大塚食品「ボンカレー」が、KONAMIの「スーパーボンバーマン R」とコラボ。さらに人気バンド「ゴールデンボンバー(金爆)」も広報大使として参加。単なる「ボン」つながりという“奇妙な”プロモーションを仕掛けたのはKONAMIの側。始まりは「お客様相談室」へ送ったメールだった。
「お客様相談室」経由で届いた“依頼”メール
「ズバリ……名前が近かったからという以外、考えられない。バンド名をスタイリッシュな英語の名前にしないでよかった」――。「ボンカレーゴールド×スーパーボンバーマン R」のコラボ企画で広報大使になった人気バンド・ゴールデンボンバーの鬼龍院翔は、発表会で大使任命の感想を聞かれ、正直にこう答えた。
1968年に発売され、これまで30億食を売り上げた大塚食品のレトルトカレー「ボンカレー」と、累計100万本を販売したコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)のゲームソフト「ボンバーマン」シリーズ。異なる業界で長く愛されてきた「ボン」つながりのレジェンドが手を組み、2019年7月から「スーパーボンバーマン R」のキャラクター白ボンがデザインされた「ボンカレーゴールド」のコラボパッケージを期間限定で発売する。同コラボの広報大使を務めるのが、またしても「ボン」つながりのゴールデンボンバーという、3者のどこか“奇妙な”コラボレーションが実現した。
最初にアプローチしたのはKONAMIだった。同社は18年、全世界累計販売本数100万本を記念して、スーパーボンバーマン Rをさらに世界に広める「ボン活」をスタート。キャラクターの白ボンが100メートルのバンジージャンプに挑戦するなどの企画を行ってきたが、今回のコラボはその「ボン活」の一環となる。コナミデジタルエンタテイメントプロモーション企画本部の大石次郎氏は言う。
「19年はどんなボン活をやろうかという会議のときだった。ボンつながりでドイツのボンに行こうなどのアイデアが出るなか、『いや、もっとみんなが知っている“ボン”がある』という声が挙がった。ボンカレーだった。早速、コラボへの熱い思いをメールにしたためて、大塚食品のお客様相談室に送信した」
一方、「お客様相談室」経由で届いたメールを受け取った大塚食品の食品事業部・田本修氏は、こう振り返る。
「普通ならこうした話は広告代理店などを経由していただくものと思っていた。それがお客様相談室に届いたので何かの冗談かと思い、無視しそうになった。実は個人的に(コナミの)スポーツクラブにお世話になっていることもあり、KONAMIは好きな会社。メールを読むとまじめな提案だったので、すぐに返事をして今日につながった。メールを無視しないで良かった」
これに対してKONAMIの大石氏も、「メールが返ってくるとは思っていなかったので、正直驚いた。無視しないでいただいて本当に良かった」と話す。
KONAMIの提案メールからわずか1週間で大塚食品の田本氏からのリアクションという異例のスピードで、今回のコラボ企画は進んだという。
若年層のボンカレー認知度を高めたい
大塚食品にとってもスーパーボンバーマン Rとコラボするメリットは大きい。
ボンカレーの発売は1968年。世界初のレトルトカレーだったのはもちろん、世界初の市販用レトルト食品の誕生でもあった。同社公式サイトによると、グループ内で持っていた「点滴液の殺菌技術」を応用。レトルト釜を自作するなど、開発に約4年の歳月をかけて製品化された。ちなみに今回のコラボで重要な役割を果たしているボンカレーの「ボン」というネーミングは、「フランス語のbon、つまりgoodの意味で名付けられたもの」(大塚食品広報室・堀内一彦氏)だという。
既に国民食だったカレーが、3分間お湯で温めるだけで食べられる。そんなカレー界のイノベーションは、またたく間に受け入れられて大ヒット。現在の中高年世代には、ボンカレーを子供時代のソウルフードとして挙げる人も少なくない。女優の松山容子を起用したホーロー看板や、『子連れ狼』をパロディーにした「3分間待つのだぞ」のテレビCMなども強烈で、まさにレトルトカレーの代名詞。いまだにレトルトカレーなら何でも「ボンカレー」と呼ぶ高齢者もいるほどだ。
こうした中高年層の熱い支持に比べて、若年層におけるボンカレーの認知度はそれほど高くない。さまざまなレトルトカレーの売り上げランキングを見ても、「咖喱(カリー)屋カレー」などハウス食品系のレトルトカレーや、現在全国に500種類あるといわれるご当地カレーなどに、売り上げ上位の座を譲っていることも少なくない。18年の「ウルトラマン特別パッケージ」に続く第2弾となるスーパーボンバーマン Rパッケージで、「ボンカレーゴールドの若年層へのさらなる認知拡大を狙う」(堀内氏)と意気込む。
発表会ではゴールデンボンバーが、「(フタを開けて)箱ごと電子レンジ調理可能」「具材には国産野菜を使用」といったボンカレーの魅力を、「(ボンカレーは進化しているが)僕らは現状維持。低空飛行の横ばいでいきます」(鬼龍院翔)など自身の活動に引っかけて強力にPR。ボンつながりだけで起用されたとは思えないほど立派に、広報大使としての務めを果たしていた。
夏までには「ボン活!3番勝負」として、「ボンカレーゴールド 国産じゃがいも芽取り対決」(沖縄のボンカレー製造工場で、本職のスタッフとジャガイモの芽取りの早さを競う)などの3つのイベントを行う予定で、今回のコラボを盛り上げていくという。
(写真/福光 恵)