あくまでもキャンペーン、収益性は度外視

 集英社、講談社の両社にとって「ジャンマガ学園」は22歳以下の若者に漫画を読んでもらうためのキャンペーンなので、収益性は度外視しているという。しかし、サイトの制作、運営には当然コストが発生する。無料で作品を公開することに懸念はなかったのだろうか。

 これについて橋本氏は「『ジャンマガ学園』は認知広告の一種だと思っている。啓蒙活動に収益性は求めない」と話す。「(ジャンマガ学園は)絶対に話題になるよね」「そうだね」で企画が通ってしまう社内文化があったと橋本氏。

 実際のところ、「ジャンマガ学園」の宣伝効果は大きかったようだ。

 同サイトでは、公開されている作品については無制限で読める。膨大な数の作品があるため、1つの作品を読み終えたら別の作品を読み始めるケースも多い。その一方で、続きを読みたいと思ったユーザーは無料漫画アプリの「少年ジャンプ+」「マガポケ」へのリンクをタップするのだという。

 サイトの効果で、4月から5月にかけてはアプリのダウンロード数が増加したとのこと。あくまでも漫画を読んでもらうことをメインに置きつつも、それがアプリへの誘導にもつながったわけだ。

 「『ONE PIECE』は連載開始(1997年)から20年以上たっている。作品を途中から読み始めた22歳以下の若者にとって、『ジャンマガ学園』は連載当初のエピソードを読むきっかけになった」と細野氏は言う。

 「1冊500円ほどの単行本を買うのは、若い人には勇気がいる。お金を払って買った漫画がつまらなかったら目も当てられない。『ジャンマガ学園』は作品の面白さをあらためて伝えるとともに、(買っても大丈夫という)安心感を与えることができた」(橋本氏)

U22に刺さったイベント、刺さらなかったイベント

 実験的なプロジェクトとも言える「ジャンマガ学園」では、読者参加型のイベントとして、6つの「学校行事」も用意した。その中の1つ、拡散のための仕掛けだった「マンガリレー」は苦戦したという。

「学校行事」は「マンガリレー」「中間・期末テスト」など6種類
「学校行事」は「マンガリレー」「中間・期末テスト」など6種類

 「マンガリレー」は、好きな作品の第1話を読んで次の人につなぐというイベント。リレーをつなぐたびに集英社および講談社の電子コミック配信サイトで閲覧・購読に利用できるポイントや、1ポイント1円で利用可能な「LINEポイント」が賞品として手に入るという仕掛けだ。ポイントが欲しいユーザーが、友達同士で閲覧を促進し合うことを狙っていたが……。

 「ユーザーは漫画を読みに来ているのであってポイントを集めることに興味はなかったようだ」と橋本氏は分析する。また中村氏は「参加者の間では盛り上がってくれたので可能性は感じたが、ユーザーの『読みたい』と『勧めたい』には大きな開きがあった」と言う。

 逆に若者たちに刺さったのは、72作品の第1話を集めた電子コミック「少年ジャンマガ(全3681ページ)」で、約22万人がアクセスした。「中間・期末テスト」の問題は「少年ジャンマガ」に収録された作品からランダムに12問が出題されるため、「答えが分からないときは、その作品の第1話を読めるように導線を用意したのがアクセスにつながった」(中村氏)

生徒数が50万人を突破したことを記念して10冊限定で制作された実物の「少年ジャンマガ」。サイトで展開している「中間・期末テスト」の賞品として参加者に抽選で贈呈された
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若者に人気の高いアーティスト・まふまふ氏が描き下ろした学園公式テーマソング「拝啓、桜舞い散るこの日に」のMVはYouTubeで500万再生を突破
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 若者に漫画を読んでもらう実験の場として成功を収めた「ジャンマガ学園」。目的を絞り込み、無関係なものを極力排除したことが100万人超の登録につながった。漫画という強いコンテンツがあればこそだが、「ジャンマガ学園」の取り組みは、若者にリーチしたいマーケティング担当者にとって学ぶべき点が多いように思う。

(写真/堀井塚高、写真提供/少年ジャンマガ学園製作委員会)