいアツアツだった

時間はピザの敵、小商圏化で配達時間を短縮

 これまでドミノ・ピザジャパン(以下ドミノ・ピザ)は、限りなく焼きたてに近いピザを提供する施策として「ミッション20ミニッツ」「ジャストタイムクッキング」などを打ち出してきた。「ミッション20ミニッツ」は200円の追加料金で20分以内の配達を保証するサービス。「ジャストタイムクッキング」はインターネットでの注文から来店時間を予測し、来店のタイミングで焼きたてのピザを提供するサービスだ。

ドミノ・ピザはこれまで、アツアツのピザを提供するために革新的ともいえる施策を打ち出してきた
ドミノ・ピザはこれまで、アツアツのピザを提供するために革新的ともいえる施策を打ち出してきた

 そんなドミノ・ピザが新たに打ち出したのが、注文から持ち帰りまで最速3分、配達まで10分を目指す「PROJECT 3TEN(プロジェクト・スリーテン)」だ。

 同社社長のジョシュア・キリムニック氏は「時間はピザの敵だ」と語る。「顧客の声に耳を傾けると、1秒がいかに大切かが分かる。1960年代、創業者(トム・モナハン)は30分以内にピザを届けられなければ50セント引きにするキャンペーンを展開したが、現代では30分でも遅すぎる。まず20分、次に18分、そして15分と3つの段階を経てプロジェクト・スリーテンを実現する」。

プロジェクト・スリーテン実現の鍵は最新技術を導入した「設備」、店舗スタッフの作業を円滑化する「レイアウト」、顧客との距離を縮める「小さな商圏」にあるとキリムニック氏
プロジェクト・スリーテン実現の鍵は最新技術を導入した「設備」、店舗スタッフの作業を円滑化する「レイアウト」、顧客との距離を縮める「小さな商圏」にあるとキリムニック氏
ドミノ・ピザの調べでは、焼きたてのピザの温度は約80度だが、10分後には60度まで下がり、おいしさが失われるという
ドミノ・ピザの調べでは、焼きたてのピザの温度は約80度だが、10分後には60度まで下がり、おいしさが失われるという

 東京都内での配達時間は平均で約21分、なかには10分未満を実現している店もあるという。キリムニック氏は「店舗の立地条件もあり、全店が達成すべき目標とは捉えていない」としつつも、東京や大阪などの都心部では多くの店舗で実現できると語った。

 プロジェクト・スリーテンの実現にはピザを作る工程の効率化も必要だが、「小商圏化が欠かせない」とキリムニック氏。「600店舗達成は喜ばしいが、それは通過点にすぎない。2020年までに国内700店舗、25~28年には1000店舗を目指す」。

ドミノ・ピザの店舗数は、2010年と比べると3倍以上に増えている。この勢いは今後も加速しそうだ
ドミノ・ピザの店舗数は、2010年と比べると3倍以上に増えている。この勢いは今後も加速しそうだ

 現在、ドミノ・ピザの各店舗の商圏は20キロメートル前後となっている。これまでの実績では、都市部の店舗の場合、商圏を小さくするほど1店舗当たりの売り上げが伸びる傾向が見て取れるため、それらの店舗については1店舗当たりの商圏を5キロメートル程度にしたいとキリムニック氏は話した。

ピザ作りから配達までに誇りを持っている

 日本初の宅配ピザ店として、1号店を東京・恵比寿にオープンしたのが1985年。その後、店舗数が増えるに伴って“持ち帰り”の需要が増えてきた。キリムニック氏によれば「(持ち帰りは)10年前と比べると30~40%増加している」とのこと。

 焼きたてを提供するという意味で、キリムニック氏は店で食べられるイートインスタイルにも注目している。実際、ドミノ・ピザではイートインスペースを備えた店舗も増えている。

2019年7月2日に600番目の店舗としてオープンした銀座店は、昭和通りに面した立地
2019年7月2日に600番目の店舗としてオープンした銀座店は、昭和通りに面した立地
ピザ作りの工程が店内の席から見えるので、バイトテロの心配もない
ピザ作りの工程が店内の席から見えるので、バイトテロの心配もない

 「配達がメインの頃と違い、現在は多くの店舗が大通りに面している。持ち帰りやイートインという選択肢を提供するためだ。すべての顧客ニーズに応えるのがコンセプト」とキリムニック氏。

 現在、配達分野ではUber(ウーバー)と提携したパートナー配達員がレストランなどの料理を届けるフードデリバリーサービス「Uber Eats(ウーバーイーツ)」が話題になっている。そちらに話を振ると、キリムニック氏は「ピザ作りから配達までをきちんとやることに誇りを持っている。Uber Eatsと絶対に提携しないとは言わないが、ドミノ・ピザがピザを作るだけの会社になることはあり得ない」と話した。

 「Uber Eatsは、雨の日にはパートナー配達員の稼働率が下がるとも聞いている。店舗スタッフが配達するドミノ・ピザなら、その心配はない。それにドミノ・ピザの配達は(Uber Eatsと違って)無料だしね」(キリムニック氏)

キリムニック氏は18年の1月より現職。38歳での社長就任はドミノ・ピザジャパン史上最年少
キリムニック氏は18年の1月より現職。38歳での社長就任はドミノ・ピザジャパン史上最年少

(写真/堀井塚高、写真提供/ドミノ・ピザジャパン)

この記事をいいね!する