医療・介護ベッド業界大手のパラマウントベッドが新ブランド「Active Sleep」を発売。アプリと連携してベッド操作や睡眠分析が可能な多機能ベッドで、これまでの介護ではなく、一般消費者がターゲットの市場へ進出する。深刻化する日本人の睡眠不足に目を付け、主に働き盛り世代を狙う。
多機能ベッドで一般向けの睡眠市場へ参入
Active Sleepは、製品コンセプトに「眠りの自動運転」を掲げたパラマウントベッドの新シリーズ。スマートフォンのアプリを使って、ベッドの角度やマットレスの硬さを調節できるほか、入眠時から熟睡時、起床時でベッドの角度が自動調整される機能を搭載。さらに睡眠状態の分析機能も備えている。2019年3月から予約受け付けを始め、6月1日に販売を開始した。
これまで同社は主にシニア向けの介護ベッドを販売してきたが、Active Sleepでは新しいターゲット層を狙う。パラマウントベッドコンシューマーチーム担当課長の小澤卓矢氏は「睡眠に困っている方や、睡眠に対して意識が高い方なら誰でも使っていただきたい。当社としては初めての試み」と語る。
メインターゲットは「40~50代の、バリバリ働いているが睡眠もしっかり取らなくてはいけない方」(小澤氏)で、介護ベッドの中心顧客である60代以上よりも若い世代。予約状況は好調で、実際に40~50代からの反響が大きいという。また60代以上では、介護ベッドではなく“快適なベッド”として興味を示す人が多いとのこと。
サブスクリプションでの提供も視野
開発の目的は、日本人の“睡眠の質”を上げること。経済協力開発機構(OECD)の調査(2018年)では、日本人の睡眠時間は加盟諸国の中でもワーストクラスの短さ。慢性的な睡眠不足が病気やパフォーマンス低下の原因となることも明らかになっている。さらに同社が独自に行った1000人へのアンケートでは、83.2%が「睡眠の重要性を感じている」にもかかわらず、73.2%が「睡眠の対策ができていない」という結果だった。
同アンケートでは、55.9%が「自分に合った寝具を選べていない」とも回答。多くの人が睡眠時間だけでなく、睡眠の“環境”にも課題を抱えていることが分かった。このような睡眠の課題を解消するために、Active Sleepは開発された。
同製品はショールーム「眠りギャラリー TOKYO」をはじめ、家具店や寝具店での店頭販売に注力し、初年度(19年4月~20年3月末)で4億円の売り上げを目指す。さらに「今後はリースやサブスクリプションでの提供も考えていく」(小澤氏)と、販売方法の多様化で普及拡大を目指す。
アプリ連携で「最新の状態」を維持できる
Active Sleepはアプリ連携による利点もある。アップデートが容易になり、ユーザーは常に最新の状態で使用できるからだ。
「これまでは新しい製品を用意しても1年後には古くなってしまう状況だった。しかしアプリを提供することで、お客様の要望に合わせてブラッシュアップしていくことも可能になる」(小澤氏)
寝付きまでの時間や寝返り回数などから睡眠状態の計測もできる。アプリを使用する場合、ベッド本体とスマートフォンはBluetoothによって接続する。睡眠の計測にはWi-Fi環境が必要となる。
今や“寝不足国家”ともいえる日本。睡眠をサポートする製品やサービスが次々生まれている。アプリと連携したテクノロジー満載のベッドが、働き盛りのビジネスパーソンに快適な眠りをもたらしてくれるのであれば、43万円(シングル、税別)も高くないかもしれない。
(写真/荒井貴彦)