東名阪の3会場をリアルタイムで結んだバーチャルYouTuber(VTuber)ライブが、2019年7月15日に実施される。VTuberは増加の一途をたどるが、同日、同時刻に複数の会場で公演するのは国内初。ベンチャーのバルス(東京・千代田)が演出を手がけ、前売りチケットは即日完売した。

東名阪同時生ライブに挑むバーチャルユニット「HoneyStrap -ハニーストラップ-」。東京・赤羽にある夜の喫茶店で働く“悪魔の女王”という設定で、2018年7月に活動を始めた。愛称は「ハニスト」
東名阪同時生ライブに挑むバーチャルユニット「HoneyStrap -ハニーストラップ-」。東京・赤羽にある夜の喫茶店で働く“悪魔の女王”という設定で、2018年7月に活動を始めた。愛称は「ハニスト」

池袋、道頓堀、錦をつなぐ

 ライブは午後6時に開演し、東京・池袋の池袋HUMAXシネマズ、大阪・道頓堀のTSUTAYA EBISUBASHI、名古屋・錦の伏見ミリオン座を同時に結ぶ。

 3会場をジャックするのは、「HoneyStrap -ハニーストラップ-」。18年7月に活動を始めたバーチャルユニットで、キズナアイら“トップアイドル”も名を連ねる、Activ8(アクティベート、東京・港)のVTuber支援プロジェクト「upd8(アップデート)」に参画している。結成1周年を機に、初のリアルライブ開催に踏み切った。

 ライブのタイトルは、「Honey Feast 1杯目 –ハニーハウスへようこそ!-」。オリジナルチケットホルダーが付いた9800円(税込み)の前売りチケットは19年6月15日に発売し、即日完売した。席数を増やして同月23日に再発売したが、やはり瞬時に売り切れた。

 当日は、3会場で計870人を動員するのに加え、チケットが取れなかったファンのために、ニコニコ生放送でも5500円(同)で有料配信されることが決まった。東京、名古屋会場は全席指定席、大阪会場は全席自由席で運営する。

遠隔配信を可能にした画期的システム

 このライブ空間を演出するのは、バルス(Balus)。「リアルとバーチャルの融合」を掲げるxRテックベンチャーとして、18年に創業した。xRとは、AR(拡張現実)、MR(複合現実)、SR(代替現実)、VR(仮想現実)などの総称。東京・秋葉原の近くに自社のモーションキャプチャースタジオを持ち、ライブコンテンツの制作から配信までをワンストップで手がけている。

 スタジオは25平方メートルほどの広さ。16台のVICON製光学式カメラを配し、モーションキャプチャースーツを着用した演者の動きを捉えている。スーツには「マーカー」と呼ばれる小さな球体が58カ所に施されており、このマーカーをカメラが追いかけ、認識することで、滑らかな動きを再現する仕組みだ。バルスによると、最大7人まで同時認識が可能。こうして撮影した映像、音声データをスタジオからリアルタイムで伝送するシステムも構築し、遠方であっても臨場感あふれるライブパフォーマンスを繰り広げられるようにした。

 スクリーンと音響設備、インターネット回線さえあれば、会場の規模は問わない。例えば、映画館や劇場であっても、ライブ会場に変えられる。バルスはこうして生み出したエンタメスペースを「SPWN(スポーン)」と名付け、全国展開を進める方針を打ち出した(詳報記事「VTuberが同時生ライブで“会えるアイドル”に 関連ビジネスも拡大」)。

バルスのモーションキャプチャースタジオ。ここから全国各地にライブコンテンツを配信する
バルスのモーションキャプチャースタジオ。ここから全国各地にライブコンテンツを配信する

 手始めに池袋HUMAXシネマズを常設拠点に、19年3月から月2回のペースでライブを開催。このノウハウを生かし、いよいよ東京以外の会場をつないだ同時ライブに挑む。大阪、名古屋への配信には一般の光回線を使い、会場側で新たに専用回線を敷設するなどの追加投資は必要なかったという。

 VTuberは、バーチャルキャラクターであるがゆえに、どのライブ会場でも“本物”を映し出せるというメリットがある。会場数を増やしてもメイン会場とサテライト会場に分かれるのではなく、全会場をメイン会場として運営できる点で、パブリックビューイングとは大きく異なる。

 各会場には、カメラとマイクを設置してあり、観衆の盛り上がりがダイレクトにスタジオに届く。そのため、バーチャルとはいえ、通常のアイドルライブと同様のコールアンドレスポンスが可能だ。出演者に花束などのバーチャルギフトを贈ることができる他、会場ではオリジナルグッズを販売する。つまり、会場数が増えれば増えるほど、VTuberが生み出す経済圏は拡大していく。

 VTuberの“人口”は19年5月に8000人を超えた。今も右肩上がりで増え続けており、市場規模は急速に広がっている。バルスは19年5月、GMOベンチャーパートナーズ、三井住友海上キャピタルなど3社から総額3億5000万円の資金調達に成功。今回の東名阪同時生ライブを皮切りに、全国、世界へと常設拠点を広げていく計画で、VTuberライブのインフラとなることを目指す。