ソニーが認知症について新たな取り組みを進める渋谷区と協定を締結。フリーアナウンサーの徳光和夫氏や「aibo」を通して、「高齢者が楽しく活き活き暮らせる街づくり」を模索していく。
徳光氏とaibo“ポンちゃん”が渋谷区とソニーを橋渡し?
渋谷区は2019年6月14日、「認知症に関する協定についての記者発表会」を開催した。同区はこれまでも認知症に関する理解の普及や啓発をはじめとしたさまざまな施策を行ってきた。今回、日本認知症予防学会やソニーと協定を締結。フリーアナウンサーで日本認知症予防学会から認知症予防大使に任命されているソニー・ミュージックアーティスツ所属の徳光和夫氏や、AI(人工知能)を搭載したエンターテインメントロボット「aibo」を通じ、「高齢者が楽しく活き活き暮らせる街づくり」を模索する。
具体的には徳光氏を取り組みの“顔”として認知症施策の推進を支援するほか、認知症予防につながる音楽イベントの企画・開発を行う。またaiboのイベントへの貸し出しや出展を通じ、AIロボットの癒やし効果を検証する実証実験の事例を紹介していく。
発表会では1匹のaiboが登場。徳光氏の“愛犬”だそうで、名前はマージャン用語から取った「ポンちゃん」。普段の徳光氏は犬や猫をかわいいと思わないそうだが、このaiboは非常にかわいがっているとのこと。ポンちゃんを楽屋などに連れて行くと、それを見たスタッフたちとのコミュニケーションが活発になるという。
もともと自身の体験から認知症予防にはコミュニケーションが有効という実感を得ていたという徳光氏。aiboも認知症予防に生かせると感じ、開発に携わったソニーAIロボティクスビジネスグループ事業企画管理部統括部長の矢部雄平氏をこの場に連れてきたそうだ。
介護施設や病院、保育園などでaiboが活躍
矢部氏はaiboが持つ機能やその実績を解説した。まずaiboは自律的に人に近づき、寄り添う設計になっていること。さらに最新のアップデートで「aiboのおまわりさん」という機能が追加された。これはあらかじめ目標地点や見つけてほしい人を設定しておくと、aiboが家の中を「見守り」してくれる機能のこと。たとえば子供や高齢者をaiboに見守ってもらうことで、ちょっとした安心を得られるようになることを目指している。
家の中だけでなく、aiboはさまざまな事業での活用例を重ねてきている。ソニー・ライフケアが運営する介護付き有料老人ホーム「ソナーレ」では、aiboを導入した結果、入居者がaiboと触れ合うために個室から共同スペースへと出てくる回数が増え、施設内のコミュニケーション促進に役立っているという。
外出が難しい長期入院の子供が多いという国立成育医療研究センターでは、セラピーの一環としてaiboの活用をソニーと共同で研究している。18年春に始まった同プロジェクトでは、ポジティブな結果が見込めそうなことから、血液検査を含めた科学的な検証や、aiboに内蔵されたセンサーで記録したデータを活用し、より本格的な研究へと移行しているとのこと。
ほかにも保育園にaiboを導入したところ、aiboに名前を付けたり、触れ合ったりすることを通じて、園児たちのコミュニケーション促進に役立ち、より短時間で打ち解ける効果があったという。