2019年5月17日、「特許法等の一部を改正する法律(令和元年5月17日法律第3号)」が公布された。この法律には意匠法の改正も含まれる。保護対象を拡充し、関連意匠制度を大幅に変えるなどの「大改正」だ。大きなポイントは3つ。「関連意匠制度の拡充」「空間デザインの保護の拡充」「画像デザインの保護の拡充」だ。

意匠法改正の参考資料(特許庁発表)
意匠法改正の参考資料(特許庁発表)

 意匠法の改正のうち、企業の製品開発やブランディングに最も大きな影響を与えそうなのが、関連意匠制度の拡充だ。関連意匠制度とは、デザインのバリエーションを保護するもの。

 従来はデザインコンセプトやブランディングの基本となるデザイン(本意匠)を登録すると、これに似たデザイン、デザインバリーションも「関連意匠」として登録すれば保護された。ただし、関連意匠をさらにバリエーション展開し、元の本意匠と似ていないデザインを開発した場合、従来の制度では関連意匠として保護されなかった。

 しかも、関連意匠の出願期間は、本意匠の出願が公報に掲載されるまで(8~10カ月程度)というタイトなものだった。これでは、一貫したコンセプトに基づいて、モデルチェンジを重ねながらブランドを育てていくデザインが保護されないという問題があった。

バリエーションの「後出し」が可能に

 そこで今回の改正では、バリエーションの保護範囲を拡大。本意匠に類似していなくても、関連意匠にさえ類似していれば関連意匠として登録可能とした。さらに、関連意匠の出願を本意匠の出願日から10年以内まで認めた。また、意匠権で保護される期間も、「登録日から20年」から「出願日から25年」に変更した。これにより企業は、より長期的なデザイン戦略、ブランディング戦略を立てられるようになると期待される。

 この他、今回の改正では空間デザインの保護の拡充を図った。もともと意匠法は「物品の意匠」を保護するための法律とされ、物品とは「取引可能な動産」を指す。従って建築物は、ハウスメーカーの量産住宅などの例外を除き、保護の対象外だった。

 今回の改正では不動産である建築物も保護対象となり、これによって、例えば統一した店舗デザインでチェーン展開する飲食店などが、自社のブランドを守るために店舗デザインを意匠登録できるようになる。

 外観だけでなく、インテリアも新たに保護の対象となった。内装全体で統一的な美感を起こさせる場合に保護が受けられる。これも外装と同様に、統一的なデザインの店舗を展開していくような場合に、そのデザインコンセプトの保護が期待できる。

 さらに今回の改正では、物品ではない「画像」も保護の対象として明記した。これまでも「物品」内に記録されている画像(インターフェースなど)は保護される場合はあった。しかし技術の発達に伴い、同じ画像が機器に記録されていたりクラウド上にあったりと、さまざまな運用が行われている。片方が保護され、片方が保護されないのは現実にそぐわない。そこで「物品」と並んで「画像」を保護の対象として規定した。

デザイン経営に注目するきっかけに

 弁理士の渡邉知子氏は「今回の改正は、企業経営者がブランド意識を高めたりデザイン経営に目を向けたりする大きなきっかけになる」と言う。「例えば、関連意匠制度の拡充は個々の製品のデザインの蓄積を大きな“デザイン群”として育て、自社のブランドを構築して権利を守るための強いツールになる。経営者は新しい意匠法を使いこなしてほしい」

 渡邉氏は同時に、「保護対象が拡大し、複雑になると、これまで以上に権利マネジメントが重要になる」とも指摘する。どのデザインが関連意匠として認められ、どれが拒絶されたのか、権利範囲はどこまでか、あるいは日本で認められても海外では認められないものはどれか。こうした実績を踏まえて、綿密に出願戦略を立てることが、権利を守りブランドを育てることに直結する。

 なお、法律の条文は決まっているものの、施行規則や審査基準などが明らかになるのはこれからだ。例えば内装のデザインでは、家具や什器(じゅうき)を一部入れ替えた場合、権利の範囲はどこまで認められるのかなど、今後明らかになる詳細についても注目していきたい。

この記事をいいね!する