ライトな層を取り入れるための方策は「誘いやすさ」

 プロモーションでは認知と集客に力を注ぎ、コンバージョンも重視しているという。試合は各クラブが主管となるため、兼井氏らBリーグ側はリーグ全体の認知度向上に集中している。現在Bリーグの認知度は60%程度。この数字はBリーグ開幕時からほとんど変化がないという。新規層獲得のためにどんな方策を立てているのか。

 「2018年からBリーグの祭典『B.LEAGUE FESTIVITIES(B.FES)』を3月に行っている。漫画『スラムダンク』の作者・井上雄彦先生のイラスト入りオリジナルTシャツを配布したクラブもある。日本郵便のキャラクター・ぽすくまとコラボレーションして、各クラブのマスコット投票も開催したほか、スカイマークと協力して、井上先生の絵柄を模したBリーグのジェット機を飛ばしたこともあった」(兼井氏)

「B.LEAGUE AWARD SHOW 2018-19」で、各賞を受賞した選手。中央はマスコットオブザイヤーに選ばれた千葉ジェッツのジャンボくん
「B.LEAGUE AWARD SHOW 2018-19」で、各賞を受賞した選手。中央はマスコットオブザイヤーに選ばれた千葉ジェッツのジャンボくん

 集客に関しては、「誘いやすいきっかけ作り」を意識しているという。

 「ライトな顧客は、Bリーグを知ってもらい、実際に試合に足を運んでもらうまでにハードルがある。そのためコアな顧客が、行ったことのない人をどれだけ連れてきてくれるかが重要なポイントになる。バスケットボールを知らなくても楽しいと思ってもらえるようにコンテンツを工夫し、誘いやすくしている」(兼井氏)

 Bリーグのポリシーの1つに、「エンターテインメント性の追求」がある。競技以外のことにも力を入れ、試合の勝ち負けに関係なく「今日の試合楽しかったね」と言ってもらえるよう方策を講じている。「例えばオープニングショーや音と光の演出などは、各クラブが努力して作り込んでいる。チアガールのダンスがあって、マスコットがいて、高揚感が味わえる。行政に協力してもらって、体育館中央に大型ビジョンを入れるなど、少しでも非日常的な空間にできるよう取り組んでいる」と兼井氏。

 バスケットボールファンなら出身校やポジションなどから好きな選手を見つけられる。しかしライト層にはなかなか難しい。そこでお気に入りの選手を見つけるきっかけ作りも積極的に行っている。「バレンタインにチョコを配るイベントをしたり、選手が女性誌に登場したりと、試合のときとは違うパーソナリティーを知ることができる試みを行っている」(兼井氏)。SNSでも試合での格好良さが伝わる投稿だけでなく、選手の人となりが垣間見えるようなコンテンツ作りを心がけているという。

 「Bリーグが発足して3年間で一気にプロバスケットの認知が広がった。スポーツ系媒体以外の女性誌や一般誌で取り上げられたり、マーケティングやビジネス面でも面白いと思ってもらえたりするようになった。どんな視点でもいいので、面白いと思ったら1回来ていただきたい。19年8月にはワールドカップ、20年にはオリンピックがあるので、今後バスケットボールを目にする機会が増える。そこで『1回見ておこう』と思ってもらえるようなプロモーションを大事にしていきたい」(兼井氏)

 女性を意識したプロモーションに積極的というより、ライト層に向けた施策が女性客獲得にもつながっているようだ。兼井氏によると開幕してすぐの頃はアンケート調査を基に女性向けのグッズを考えたり、レディースデーを設定して割り引きしたり、女性向けサイトを作って選手の特集を行ったりと、試行錯誤を繰り返していたそうだ。しかし現在は「女性に特化するというよりも、ターゲットを幅広くして、その中で女性を含めたライト層を取り込める企画を立てている」と話す。

ライト層もコア層もファンでい続けてもらうために

 Bリーグでは、「I love B」というプロモーションを行っている。「バスケットボールの面白さは何なのか?」に立ち返り、著名人にバスケットボールやBリーグの魅力を話してもらうもの。普段スポーツに関わっていないが、バスケットボールを愛している人の目線で語ってもらう企画だ。ライト層に向けての策だったが、意外な反応があったという。

 「コアなファンが喜んでくれて、登場した著名人に感謝の気持ちを向けている方もいた。コアなファンは『このアーティストやタレントは、バスケットボールを一緒に応援してくれている』という気持ちになれる。そしてライトなファンは『意外なこの人がバスケットボールを好きだったなんて、行ってみようかな』という気持ちになれる。そこに共感が生まれ、みんなで一緒に応援する機運が盛り上がるのがポイント」(兼井氏)

 バスケットボールについて第三者に語ってもらうことで、「自分たちでは気付けなかった面白さを知ることができた」と兼井氏は話す。ライト層を取り込みながら、コアなファンの心もしっかりつかみ続けているようだ。