タクシー相乗りスタートアップNearMe(ニアミー)代表取締役社長CEOの高原幸一郎氏が、2019年5月末に開催された日経BPの技術イベント「テクノロジーNEXT2019」に登壇。人のニーズと、コト・モノ・移動の“瞬間マッチング”を目指すという同社の取り組みの進捗と、今後の展望を話した。

NearMeの高原幸一郎氏
NearMeの高原幸一郎氏

 見知らぬ人が一緒にタクシーに乗車して、割り勘で運賃を支払う相乗り型タクシーアプリ「nearMe.」は、2018年6月にリリースされた。運営会社のNearMe(ニアミー)を率いる高原氏は、同社のビジョンを「リアルタイム位置情報の活用でニーズを瞬間的にマッチングし、地域の良いモノ・コトが発見できる地域活性化プラットフォームづくり」と説明した。

 前職の楽天時代に海外生活が長かった高原氏。多くの国を訪れても地域資源にアクセスしづらかったり、現地体験ができなかったりした経験を基に、地域を軸にした事業を始めようと独立した。

 まずタクシーに焦点を当てた理由は、“瞬間マッチング”をうたう以上、目的地まで1マイル以内(同社は「インマイル」と呼ぶ)の短距離移動に関する問題解決を目指したからだという。他にも、人身事故や自然災害による代替手段、高齢化による免許返納後の移動手段、観光地の二次交通などの問題点を指摘し、その解決に役立つのがタクシーの活用だと分析した。

 高原氏によると、国内のタクシー台数は約24万台だが、実車率は40%でドライバーも不足している。「タクシー1台に、あと3人乗せられれば、理論上6倍の輸送量が見込める。これはJR(の輸送量)に匹敵する。ドライバー不足の問題も考慮すれば、少ない人数でより多くの人を運ぶためにはタクシーの相乗りがいいと考えた」(高原氏)。

相乗りはタクシーの需給バランスにも貢献できる
相乗りはタクシーの需給バランスにも貢献できる

現状は「乗車前」にマッチング

 現在、タクシー事業者による相乗りサービスの展開は禁止されているが、政府は19年度中の相乗り解禁に向けて検討を始めている。だが、高原氏は「規制緩和を待っていたらもったいない」と考え、タクシーの「乗車前」に目的地が同じ方向の利用者同士をマッチングできるアプリとしてnearMe.を開発した。

 サービス概要は以下の通り。(1)アプリで目的地を入力すると候補ルートと割り勘金額が表示される (2)相乗り候補者が写真入りで表示される (3)メッセージのやり取り後、合流してタクシーに相乗り (4)すべてクレジットカード決済で、最後に降りる人がメーター通りに決済。先に降りた人の料金はアプリ経由で最後に降りた人に振り込まれる。

 高原氏によると、1人で乗るよりも料金が30~40%安くなるときにだけマッチングが成立するアルゴリズムになっている。ニアミーは、そのタクシー料金が“安くなった分”から手数料をもらう仕組みだという。

 米ウーバー・テクノロジーズなど、既存のライドシェアアプリとの最大の違いは、乗客同士をマッチングすること。「乗客はタクシーに安く乗れる。そして、どのタクシー会社へも送客できるので、(タクシー事業者と)連携しやすい」と、高原氏はnearMe.独特のメリットを挙げた。

nearMe.サービス概要。同乗者の情報が事前に分かることで安心が担保される
nearMe.サービス概要。同乗者の情報が事前に分かることで安心が担保される
ニアミーに手数料を支払っても、1人で乗るより安くなるときにだけマッチングされる
ニアミーに手数料を支払っても、1人で乗るより安くなるときにだけマッチングされる

利用のピークは終電後の「深夜帯」

 nearMe.のサービス開始前には、20~40代の男女2000人を対象にしたアンケートを実施した。例えば、東京・赤羽や埼玉・和光市、神奈川・青葉台などバス利用が多く、特に需要が見込めるターゲット地点では、実に88%以上が相乗りの利用意向を示したという。

 さらに、「1人で乗るには高い」「つかまりにくい」といった項目が主にタクシー利用への課題として挙がり、nearMe.に対しては、「安く乗れそう」「早く帰れそう」という点でメリットを感じる人が多かった。一方、「自宅や目的地を知られたくない」「異性と乗りたくない」など、他人とタクシーに同乗することへの懸念も多いが、それに対してはアプリ内で解消、低減できるよう取り組んできた。

 「目的地は自由に設定できるため、自宅を知られたくない場合は近くのコンビニ前など工夫できる。また、事前に相乗りする相手が分かるため、(同性を選んで)マッチングすることも可能。利用にはクレジットカード情報が必要なため、ある程度(社会的信用のある)利用者の選別はできている」と高原氏。加えて、トラブル時は運営へ通報でき、悪質な場合は退会処置を取るという。

 東京・神奈川・埼玉でサービスを開始した結果、1カ月で1万人がダウンロードし、リピート率は50%以上。利用のピークは週後半の終バス・終電以降の深夜帯だったという。 また、利用者の多いルートは、短距離は都内5区、長距離は横浜市、西東京市、さいたま市方面で、「千葉方面が少なかったことが意外だった」(高原氏)と話す。

 高原氏によると、今後はマッチング率を高めるため、1人で乗車中のタクシーにルートの途中から別のユーザーをマッチングして相乗りできるようにしたり、タクシー会社との連携や企業との取り組みを進めたり、事業を加速させていくという。「イベント、スポーツ観戦、観光など、移動の目的となるシナリオを増やしていくことも非常に重要」(高原氏)。

9人乗り「スマートシャトル」も始動へ

 そして、ニアミーがこれから始める計画の新サービスが、「スマートシャトル」。協業するタクシー会社の9人乗り車両を使い、同じ方向に行く複数の乗車希望者をリアルタイムにマッチングして、目的地に送り届けるサービスだ。「ダイナミックルーティングと呼ぶ我々のアルゴリズムで、複数のオーダーに応じてどのルートを通れば最適にピックアップできるかを計算する仕組み」(高原氏)という。タクシー事業者にとっては、乗車率と乗車単価が上がるというメリットがある。

「スマートシャトル」は、遅くとも19年7月のリリースを目指すという
「スマートシャトル」は、遅くとも19年7月のリリースを目指すという

 スマートシャトルは、すでに2社との具体的な取り組みが決まったという。東急不動産とはゴルフ場の送迎サービスに取り組む。クルマを所有していないゴルファーに対して、早朝の移動やゴルフバッグの事前配送などの面倒を解消する。東急不動産が所有するゴルフ場を利用する東急沿線の住民を順番にピックアップし、帰りも送り届けるという仕組みを想定している。

 また、京浜急行電鉄がスタートアップ企業とも連携。同社が新規事業の創出を目指す「京急アクセラレータープログラム」第2期の採択企業にニアミーが選ばれており、まずは観光分野で“インマイル(1マイル以内)”での新たな移動手段をつくるという。「他にも、さまざまな企業との協業を重ねてスマートシャトルを成長させていきたい」と、高原氏は期待を込める。

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