2019年9月、東京・日本橋に開業する「コレド室町テラス」の核テナント「誠品生活日本橋」の中身が明らかになった。“アジアで最も優れた書店”と評される「誠品書店」を育てた感性と手腕を生かし、日台文化を融合した売り場が誕生する。その見どころを先取りすべく三井不動産の担当者を取材した。

日本1号店「誠品生活日本橋」の店舗空間は、中国第1号店「誠品生活蘇州」の設計も手掛けた台湾を代表する建築家、姚仁喜(クリス・ヤオ)氏が設計
日本1号店「誠品生活日本橋」の店舗空間は、中国第1号店「誠品生活蘇州」の設計も手掛けた台湾を代表する建築家、姚仁喜(クリス・ヤオ)氏が設計

土地に合わせてテーマが異なる店舗

 誠品生活日本橋には、誠品書店のほかコスメやフードなど日本初進出の5店舗を含む50もの台湾ブランドが出店する。ものづくりのワークショップや文化人のトークセッション、料理実演など体験型コンテンツを盛り込み、読書と文化の交流に取り組むのも、誠品生活ならではの戦略だ。

 台北旅行の経験者なら誠品書店の名前を一度は目にしたことがあるかもしれない。台湾の出版文化をけん引し、読書習慣を根付かせることで文化発展の一翼を担ってきた書店だ。客が地べたに座って本を試読する光景もおなじみ。書店から始まり、現在では物販や飲食を集積する商業施設やホテルを運営する企業へと成長した。蔦屋書店が参考にしたともいわれ、上質で居心地のいい空間設計やライフスタイル提案が、地元客のみならず、旅行者の間でも高い評価を得ている。

 最大の特徴は、出店する土地の文化や特色に合わせて店づくりをしている点。現在、台湾をはじめ、香港、蘇州、深圳などに全49店舗を手掛けるが、どの店舗も異なるテーマで展開しているという。

 例えば1989年に台北市内に開業した1号店「誠品敦南店」のコンセプトは、「24時間時差のない読書生活」。99年に24時間営業を打ち出し、「眠らない書店」となった。2013年にたばこ工場をリノベーションしてオープンした「誠品生活松菸店」では、「現代の文化クリエイティブファクトリー」をテーマに、ものづくりの精神を伝える実演にも注力する。同店は米CNNによる「世界で最もクールな百貨店14」の1つにも選出されている。その他、誠品信義店は百貨店集積エリアにあり、高級路線だ。

「24時間時差のない読書生活」をコンセプトとする「誠品生活敦南店」は1989年開業の1号店。TIME誌アジア版で「アジアで最も優れた書店」に選ばれた
「24時間時差のない読書生活」をコンセプトとする「誠品生活敦南店」は1989年開業の1号店。TIME誌アジア版で「アジアで最も優れた書店」に選ばれた
CNNによって「世界で最もクールな百貨店14」の1つに選ばれた「誠品生活松菸店」は2013年オープン。映画館、ホール、ものづくりの実演など台湾カルチャーを集積した初の総合型店舗
CNNによって「世界で最もクールな百貨店14」の1つに選ばれた「誠品生活松菸店」は2013年オープン。映画館、ホール、ものづくりの実演など台湾カルチャーを集積した初の総合型店舗
中国1号店の「誠品生活蘇州」は2015年開業。誠品生活の店舗づくりでは、場所の特性や文化を最も重視する
中国1号店の「誠品生活蘇州」は2015年開業。誠品生活の店舗づくりでは、場所の特性や文化を最も重視する

 「誠品生活はその場所の精神性を大事にしていて、同じ台北市内の店舗であっても切り口を変えている。そこに彼らの目利きで選ばれた商品が展開され、体験の要素があることに期待している」と、三井不動産の商業施設本部商業施設営業一部営業グループの小林直仁氏は話す。

 東京・日本橋といえば、江戸時代から文化、商業の中心地であり、かつてのにぎわいを再生するプロジェクトが進んでいる。ものを買うだけにとどまらず、時間消費を促すサードプレイスを目指した。テーマは「くらしと読書のカルチャー・ワンダーランド」。書籍を軸に、文具・雑貨、セレクト物販・ワークショップ、レストラン・食物販の4ゾーンで構成し、ワンフロアまるごと誠品生活という、台湾好き必見の世界となっている。

明るい窓際で読書体験できる書店

 誠品生活日本橋の店舗面積は2871平方メートル。台湾で多層展開している売り場をワンフロアに凝縮した格好だ。ちなみに18年9月、台北市内のMRT(地下鉄)中山駅前に開業した大型店「誠品生活南西店」は地下1階~地上5階の6フロア、松菸店は4フロアだ。

2018年9月に台北市内にオープンした「誠品生活南西店」
2018年9月に台北市内にオープンした「誠品生活南西店」

 書籍ゾーン「誠品書店」では、同社のノウハウが最大限に生かされた売り場が見られる予定だ。ライフスタイル提案型の店舗とはいえ、やはり軸になるのは書籍。「日本橋の目抜き通りである中央通りに面して書籍ゾーンを設け、自然光の入る窓際の座席でゆっくり読書を楽しめるなど、ゾーニングの際にも書籍へのこだわりが伝わり、読書文化をつくってきた誠品の精神が感じられた」(同営業グループの篠原菜美氏)。窓際には長さ約30メートルの文学回廊コーナーが設置され、世界的な名作文学がそろう。

 書籍ジャンルは文学を軸に人文、アート、デザイン、ビジネス、旅、料理など幅広く展開。日本語の書籍を中心に一部中国語を含む外国語書籍も企画展と合わせて取り扱う。選書専門チームが独自の視点で推薦書籍を提案する企画展「誠品選書」も予定されている。イベントスペースでは新刊発表会や講演会、映画鑑賞会などが行われるという。

 文具ゾーンも見逃せない。世界中から1000以上の文具ブランドを紹介してきた経験を生かし、オリジナル文具のほか、画材、紙製品などデザイン性の高い文具を取り扱う。企画展やワークショップも定期的に開催される予定だ。

日本語の書籍を中心に文学から人文、アート、デザイン、ビジネス、ライフスタイルまで幅広い品ぞろえになる予定。写真は誠品南西店の書籍ゾーン
日本語の書籍を中心に文学から人文、アート、デザイン、ビジネス、ライフスタイルまで幅広い品ぞろえになる予定。写真は誠品南西店の書籍ゾーン

人気の漢方コスメやものづくり体験ショップが見どころ

 日本橋店の目玉ともいえるのが、伝統技法と現代的デザインを融合させた物販・ワークショップゾーン。台湾で多くのデザインブランドを発掘、支援してきたプロジェクト「誠品生活expo」が日本でも導入される。

誠品生活南西店で人気を集めるインキュベーションゾーン「誠品生活expo」が日本でも導入される
誠品生活南西店で人気を集めるインキュベーションゾーン「誠品生活expo」が日本でも導入される

 日台の新進気鋭のブランドを中心に日用品や工芸品などを厳選。誠品生活南西店で人気の漢方コスメ「DAYLILY(デイリリー)」が、本格的に日本初上陸する。同ブランドは、台北市内で漢方薬局を営む父を持つ台湾人女性と日本人女性が設立した、台湾発女性のための漢方薬ブランド。漢方を日常的に取り入れやすくするために、パッケージなどにもこだわっているのが特徴だ。

台湾発の女性向け漢方ブランド「DAYLILY(デイリリー)」は日本初登場。写真は誠品生活南西店の売り場
台湾発の女性向け漢方ブランド「DAYLILY(デイリリー)」は日本初登場。写真は誠品生活南西店の売り場

 創業153年の中華菓子の老舗ブランド「郭元益(グォユェンイー)」と台湾茶からつくられた香水ブランド「P.Seven 茶香水」も日本初上陸。天然ハーブせっけんとして日本でも人気のある台湾生まれのコスメブランド「阿原(YUAN)」は関東初出店で、ほかにも台湾文化を身近に感じられるブランドが並ぶ。

 ものづくり体験を味わえるワークショップも充実。誠品松菸店で工房を併設する吹きガラスワークショップを、東京ガラス工芸研究所の協力により再現した。同じく工房併設型店舗「注染手ぬぐい にじゆら」やジュエリーショップ「L&Co.」、金属製品のギフトショップ「meta mate」でもワークショップが実施され、モノ+コト消費の売り場としても注目されそうだ。

全店舗を通じて毎年5000回以上の体験型イベントを開催する。店舗に併設されたガラス工房でのワークショップも話題を集めそう
全店舗を通じて毎年5000回以上の体験型イベントを開催する。店舗に併設されたガラス工房でのワークショップも話題を集めそう

人気の台湾フードと台湾茶を満喫できる食ゾーン

 大屋根広場に面したテラス沿いの空間にはレストラン・食物販ゾーンを配置。タピオカミルクティーが人気の本格派ティースタンド「THE ALLEY(ジ アレイ)」や、恵比寿のスペシャルティーコーヒー専門店「猿田彦珈琲」が出店する。猿田彦珈琲は誠品生活南西店に海外初出店している。さらに、台北のおしゃれエリア、富錦街で人気のファッション&ライフスタイルブランド「富錦樹」が手掛ける台湾料理レストラン「富錦樹台菜香檳」と、1862年に台南で創業し、専門茶畑で生産するこだわりの台湾ウーロンを提供する台湾茶サロン「王徳傳(ワンダーチュアン)」が日本初出店。台湾で人気のブランドが集積するとあって行列は必至だ。

 食物販ゾーン「誠品生活市集」は、目黒の人気グロッサリーストア「FOOD&COMPANY」とコラボ。こだわりの伝統食材やおしゃれなキッチン雑貨を販売すると同時に、併設クッキングスタジオで、料理研究家やシェフによる食イベントを定期開催する。台北の南西店では、レストランと食雑貨のセレクトショップが融合した「神農生活×食習」が人気を博しているが、日本橋店でも食の新たな提案が話題を集めそうだ。

写真は誠品生活南西店の神農生活。食料品を販売する食物販ゾーンも洗練されたイメージが期待される
写真は誠品生活南西店の神農生活。食料品を販売する食物販ゾーンも洗練されたイメージが期待される
誠品生活日本橋のクッキングスタジオのイメージ写真
誠品生活日本橋のクッキングスタジオのイメージ写真
クッキングスタジオでは料理研究家やシェフによる食のワークショップを開催
クッキングスタジオでは料理研究家やシェフによる食のワークショップを開催

 日本進出に際しては、三井不動産と誠品生活股份公司の両社でライセンス保有会社を設立した。東京ミッドタウン日比谷で取引実績のある書店の有隣堂が、日本橋店の店舗運営を担う。「当初は言葉の問題や特有の出版流通など日本での事業にリスクを感じ慎重だったが、運営サポートの仕組みを提案し、不安を払拭できたことで取り組みが実現した」と、小林氏は振り返る。今後、日本橋店が軌道に乗れば、三井不動産が展開するほかの商業施設への出店の可能性もあるという。

 台湾好きはもちろん、台湾を知らない人にも台湾カルチャーの魅力を伝える情報発信拠点となれるか。日本1号店への期待はますます高まっている。

(写真/橋長初代、写真提供/三井不動産)

■変更履歴
記事のタイトルを「「アジアNo.1書店」日本上陸 「誠品生活日本橋」の見どころ」から「誠品生活日本橋 台湾発「アジアNo.1書店」日本初上陸」に変更しました[2019/12/10 13:30]