現在のSNSは動画が主流。文字や画像の投稿は慣れていても、動画の扱いは模索状態という企業担当者も多いだろう。そうした中、Instagramの「IGTV」という長尺動画サービスが注目されつつある。縦長動画を基本とするIGTVの活用と導入メリットについて解説する。

長尺の動画投稿ならInstagram「IGTV」の利用も検討してみよう(写真/鈴木朋子)
長尺の動画投稿ならInstagram「IGTV」の利用も検討してみよう(写真/鈴木朋子)

スマホでの視聴を前提とするIGTV

 InstagramはグローバルのMAU(月間アクティブユーザー)が10億人を超える人気SNSだ。2019年6月7日のリリースによると、日本国内における月間利用者数(MAU)は3300万人。18年11月から400万人も増えた。

 「インスタ映え」の印象が強いInstagramだが、映える画像が主に投稿されるのは「フィード」。これに対し、飾らない日常風景の投稿が中心で、24時間で投稿した写真や動画が消えるのが「ストーリーズ」だ。ちなみに投稿可能な動画の長さは、フィードで最大1分、ストーリーズは最大15秒となっている。

 そこに18年6月、Instagramは最長60分の動画を投稿できる「IGTV」を投入した。IGTVはInstagramとは別の単独アプリで提供されている。とはいえInstagramとの連係は密で、最長60分の動画を投稿するためには、Instagramのフォロワーを1万人以上獲得しなければならない。それに達しないと、投稿できる動画は「15秒以上・15分以下」となってしまう。

投稿できる動画は15秒から15分以内
投稿できる動画は15秒から15分以内

 こうしたハードルの高さもあってか、19年6月20現在、Android版のダウンロード数は100万超にとどまり、App Storeでもランキング上位にその姿は見当たらない。だが、長時間の動画を投稿したいという個人や企業のニーズもあり、認知度が高まってきた。

 IGTV最大の特徴は縦長の構図を基本としている点。ここが同様の動画配信サービスを提供しているYouTubeと大きく異なる。YouTubeは従来のテレビやパソコンに準じ、横長での視聴を想定している。

 IGTVはローンチから約1年間、スマホでの視聴を前提に縦長フォーマットを前面に押し出してきた。19年5月23日に横長動画のサポートも始めたが、これは横長に最適なコンテンツにも対応するためで、決して縦長に見切りをつけたわけではない。実際Instagramで好評を博しているストーリーズも縦長だ。スマホ利用者の90%は縦の状態のまま使用しているとの調査結果もある(「MOVR Mobile Overview Report Q2 2017」参照)。スマホユーザーにとっては縦長動画のほうがなじみ深いのだ。

IGTV画面。起動するといきなり再生が開始される
IGTV画面。起動するといきなり再生が開始される

 縦長動画のメリットは、被写体が画面の中央に大きく映し出されることだろう。特に人物は縦長なので、横長フォーマットだと1人か2人といった少人数を撮影した場合、両端に無駄な空間が生まれてしまう。しかし縦長であれば、被写体との距離がより近く感じられるように撮影できる。

 Instagramといえばファッションやコスメなどのブランドに強い印象があるが、「人物を推す」視点で捉えれば、縦長動画はさまざまな分野への活用が考えられる。それは必ずしもインフルエンサーに限らない。ものづくりをしている人、サービスを提供する人など、人物中心のクリエイティブが想定できる。

 では実際にIGTVをうまく利用している事例を紹介しよう。

縦長フォーマットを生かした、企業の活用事例

 IGTVはまだ提供開始から1年のため、YouTubeのコンテンツを使い回している企業もある。今のところIGTVならではの活用事例が目立つのはグローバル企業だが、国内でも感度の高い企業によるIGTVへの積極参加が見られる。

 ファッションブランド「Victoria's Secret(@victoriassecret)」は、ショーに登場するモデルたちに質問を投げかける「Runway Q&A」というシリーズをIGTV向けに制作している。華やかなショーが人気のVictoria's Secretだが、このシリーズではあえてモデルたちのカジュアルなシーンを撮影し、親近感を抱かせる演出を打ち出している。被写体との距離が近く感じられる縦長フォーマットをうまく生かした事例だ。

Victoria's SecretのIGTV。モデルへの一問一答を掲載するなど、親近感を抱かせる工夫がポイント
Victoria's SecretのIGTV。モデルへの一問一答を掲載するなど、親近感を抱かせる工夫がポイント

 国内企業では、身長150センチメートル前後の女性向け洋服ブランド「COHINA(@cohina.official)」の活用例が参考になる。販売している商品を身長の異なる女性に着せた動画を公開し、着用イメージを見せている。静止画より動画のほうが商品の素材やデザインを把握しやすく、何より縦長フォーマットが生きている。IGTVの画面をタップするとコメントが表示される。COHINAはそこに価格やセール情報、商品購入ページのURLを記入している。

COHINAのIGTV。画面をタップするとコメント欄が表示される
COHINAのIGTV。画面をタップするとコメント欄が表示される

 ドキュメンタリー番組専用チャンネル「National Geographic (@natgeo)」は同社が制作、放送している「Hostile Planet」という番組のメーキングを3分ほどに編集し、「Hostile Planet Behind the Scenes」として毎週IGTVに投稿している。IGTVとの相乗効果でさらに番組を楽しめる上、IGTVから番組への誘導もあり、プロモーションにつなげている。

メーキングを公開しているNational Geographic
メーキングを公開しているNational Geographic

 まとめると、IGTVに効果的なコンテンツのポイントは以下の3つだ。

(1)縦長フォーマット
縦長での視聴を想定するため、人物にフォーカスした動画が映える。

(2)カジュアルなコンテンツ
しっかりと作り込まれた内容よりも、親近感を持てる動画に向いているため、舞台裏や人物が普段見せないキャラクターを披露するようなコンテンツが適している。

(3)シリーズ化
IGTVはInstagramのアカウントページの「チャンネル」タブで動画が一覧表示されるため、共通のテーマでシリーズ化するとよい。固定ファンを獲得できるだけでなく、過去動画への閲覧も期待できる。

ファンを獲得するIGTVの活用法

 実際に自社でどんなコンテンツを作ればいいか検討するために、IGTVの仕様と対策を紹介する。

 動画の長さはIGTVは15分で、アカウントによって最長60分の動画を投稿できる。ただしInstagramによると、「1~4分ぐらいの長さが特にエンゲージメントが高い傾向にある」という。長いクリエイティブを投稿できるプラットフォームだからと張り切って長尺の動画を作るよりも、最適な長さで制作すべきだ。

 既存の横長動画を活用したい企業もあるだろう。サポートされたばかりの横長フォーマットなら、そのまま流用できる。スクエア動画は上下部分がぼけて表示される。横長に向いている動画はダンスやゲーム、またはスポーツなどのコンテンツ。縦長は人物やより没入感を強調したい被写体に適している。

 IGTVへの導線は、検索に関してはカテゴリーやキーワードでなく、アカウント名での検索となる。IGTVの動画はInstagramアカウントにひも付いている。つまりInstagramのファン(フォロワー)に向けて動画を見せることができる。

 IGTV成功の鍵は、Instagramのフィード、ストーリーズと相互にリンクし合い、組み合わせることだ。タッチポイントを増やすことでInstagramでの存在感を強調できる。ぜひチャレンジしてもらいたい。